深層心理は「夢分析」でわかる? 自己理解を深める心理学
2022年10月05日 公開
夢が教えてくれる「本当の気持ち」
人はなぜ、夢を見るのでしょうか。夢は心理学的には潜在的な願望の現れだといわれています。現実の世界では意識的に抑えている願望を、夢という形で開放するのです。
しかし、意識のコントロールが完全になくなることはありません。夢には必ずしもストーリーとしての一貫性がありませんが、それは自分の願望をストレートに表現したくない、という意識が働くためなのです。突然場面が変わったり、なんの脈絡もなく人物が次々と登場するのはそのためです。
では意識はなぜ、夢の中身をコントロールしようとするのか。これは、その願望が現実とかけ離れていたり、本心に気付くことで自分の中のモラルに矛盾が生じてしまうといった理由があるためです。
実は人はほとんど毎日夢を見ますが、多くは忘れられてしまいます。それはその夢が抹消せざるを得ないほど、強烈な本心や願望だったりするからです。
人は、ノンレム睡眠とレム睡眠を1周期(約90分)として繰り返します。脳の疲労をとるノンレム睡眠に対し、レム睡眠は体の疲労をとることを目的としており、脳は覚醒時と同様に動いていますので、このときに夢を見ることが多いのです。
眠っているにも拘わらず眼球が激しく動き、脳波が目覚めているような波形を示します。一生に換算すると、私たちは4年分の時間を夢に費やしていることになります。
夢分析でわかる「自分の深層心理」
夢は潜在的な願望の現れであり、自分を知る手がかりとして大切です。その解釈には大きく分けて「夢判断」で知られるフロイト派と、フロイトと袂を分かったユング派があります。
夢に現れる願望はあくまで個人的なもので、主に幼児期の性的な経験が関係していると考えたのがフロイトであり、その経験をリビドーと名付けました。一方ユングは、それはあらゆる願望の象徴で、意識を補償する積極的な機能であると主張しました。
さらにユングは、無意識とは「普遍的無意識」の上に「個人的無意識」が存在すると考えました。普遍的無意識とは、祖先から遺伝的に受け継いだ全人類共通の心の働きで、元型(アーキタイプ)と呼びました。神話やおとぎ話が文化や生活環境の異なる世界各地で似通っているのもそのためだとしました。
私たちの日々の行動も、アーキタイプの影響を受けています。人間が社会生活を送る上での仮面を「ペルソナ」といいますが、「ペルソナ」が医者なら知的で優しさのある、社長なら威厳がある、という態度をとらせます。
また、誰もが例外なくもつ悪の部分「影」や、異性の理想像「アニマ(男性の中にある女性像)」「アニムス(女性の中にある男性像)」も無意識にもつ心の動きです。
では、正夢は本当にあるの?
昔から正夢とか逆夢という現象があります。夢で見たことが現実に起きたり、夢とは反対のことが現実になる、ということです。
虫の知らせともいいますが、たとえば帰り道で事故にあう夢を見て、翌日は別の道を通ったら、いつもの道で家の瓦が落ちて人がケガをしていたというような経験などを指します。
しかし、夢だけから現実に起こった事柄を説明するのは難しいと考えられます。たとえばその家がかなり古ぼけていたのが前から何となく気になっていたとか、何かしら関連づけるものがあったためと考えられています。