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認知症から寝たきりになった妻...介護を続ける夫が決めた“延命治療とその後”

岩佐まり(フリーアナウンサー、社会福祉士)

2023年03月10日 公開


(写真はイメージです)

若年性アルツハイマーの母を20歳から19年間介護する、フリーアナウンサーで社会福祉士の岩佐まりさん。

岩佐さんの介護仲間で「認知症の人と家族の会」や「若年性認知症家族会・彩星の会」で世話人を務める三橋さんは、すでに意思の疎通ができなくなっていた若年性アルツハイマーの妻に延命治療をするかどうか、悩みぬき、ある結論を出しました。

※本稿は、岩佐まり著『認知症介護の話をしよう』(日東書院本社)より、一部抜粋・編集したものです。

 

延命治療について考えていたこと

いつからか、決めていたことがあるんです。それは、もしカミさんの延命が必要になったとしたら、拒否するということ。

だって、認知症の進行は止められないし、普通の人より少し短いかもしれないけれど、ぎゅっと凝縮された人生を精一杯生きてきたんです。もういいんじゃないかと思っていました。

カミさんは、64歳のときに肺炎にかかりました。誤嚥性肺炎です。

この病気になるのはもう3回目でした。認知症の人は誤嚥性肺炎になりやすいんですよ。飲み込むのが上手くいかず、食べ物や唾液が気管に入って炎症を起こすんです。だんだんと食べ物が上手に飲み込めなくなっていたカミさんもそうでした。

これは、とても怖い病気です。誤嚥性肺炎で亡くなる人は大勢います。致命的な病気なんです。

カミさんは、いったん内科に移って治療を受け、なんとか回復して精神科に戻りました。

でも、もはや食べることが危険なことは明らかでした。もう一度誤嚥性肺炎になったら、今度こそ助からないかもしれない。だから、別の方法で栄養を摂ることを考えなければいけなくなりました。

手段はいくつかあるんです。お腹に穴を開けて胃に直接栄養を流し込む「胃ろう」が有名ですが、他にもたとえば、「中心静脈栄養」(IVH)という高カロリーの点滴とか。

僕はどういう手段がいいのか、主治医の先生に聞いてみたんです。そうしたら先生は、こう言いました。

「奥さまが認知症と診断されて12年が経ちました。これ以上、何かするべきなのでしょうか」と。 何もしないということは、つまり、カミさんを看取るということです。先生は延命するかどうかを聞いていたんです。

 

もし、生きたがっていたら......?

このまま最低限の、腕から水分を入れる末梢点滴だけを続けて看取るなら、最期まで精神科で面倒を見られる。

でも、もし延命を望むなら、精神科では難しいので、胃ろうの手術ができる他の病院に移っていただくようになると、先生は言いました。先生は、カミさんの止めようがない症状の進行と、僕のことも考えて話してくれていたんです。

その頃にはもう、カミさんと意思の疎通はできなくなっていました。60歳くらいから、言葉が出なくなっちゃったんですよね。その頃に聞いたのが最後の言葉だったかな。

だから、本人がどう思っているかはわかりません。生きたがっているかもしれないけれど、「どうしてこんな苦しい思いをさせるの」と思っているかもしれない。

もし本人が嫌がってるなら、お腹に穴を開けてまで生きるなんて、望まないでしょう。病院を移ったり、やらなければいけないことも多い。

でも、もし、生きたがっていたら……?

いざ胃ろうという具体的な選択肢を突き付けられると、それまでの自分が何も考えていなかったことに気付いたんです。

カミさんの命をどうするかの判断が、僕にゆだねられている。悩んだなんてものじゃありません。どうしようどうしようと、あえぐうちに朝になる。夜はまったく眠れず、うつ病だと診断されました。

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胃ろうを決断したものの...

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