1. PHPオンライン
  2. くらし
  3. 大腸に細菌は何個すんでいる? 科学が解き明かすウンチができる仕組み

くらし

大腸に細菌は何個すんでいる? 科学が解き明かすウンチができる仕組み

左巻健男(東京大学非常勤講師)

2022年09月13日 公開

大腸に細菌は何個すんでいる? 科学が解き明かすウンチができる仕組み

ウンチは何で茶色いのか? そもそもウンチとは一体なんなのか? 身近なウンチの正体について、東京大学非常勤講師の左巻健男氏が詳しく解説します。

※本稿は、左巻健男著『面白くて眠れなくなるウンチ学』(PHP研究所)より、内容を一部を抜粋・編集したものです。

 

ウンチの中身は、食べ物の不消化部分(カス)が大部分か?

ウンチの量および回数は食物の種類や分量、消化吸収状態によって違ってきますが、だいたい1日150~200グラムで、1日1回が普通です。一般に、動物性食品を多く摂ると植物性食品の多食時に比べて量・回数とも少なくなります。

ウンチは、食べ物の不消化部分(消化されなかった食べ物のカス)、消化管上皮が剝がれたもの(腸壁細胞の死骸)、腸内細菌とその死骸などを含んでいます。

練り歯みがき程度の理想的な硬さのウンチで、水分が全体の70~80パーセント程度あります。残りは、食べ物の不消化部分、消化管上皮が剝がれたもの、腸内細菌とその死骸の大きく3つに分けられます。これら3つは、同じくらいの割合です。

意外に水分が多いと思いませんか? 私たちは、飲み物と食べ物から1日に約2リットルの水分を摂っています。それに、消化管からの分泌液(唾液・胃液・腸液・膵液・胆汁など)約7リットルが加わります。

つまり、毎日合計で約9リットルもの水分が小腸に流れ込みます。この水分、約9リットルのうち7リットル程度は栄養素と一緒に小腸に吸収されるので、大腸に流れ込むのは約2リットル。大腸の働きの1つに水分の吸収があります。

ウンチとして排出する水分は1日にわずか0.1リットル(重さで100グラム)程度になります。多くても0.2リットル未満でしょう。

 

消化管上皮が剝がれたものが多いわけ

上皮とは、動物の体表面、または体内の器官内表面をおおう細胞層を構成する組織です。私たちの消化管上皮は口、胃、小腸、大腸の上皮です。

私たちの体をつくる細胞で、1番寿命の短い細胞は胃や腸の表面をおおっている消化管上皮の細胞です。そのうち、柔毛の細胞は24時間の寿命です。

消化管上皮細胞はそれぐらい新陳代謝が激しいのです。死ねば剝がれてウンチの中身になっていきます。

 

大腸でも食べ物の消化が行われている

中学理科で学ぶ「大腸の働き」は、「小腸で吸収されなかった残りの水分を吸収する」ことくらいです。小腸は消化された栄養素を吸収するところですが、大腸は水分を吸収して食べカスを固形にする、つまりウンチをつくる場所と学んできました。

ところが大腸には私たちの体をつくっている細胞の数、約37兆個を超える莫大な数(約100兆個)の細菌がすんでいて、人間の健康に大いに関わっていることがわかってきました。

食物繊維は、小腸ではほとんど消化されないで大腸までやってきます。この食物繊維を待ち構えているのが大腸内の細菌たちです。人間が消化できなかったものを自分の栄養分にしようとねらっているのです。

つまり、ウンチの中身の食べ物の不消化部分というのは、大腸の腸内細菌の働きによる食物繊維の「消化」においても消化しきれなかった部分なのです。

私たちの腸内は、適度な温度やpH(酸性・アルカリ性のものさし)、そして栄養が次々と供給されるなど、細菌にとってはすみやすい環境です。たくさんの腸内細菌がすみつき、その量は1キログラムにも達します。

大腸には食物の繊維成分を分解したり、ミネラル類を吸収する働きもあります。その働きは莫大な数の腸内細菌が担っているので、ウンチに腸内細菌とその死骸が含まれているのは当然ですね。なお、大腸内の細菌は、空気に触れると死んでしまいます。

 

宿便は存在しない

こんな説明を見たことはありませんか。"食べ物のカス"が小腸にぎっしりはえているデコボコ状の柔毛の間にひっかかり、残留してしまいます。

1度食べた物のカスが引っかかると、後から後からそこへカスがたまってしまい、腸内の流通を妨げるばかりでなく、大切な腸の吸収力を弱めてしまいます。

この残留物が宿便なのです。ときには数キログラムもの宿便がたまっています。宿便は「腸壁にこびりついて取れないヘドロ状のウンチ」です。

宿便は、ただ単に腸内の流通を妨げ、栄養分の吸収力を弱めるだけではなく、腸の機能を低下させ、便秘を引き起こします。宿便がたまると、肥満や肌荒れなどの原因になります。

健康・ダイエット関係でよく用いられる「宿便」は、実は、それに当たるものなど存在していません。「便秘で腸にたまっている便」とは違った意味で使われている言葉です。

小腸の表面で栄養分を吸収する上皮細胞は、新たに増殖した細胞によって柔毛という小突起の頂上まで押し上げられて頂上に達すると剝がれ落ちていきます。小腸の上皮細胞は寿命が最も短い細胞の1つで、1~1日半で柔毛から脱落します。

ウンチがこびりつくような状態にはないのです。内視鏡でも腸壁にこびり付いたウンチは確認できないとのことです。

しかし、「血液を汚し、消化吸収を妨げ、毒素を発生させ、病気のもとになる」から「宿便を取って、おなかをスッキリ」させようという宿便情報が多数あります。

そして、サプリメントをすすめたり、エステ療法や腸内洗浄をすすめたりしています。言われているような宿便はないのですから、引っかからないことですね。

 

ウンチの色のもとは胆汁色素

ウンチは、通常、胆汁色素のビリルビンによって黄褐色をしています。ウンチの色のおおもとの成分をたどってみると、それは胆汁です。胆汁は、脂肪の消化吸収に大切な役割を果たす消化液です。

胆汁の成分は、胆汁酸、リン脂質、コレステロール、胆汁色素(主にビリルビン)などの分子とナトリウムイオン、塩化物イオン、炭酸イオンなどの電解質を含んでいます。肝臓でつくられ、肝管、胆のう、総胆管を通って十二指腸に流れこみます。

十二指腸に流れ出た胆汁中のビリルビンは、大腸の中で腸内細菌の影響を受けて、ウロビリノーゲンに変わり、そしてこの大部分が便の色のもととなる黄褐色のステルコビリンへ変わっていきます。

 

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×