3つの根拠を示せば周りは動く
上司や部下を動かすには、3つの理由、3つの根拠を提示するという方法が効果的だ。
テレビの報道番組などを見ていても、出演しているコメンテーターが、
「これから民主党は大きく割れます。その理由は、まず……、そして……、さらに……。このような党を二分するような大きな問題があるからです」
「被災地だけでなく全国に汚染が拡がる恐れがあります。その根拠は、第1に……、第2に……、そして第3に……」
などと、3つのポイントを示せば、「なるほど」と思ってしまうものだ。
1つや2つ、根拠を挙げたところで人の心は容易には動かない。しかし、3つ理由を明示されると、「そういうものかな」と思えてくるから不思議である。
上司や部下を説得し、早く動いてもらう際にも、この話法は有効になる。
3つの理由、3つの根拠を述べれば、ほとんどの人が、「それじゃあ、やらせてみようか」とか「では、やってみましょうか」と思ってくれることだろう。
たとえば、上司に、あなたのイベント企画を認めてもらいたい場合、
「同業他社は、これまで同じようなイベントをやったことがないので斬新」
「今はどこも『節電』や『エコ』を売りにしているので、協賛が得やすい」
「話題のスポットで開催するので、メディアに取り上げられる可能性も大きい」
といったように、3つ、根拠を列挙してみるのだ。
部下が、「どうして私がこのプロジェクトを?」などと質問してきた場合も、
「君には、前に同じような企画を成功させた経験がある」
「プレゼンテーションが上手なので、スポンサーにしたい企業を説得しやすい」
「君には、チームのリーダーとして期待もしているから」
このように、その部下を選んだ理由を3つ挙げることができれば、引き受けてもらえる確率は高くなる。
職場には、何事にも慎重な上司、すぐに「なぜ、私なんですか?」と直接尋ねてくるような扱いにくい部下もいるものだが、そういう相手であっても、3つの根拠をはっきりと示すことができれば、押し問答で時間を浪費することなく説得でき、次のステップへと進みやすくなるはずだ。
このことは、上司や部下に限らず、商談の相手や自分自身を説得するときにも威力を発揮する。
取引先に対し、「わが社の商品のどこが優れているか」を説明する際は、「価格が他社より安い」「デザインも斬新でコンパクト」、そして「省エネモードがついているので地球環境に優しい」などと3つ根拠を並べてみる。そうすれば、相手も、「検討してみるか」という気になる。
自分を自分で納得させる場合も、
「やりたくない仕事だが、やり終えれば社内での評価が高まる」
「同期のA君ではなく、私に任せてくれたというのは期待されている証拠」
「これまでに経験がない分野の仕事をやってみるのも、変化があっていいかも」
このように、3つのプラス要素を考えてみると、少しは前向きな気持ちになれることだろう。
何をするにしても、迷いや不安はつきまとう。迷いや不安が大きいと、人は懸命に「やらない理由」を探したりもするが、3つの根拠を挙げて背中を押せば、人の心も、あなた自身の気持ちも動かしやすくなるだろう。