電車の中でうとうとしても我慢
電車で座っていると眠くなるのには、耳の奥にある前庭器官が感じる「前庭感覚」が影響しているといわれています。前庭感覚には重力やスピードなどから頭の傾きや身体の揺れを感知する作用があり、上行性網様体賦活系(じょうこうせいもうようたいふかつけい)と呼ばれる脳の神経系統に刺激を与えるのが特徴です。
身体が大きく揺れると上行性網様体賦活系に強い刺激を与えて脳を目覚めさせる一方、小刻みな揺れだと与える刺激が弱くなり、脳の目覚めをうながしません。
電車に乗っているときに感じる揺れはリズミカルで小さいもの(後者)ですので、上行性網様体賦活系の働きが弱まり、眠気を感じるようになるのです。
2015年に東京工業大学の伊能教夫教授(当時)が発表した研究結果によると、周波数が1ヘルツの揺れ方になる区間で、とりわけ眠気をもよおしやすくなることがわかったといいます。
これはだいたい1秒間に1回の揺れに相当しますので、それこそ、ゆりかごにすっぽりと収まっているような感覚になるのかもしれません。だから、周囲の雑音があってもおかまいなしに電車のなかで眠ることができるのです。
ただし、どんなに心地いいからといって、眠るために躍起になったり、座ったら即座に目を閉じて眠る態勢に入ったりすることは推奨できません。もしもそれが仕事帰りの電車であれば、本来寝るべき時間帯に眠気が訪れなくなってしまうからです。
コロナ禍以降、テレワーク主体になる人が増え、通勤電車に乗る機会は減ったと思いますが、それでも一定数の人は朝晩電車に揺られる生活を送っているはずです。
ぜひ、帰りの電車だけでも居眠りを我慢しましょう。むしろ、最初から座らないようにしたほうがいいかもしれません。