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生き方

「高学歴なのに話がつまらない人」が日本で大量に生まれる原因

和田秀樹(精神科医)

2022年09月03日 公開 2024年12月16日 更新

 

俗説や通説と戦う姿勢をもとう

「○○さんの本にはこう書いてあった。だからあなたの意見はまちがっている」などと、ある1つの説を根拠に、それ以外の説は正しくないと決めつけるのはまったくナンセンスです。

私は10年ほど前から、本の読み方が変わってきました。それまでは、いろいろな事象について正解と思えることを求めて本を読んでいました。

たとえば、フロイトよりもコフートの精神分析が正しい、ケインズなどの古典的な経済学より行動経済学のほうが正しい、といった「正解」を知りたくて勉強していたのです。

でも、最近では、どれが正しいかではなく、「いろいろな説もある」と、ほとんどの説を受け入れられるようになりました。

精神科医をしていると、たとえば大きな事件が起こったとき、犯人はいったいどんな人物なのか、パーソナリティの分析をメディアなどから求められることがあります。

聞くほうとしては、明快に「こんな人です」と1つの答えを提示してほしいのでしょうが、そこで最低でも10種類くらいの可能性をあげられるのが、本当のプロです。

精神科医が診療の現場で、「この人はこんな人」と1つの答えを出すのは、患者さんに対する決めつけにほかなりません。実際にカウンセリングをするときは、患者さんの話を聞きながら、相手がどんな人なのか、想定される可能性を10通りほど考えます。

そして、話が進むうちに、そのなかから「これはない」と思われるものを除外していき、可能性がしぼられていきます。したがって、最初の段階でいろいろな可能性を考えられるほうが、より適切な診療ができるのです。

1つのことに対して、「これが正しい」と決めつけることなく、いろいろな可能性を考えられる人のほうが、人間の幅が広く見えます。

本を読むなど、インプット型の勉強を完全に否定するつもりはありません。どれほど歳をとっても、新しいことを知る喜びは確実にあります。ただ、そのインプットの喜びだけで終わってしまってはもったいないと思います。

たとえば、経済の本を読む場合、ただ新しい知識をありがたがって受け取るのではなく、「こんなふうに理屈どおりにいくかいな」と反論を試みるために読んでみてはいかがでしょうか。いちゃもんをつけながら、著者を論破してやろうというくらいのつもりで読むほうがいいと思います。

作家の百田尚樹さんや、漫画家の小林よしのりさんは、かなり極端な持論を展開し、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上などでたびたび炎上騒ぎを起こしています。私は彼らの意見には必ずしも同調しているわけではありませんが、彼らの「戦う姿勢」には好感をもっています。

俗説や通説と戦う姿勢をもつのは、とても大事なことです。疑問に思うことについて、インターネットも駆使していろいろ調べてみると、戦うための材料が手に入ります。そんなふうに、理論武装するためにインプット型の勉強をするということもあっていいと思います。

 

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