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“コネとカネ”がなくても当選? 昨今、政治家になる敷居が下がった理由

佐藤孝四朗(国会議員秘書)

2022年09月21日 公開

 

自分の強みを「カンバン」に

次にカンバン(看板)についてです。知名度や肩書というと、会社員であれば会社名や役職などですが、選挙では「東大卒」などの高学歴や「弁護士」「医者」「大学教授」などを多く見かけますね。実際のところ、国会議員の最も多い出身大学は東京大学です。

学歴以外での知名度に目を向けると、元アスリートや、元芸能人といった著名人が多くなります。所謂タレント議員と呼ばれるくくりになりますが、1980年までの参議院選挙には全国区制があったため(現比例区)、知名度のあるタレントが議員になりやすい傾向があり、1960年代から1970年代にかけて急増した、という背景があります。

1983年に参議院選挙の全国区制が廃止・比例代表制厳正拘束名簿式が導入され、この制度では個人名での投票が認められず、タレント候補の擁立は少なくなりましたが、2001年から個人名でも投票できる比例代表制非拘束名簿式に改定されたため、知名度による集票力を見込んで政党がタレント候補を擁立するケースが再度注目されるようになりました。

浮動票の多い都市部では、タレント候補に票が集まりやすいとされ、タレント政治家を輩出しやすいと言われています。

やはり高学歴や知名度が必要では、と思われるかもしれませんが、少数ではあるものの、国会議員でも高学歴でないこともあります。地方議員を経て国会議員になったり、大物政治家の秘書を務めたといった経歴の人もいます。過去には、総理大臣にもなった田中角栄氏などが有名ですね。

現職の国会議員にも、地盤も看板もないところからスタートしている議員も最近は増えていますし、後述しますが「公募」という機会もあります。特に、地方選挙においては政治家の敷居はそう高くありません。都道府県議会議員、市区町村議会議員となると学歴はほとんど関係ないのです。

また、国政選挙と地方選挙では選挙の手法が異なります。なぜなら、当選に必要な得票数が圧倒的に違うからです。

あくまで一般的にですが、都議、県議なら25000票、市区議なら3000票~1500票くらい獲得できれば当選すると言われています。

それに比べて国政選挙は、何万という得票数を要するなど、いわゆる空中戦といわれる広報活動、ポスターやビラ、マスコミ対策などの統一的な選挙戦術が有効となり、テレマーケティングなど統計学的、科学的データを活用し、現代の最大勢力である無党派層の攻略がポイントになります。

一方、地方選挙では、データや科学的統計以上に、人柄などその人自身が選挙の勝敗を分けます。

そういった意味でも、今や国政選挙よりも地方選挙の方が格段に面白いと感じます。看板なしでも、工夫や努力、頑張りで勝敗を左右し得るのです。

地方選挙ならではの効果を発揮する看板もあります。地域での子育てに悩む方も多いため、保育士の資格や幼稚園教諭、小中学校の教諭経験などが役に立ってきますし、高齢化が顕著な日本では、介護士やケアマネージャーの経験も有効な看板になり得ます。その他にも自分の得意とする分野での資格や経験が看板の1つになるのです。

いずれ国会議員を目指す場合でも、まずは地方議員にチャレンジすることは政治家になる有効な手法の1つと言えます。ぜひ自分の強みを見直してみてください。

 

100万円の「カバン」で地方選挙に出る

次にカバン(鞄)です。選挙にはお金がかかる、というのが一般的なイメージではないでしょうか。では、実際に選挙に出るにはいくら必要なのか、ご説明していきます。

まず立候補するには供託金が必要になります。立候補の届出では、すべての選挙において、候補者ごとに一定額の現金または国債証書を法務局に預け、その証明書を提出しなければなりません。

これを「供託」といいます。供託は、当選を争う意思のない人が売名などの理由で無責任に立候補することを防ぐための制度です。

ですから、その候補者や政党等の得票数が規定の数に達しなかった場合や、候補者が立候補を辞退した場合には、供託された現金や国債証書は全額(衆議院、参議院の比例代表選挙では全額または一定の額)が没収され、国や都道府県、市区町村に納められます。

逆に、落選しても没収ラインを上回った場合や無投票当選の時には、返還請求することができます。(総務省ホームページより)

今回は鞄のハードルが比較的低い、地方選挙での費用について考えてみます。最も身近な政治家である市区町村議員では、市区の議会選挙では30万円、町村議会では15万円が供託金として必要ですが、この他に選挙にはいろいろなものが必要です。

それは一概には言えず、選挙の種類、候補者の個性や環境、予算、状況などによって最低限必要なものは違ってきます。もちろん共通する基礎的な選挙用品はあります。

例えば、本番ポスター、選挙はがき、選挙運動用ビラ、選挙タスキなどは必ず必要なものです。一方、選挙期間によく見かける選挙カーなどは、必要という候補者もいれば、自転車のみで活動する候補者もいます。

つまり、最低限必要なものは、選挙戦略によって異なるのです。逆に言えば、選挙戦略によって、必要なものが見えてくるわけですね。

下記は、基礎的な選挙用品を含む、選挙用品の一例です。

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選挙用品一例
・本番ポスター(公費アリ)
・公選はがき(郵送のみ公費アリ)
・選挙カー(一部公費アリ)
・選挙ビラ(公費アリ)
・拡声器
・選挙タスキ
・選挙事務所看板(看板、垂れ幕、のぼりなど)
・白手袋
・ポスター(事前)
・選挙前配布用リーフレット(後援会入会案内)
・名刺
・電話機・電話回線
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「公費アリ」とは、候補者の選挙運動に必要な経費の負担を軽減し、立候補の機会均等を図ることを目的に、国または地方公共団体がその費用を負担して選挙運動を行いもしくは選挙を行うにあたり便宜を供与し、または候補者の選挙運動の費用を負担する、選挙の公営制度が使えるものです。

選挙の掲示板に貼るポスター代や選挙カー代などは、一部公費で負担してくれます。

これら以外では、選挙事務所を借りる場合の事務所代、その他、文房具やもろもろの経費も必要ではあるのですが。これらは特になければならない決まりはないので、選挙事務所が自宅であったり、商店街の知り合いが無償で貸してくれる、などでしたら、費用をかける必要はありません。

つまり超々最小限では供託金だけで選挙に出られるということになりますが、さすがに活動に少しの経費はかかることを考えても、市区町村議員選挙には、100万円ほどあれば出られるのです。想像していたよりも、カバンのハードルが低く感じられませんか。

 

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