なぜ「汗をかきすぎる運動」が慢性疲労を生み出すのか
「毎日、適度な運動習慣を持ちましょう」というのは、今や健康でいるための常識です。これまで、体を動かす習慣のなかった人が、思い立って運動をし始めるというのは、いうまでもなく素晴らしいチャレンジなのですが、ここでも気をつけてほしいことがあります。
それは、「汗をかくことを目的とした運動は、控えたほうがいい」ということです。
「汗をかいてデトックスしよう」と聞くととても健康的な印象を受けますが、科学的な視点で見れば、発汗によって毒素(健康や生命に害を及ぼすもの)が排出されるということは、ほとんどありません(気持ちの面でスッキリするという感覚はたしかにあるので、この"スッキリ感"自体がデトックスだというなら話は別ですが)。
それどころか、じつは汗のかきすぎはかえって慢性疲労の原因となることもあるのです。
この理由は、体内の「ミネラル」にあります。代表的なミネラルとして知られているマグネシウムや亜鉛、鉄は、体内で行なわれている様々な代謝に欠かせませんが、体内ではつくることができません。過剰に体外に排出されないようにコントロールしながら、毎日の食事で適切な量を摂取する必要があるわけです。
しかし、たとえばナトリウムは体液や筋肉の働きの調整に欠かせないものですが、こういったミネラルは汗をかきすぎると体外に過剰に排出されてしまいます。それに伴って体内の代謝サイクルが滞り、疲労が抜けなくなってしまうのです。
ホットヨガは「よけいに疲れる」可能性大!?
では、どの程度が「適度な運動」になるのでしょうか。
健康維持のために行なう運動は、硬くなった筋肉を大きく伸縮させたり、血流をダイナミックに循環させることが目的です。ストイックに負担をかける必要はありません。
あくまでも、全身をしっかり動かすことを心がけましょう。たとえばスロージョ ギング(歩くくらいか、それより少し速いペースでのジョギング)やウォーキン グ、サイクリングや水泳などもオススメ。
また、心理的なデトックスを望むのであれば、均一リズムで同じ動作を繰り返す「リズム運動」によって、幸福ホルモン(セロトニン)の分泌を促すのもいい選択だと思います。
女性に人気のヨガやピラティスも、じんわりと汗をかく運動の代表格です。深呼吸をしながらゆっくりとストレッチをするので急激に負担がかかることもなく、こった筋肉はゆるみ、酸素をたくさん含んだ血流が全身を巡るのでオススメです。
ただし、注意が必要なのは、蒸し暑い空間で行なう「ホットヨガ」です。「汗をかくほどやせる」「汗と一緒に体内の悪いものを出す」というイメージがあるために「ホットヨガ」を行なえる施設が増えていますが、体質的に熱がこもってだるくなってしまう人も多いように見受けられます。
つい、汗をたくさんかくために頑張ってしまう気持ちもわかりますが、「爽快 感を得られる運動量」「爽快感を得られるシチュエーション」を大切にしてくだ さい。