「専門知識のない上司なのに」部下から信頼される理由
2012年04月27日 公開 2023年01月05日 更新
見方を変える「鳥の目・虫の目・魚の目」
ものごとの見方は、肯定的か否定的かだけではありません。こんな言葉があります。
「鳥の目・虫の目・魚の目で見ろ」
大空を飛びまわる鳥は、全体を見下ろすことができます。ものごとを俯瞰的に見る、鳥の目。
虫の目は、複眼。ぐっと対象物に近づいて、さまざまな角度から見る目。
そして魚の目は、水を泳ぐ魚のように、流れを見る目です。
未経験の仕事、自信のない仕事を割り当てられた部下には、鳥の目を教えます。
なぜ、その仕事があなたに回ってきたのか? この仕事をやりきるとその先はどうなるのか、部下に考えさせます。部下の視点を一段上げるのです。目の前しか見えなくなっている部下に、1つ上から物事を見る視点を教えます。
「前にもダメだったから」と答える部下には、虫の目を教えます。
なぜ、前はダメだったのか。次は、別の切り口から挑戦してみてはどうか? 物事を見る角度を変えるのです。
「君が顧客の立場だったら、どう考える?」
「もし、競合相手だったら、どうすると思う?」
「今回の結果だけ見れば失敗かもしれないが、長期的に考えれば、これで次につながる関係は築けたんじゃないのか?」
このように、別の角度からの発想を促します。
「どうして、これじゃあダメなんですか!」と自分の主張しか見えなくなっている部下には、魚の目を教えます。
仕事をするということは、周りの環境と折り合いをつけていくということです。顧客動向から市場動向。環境がどう動くか、これを見ずして仕事はできない。ガラパゴス携帯という言葉が一時さかんに語られましたが、どれだけ素晴らしい技術の粋を集めた商品でも、環境に順応できなければ、それを使う人がいなければ、闇に消えていくのです。
部下の周囲は、どんな流れであるのか。今の流れ、そしてこれから予測される流れを見る目を伝えます。
実際に対象を見るのは部下であり、上司が代わって見ることはできません。しかし、忘れられない上司は、「見方」を教えることはできるのです。
藤野祐美
(ふじの・ゆみ)
株式会社Y'Sオーダー代表取締役
大阪府出身。オーストラリアBOND大学大学院経営学修士。ミノルタ株式会社(現コニカミノルタ)、プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク社勤務を経て、オランダ資本企業ニュートレコ社の日本法人立ち上げに参画。さらに関連会社2社を立ち上げ、取締役に就任。アジア太平洋地域人事統括として事業拡大に貢献。その後、株式会社Y'sオーダーを起業し、各種企業へ人材・組織開発コンサルティング業務を展開中。企業理念である「誰もが、かけがえのない価値を持っている」のもと、理論+実体験+カウンセリング手法を融合した独自のスタイルで、人材・組織開発に取り組む。国内外での企業研修・講演は、年間200回を超える。
著書に『上司取扱説明書』(同友館)『自分たちのMBA』(共著、青山ライフ出版)がある。