いい汗をかくことは、メンタルにもプラスの効果がある
いちばん手っ取り早いのは、運動していい汗をかくことです。身体の運動、いわゆる「エクササイズ」そのものでも、メンタルにプラスの効果があることがわかってきています。
週末に子どもの運動会につきあったり、ゴルフなどのスポーツをしたりして、心地よい疲れとともに気分がスッキリして、その晩はよく眠れたという経験は、だれでもあると思います。
運動したその日だけスッキリしても、次の日は元の疲れた自分に戻っているという意見もあるかもしれません。しかし、運動はその日に現れる効果よりも、むしろ半年なり持続したほうが、睡眠やメンタルにとってプラスの効果があることが、研究でわかってきました。
運動と抗うつ効果についての研究は数多くなされてきましたが、運動の種類やハードさ、対象者の年齢や基礎体力の違いなどもあって、一致した結果はなかなか出ませんでした。
そんななか、イギリス、ケンブリッジ大学を主とする研究グループは、運動とうつに関する過去の研究15本を統合した解析を行いました。計19万1130人が対象となるこの解析では、早歩きや水泳など中程度の激しさのエクササイズを週に最低150分やった人たちは、あまり運動をしなかった人たちと比べて、うつになるリスクが25%低いという結果が示されました。
運動によって脳も活性化する
もちろん今後の研究で、数字が変わることはありえます。しかし、習慣として運動を続けていくと、確実にメンタルを強くする作用があるようです。あなたのまわりの「引きずらない人」は、よく運動している人が多いのではないでしょうか。
運動によって、筋肉だけではなく脳の中身も変わってきます。京都大学が高齢者を対象に行った研究では、3カ月間の運動プログラムによって、脳の前頭前野の体積が増加したというのです。
脳には脳由来神経栄養因子という、いわば脳神経細胞どうしをつなぐ枝を増やす肥料のような物質があるのですが、これも運動することによって活性化することが確認されています。ちなみに、脳由来神経栄養因子が減ってしまうことが、うつ病の原因の1つではないかとも考えられています。
ただ現実には、「毎日疲れていて、運動している余裕なんてないよ!」という人も多いでしょう。朗報を1つ提供しましょう。座っている時間を減らすだけでも、運動効果があるようなのです。
ハーバード大学公衆衛生学の研究グループが、4万9821人の高齢者を追跡して調査したところ、テレビを見ていた時間が長い人ほど、うつ病発症のリスクが高かったということです。長く座っているほど、メンタルには良くないことを示すデータです。
運動ができなければ、オフィスで座っている時間を減らしましょう。休憩のときに歩く時間をとるのもいいでしょう。立って仕事をするという作戦もあります。
立ちながら仕事ができる、スタンディングデスクを取り入れるオフィスも増えてきています。スタンディングデスクにすると、立ったり座ったりするスクワット運動が確実に増えます。環境を変えることが難しい場合は、1時間に一度はトイレ休憩に行くなど、少しでも歩く時間を増やす習慣を取り入れましょう。
「引きずらない人」になるためには、頭の体操ばかりでなく、首から下の運動も大切です。