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自律神経の乱れで便秘に...医師が「とにかく朝食」をすすめる理由

小林弘幸(順天堂大学医学部教授)

2022年06月16日 公開 2024年12月16日 更新

自律神経の乱れで便秘に...医師が「とにかく朝食」をすすめる理由

多くの人は、便秘になっても改善を後回しにしてしまいがちです。しかし、順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、便秘は全身の不調にもつながってしまうと指摘します。便秘を改善する「朝食の摂り方」について紹介します。

※本稿は、小林弘幸著『名医が実践する「疲れない」健康法』(PHP新書)より、一部抜粋・編集したものです。

 

腸内環境次第で血液の質が決まる

自律神経の乱れの初期症状として起こってくる1つが、便秘です。腸の働きは、自律神経によってコントロールされているからです。

腸は、交感神経が優位のときに働きを抑え、副交感神経が優位になると働きを活性化させるというリズムを持っています。つまり腸の働きとは、人がリラックスしていたり、休息や睡眠をとっていたりするときに盛んになるのです。

人が休息している時間帯、腸は蠕動運動を活発にしています。蠕動運動とは、腸が「縮んでは伸びて」という動きを繰り返すことで、内容物を前へ前へと押し出す動きのことです。大便をつくり、出す力を高めるには、この運動が力強く行われる必要があります。

ところが現代に生きる私たちは、交感神経が優位で、副交感神経が停滞した状態になりやすくなっています。この状態では蠕動運動が弱くなり、よい排便を起こせません。

私は便秘外来も開設しています。患者さんたちは、長い間、便秘に苦しんできました。それが自律神経を整える生活を始めていただくと、長年の苦しみがうそのように、とてもよい排便ができるようになります。

便秘を放置している人も多いでしょう。とくに高齢の方に、その傾向が見られます。若いころは快便だった人も、加齢とともにほとんどの人が便秘がちになっていきます。

50代を過ぎると副交感神経が低下しやすいことに加え、腸の動きも弱くなりやすいことに原因があります。けれども高齢になると、身体のあちこちにつらい部分が出てくるので、便秘の改善をあとまわしにしてしまうようです。

しかし、便秘こそ真っ先に改善することです。血液の質を決めているのは、腸内環境だからです。血液の質がよくなり、血流が改善されれば、それだけで多くの不調はよくなるのです。

腸には、私たちが食べたものを消化し、そこから得られた栄養素を血液に送るという働きがあります。腸内環境が良好で快便の人は、消化吸収の働きも活発で、健康に大事な栄養素をしっかり血液へ送り込むことができます。

反対に、便秘の人の腸は働きが弱っていて、消化吸収の能力が落ちています。加えて、大腸に大便が長いあいだ留まっているため、そこに含まれた腐敗物質や毒素が吸収されやすくなっていて、血液の状態を悪化させてしまうのです。

こうなると、血液中の赤血球も変形し、酸素の運搬がうまくいかなくなってしまいます。結果、全身の細胞が、栄養と酸素の不足した状態になり、老化する細胞が多くなります。

しかも、腐敗物質や毒素が流れ込んできて、健康な細胞を傷つけます。ここから病気が起こってきます。

ただし、人の身体とはすばらしく、劣化した細胞は新しい細胞へと、細胞分裂によって次々に生まれ変わらせています。これを「新陳代謝」といいます。

とはいえ、新陳代謝の際、十分な栄養と酸素がなければ、新たに生まれてくる細胞は、丈夫さを欠いてしまいます。こうなると、老化しやすく、傷つきやすい細胞しかつくれなくなります。

便秘が全身の不調につながっていく理由は、ここにあるのです。

 

人の排便力は朝食で決まる

朝食を食べるか食べないかで、その日の自律神経の働きはまるで違ってきます。これによって、自律神経に支配されている腸の動きも変わってきます。

朝目覚めると、だんだんと交感神経が優位に上がっていきます。反対に、副交感神経は下がっていきます。しかし実は、腸の動きは副交感神経が優位のときに活発化し、交感神経が優位のときに停滞するというリズムを持っています。

つまり、人が休んでいるときに働き、人が動いているときに腸は休んでいるのです。ですから、副交感神経が低下したままでは、腸が思うように動いてくれません。

そのため、朝の起床後、交感神経が徐々に優位になっていくなかでは腸が思うように動けず、朝の便通も起こりにくくなります。しかし、腸のなかには、すでに大便ができあがっています。夜、私たちが眠っている間、副交感神経が優位になり、腸の働きが活発になっています。

そうして、腸のなかにたまっている老廃物や疲労物質など、不要なものを丸め込みながら大便がつくられています。これは、どうしても排出しなければいけません。

それには、起床後に高まっていく交感神経の働きをほんの少し停滞させ、副交感神経を活性化するという変動を起こす必要があります。

このスイッチの役目をするのが、朝食です。

自律神経は、食事中は交感神経が動き、食後には副交感神経が働くというリズムも持っています。食後、気持ちがリラックスして眠気を感じるのは、このためです。

そのリラックス時、腸では、消化吸収と排泄にふさわしい状態がつくられます。この自律神経の変動を朝食で起こすことによって、排泄する力が高まります。そうして大便をすっきり出すことで、腸内環境がよくなり、健康増進に働くのです。

一方、便秘に悩む人たちがいます。そうした人たちのほとんどは、朝食を食べていないか、慌ただしくすませています。こうなると、交感神経の優位性が高まっていくのを止められず、腸はそのまま休息モードに入って、便通が起こらなくなるのです。

朝食をゆっくりと食べる効果は、さらにあります。腸が動くと肝臓に多くの血液が流れ、続いて心臓に流れます。

朝食によって腸の消化吸収と排泄の能力が高まると、質のよい血液がどんどん循環するようになるのです。すると、脳の血流もよくなり、頭をすっきりと目覚めさせられるでしょう。

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