深層心理は「夢分析」でわかる? 自己理解を深める心理学
2022年10月05日 公開 2024年12月16日 更新
自分はどんな性格の人間かという問いに、すぐに答えられない人もいるでしょう。そんな時には、心理テストと「夢分析」が自己理解を深める手段として有効になるかもしれません。渋谷昌三氏が解説します。
※本記事は渋谷昌三著『[新装版]すぐに使える! 心理学』(PHP研究所)の一部を抜粋、編集したものです。
潜在的な自己を発見する方法
自分のことをわかっている人は、果たしてどれだけいるのでしょうか。わかっているようで、実はよくわからないのが自分なのです。
ふとした機会に身近な人から指摘されて、初めて自分のクセや欠点に気付くという経験は誰にでもあるでしょう。私たちは他人との関わり合いの中で、自分を客観的に判断し、成長させることができるのです。
アメリカの心理学者ジョーとハリーによって考案されたジョハリの窓は、潜在的な自己を発見するためのツールとして有効です。まず、自分の心の窓をのぞき込んでみてください。その窓には四つの仕切りがあります。
1つ目は自分も他人もわかっている部分(A)、2つ目は自分は知らないが、他人がわかっている部分(B)、3つ目は自分はわかっているが、他人は知らない部分(C)、4つ目が自分も他人も知らない部分(D)、です。
Aの領域は自分だけでなく他人とも共有している、開放された自己の特質です。つまり、周りの人たちが「あの人はこんな人」と認識している性格です。この領域が広がれば広がるほど、自分自身が知らなかった盲点が少なくなることになります。そのためには、自分を隠さずに積極的に出していかなければなりません。
BやCの領域が小さくなればなるほど、未知の領域であるDの部分に脚光が当たるようになり、自分でさえ気付いていなかった潜在的な自己が発見できるようになるでしょう。
私たちは周囲の人々との交流を通じて、努めて自己領域を開放していくことで、自分自身もより深く"自分"が理解できるようになるというわけです。まさに他人は自分を映す鏡といえるでしょう。
20答法で本当の自分がわかる
さて、ここで1つのテストをしてみましょう。「私は...」で始まる文章の続きを20考えてください。「私は女性です」程度の短い文章で構いません。制限時間は5分です。
さあ、5分以内に20個の文章は完成しましたか? 意外に難しかったのではありませんか。
初めのうちは性別、年齢、社会的身分など個人的特性をあげれば済みますが、ひととおり出し切ってしまうと、「職を見つけたい」「恋人が欲しい」など自分のもつ欲求が対象になってきます。さらに進むと、無意識の欲求や悩みが答えに投影されてくるので、筆が鈍るというわけです。
これは、アメリカの心理学者クーニとマックパーランドによって考案された「20答法」と呼ばれるものです。このテストは投影法の一種で、投影法には有名なロールシャッハ・テストがあります。
投影法は、精神障害の診断にも極めて有効であるといわれています。精神分析学上の概念である投射とは、個人の内部に生じた衝動・感情・考えを外部の対象に位置付けようとする防衛機制の1つです。
あいまいで、はっきりしない刺激に対してどんな連想をし、どんな意味付けをしたか、などの反応を分析するさいに、投影法はその個人の無意識の世界を解釈する手掛かりになります。
投影法は本来、反応結果の解釈・分析に熟練が必要です。ここで紹介した「20答法」はあくまで"自分をはかる目安の1つ"くらいに考えてください。