出店場所を細かく分析...“マクドナルドの立地戦略”の秘密
2023年12月13日 公開 2024年12月16日 更新
どんなお店も、何気なく出店されているようで、実はその裏に緻密に計画された戦略がある。そう語るのは、3万件の調査実績をもつ店舗開発のプロフェッショナルである榎本篤史だ。なぜ、ここにお店を構えているのか?
その答えを知ると、「そんな意図があったのか!」と驚きの発見があるかもしれない。あなたの知らない「立地戦略」の世界を、のぞいてみよう!
※本稿は、榎本篤史著『図解 すごい立地戦略』(PHP研究所)を一部抜粋・編集したものです。
ドライバーから見て、「出やすいお店」は?
突然ですが、クイズです。上のイラストを見て、あなたがお店を新設するならどこにするか、考えてみてください。これは、お客様の目線で考え、心理的障害物を取り除くことを意識すると、答えが見えてきます。
答えは、わかりましたか? それでは、解説していきましょう!
まず、交差点で交わる2本の道路については、交通量の多いほうを基準に考えます。自動車が半日で5000台走る道と2000台走る道では、5000台走る道のほうが基準になります。できるだけ人口が多いところに出店する考え方と同じで、少しでもお客様をつかむチャンスを増やすためには、もっとも交通量の多い道を基準に考えるのです。
ですから、半日で5000台走る道と4000台走る道でも、5000台の道が基準になります。
基準にする道を選んだら、その道の「左側」に照準を絞ります。対向車がいて、右折しにくいからです。その時点で、進行方向右側にあるC、Dの立地は候補から消えます。
では、交通量の多い左側にある残りのA、B、E、Fはどこでもいいのでしょうか。いいえ、そうではありません。
交差点に信号がある場合、信号の手前よりも、信号の先にお店があったほうがいいとされています。
それは、なぜでしょうか?
手前でも奥でも車での入りやすさ・入りにくさは変わらないと思われるかもしれませんが、出るときを想像してみてください。
お店の駐車場から道路に出るときは、信号の奥のほうが出やすいですね。信号待ちでクルマが連なって止まっていると、手前のAやEのお店からは出られません。列が途切れたときか、列のどこかに割り込まなければいけないからです。信号が青になり、車の列が動いたタイミングでようやく道に出られます。
よって、交差点手前のAとEは候補ではなくなります。これが信号より先のBの場所であれば、渋滞していない限り、信号が赤の間に道路に出ることができます。道路に出るための障害が交差点手前よりずっと少ないのです。
ドライバーは運転中、視野がギューッと狭まるといわれています。周りの景色をよく見ているというより、前の車や信号、横を走るバイクなどに注意を向けています。これが、信号で止まった瞬間にポンと視野が開けてリラックスできます。信号で止まると一瞬ホッとしませんか?
まさにそのときに、狭まっていた視野が開けて、「あ、信号の先にコンビニがあるな」と認識できるのです。
では、BとFはどちらがいいのか。
2つの立地の違いは、Bが交差点の「角地」にあるという点です。角地というのは、2本の道路に面している場所のこと。この図では、5000台が走る道と2000台が走る道です。
そうなると、Bは両方の道からお客様を集められるので、7000台の交通量を持つ立地ということになります。対してFは5000台です。よって、より交通量の多いBがベストな立地です。
ちなみに、立地に関わる業界では、Aを「送り角」、Bを「受け角」といいます。ロードサイドに出店するならば、2つの道に面する交差点の角地の「受け角」を狙うのがセオリーです。
なお、これはコンビニの立地、特にセブン‒イレブンに顕著な立地戦略です。もし「送り角」にセブン‒イレブンがあったら、私は「あぁ、今は『受け角』の土地を狙って交渉している最中なんだなぁ」と思うくらい、徹底しています。
お客様の目線で考え、心理的障害物を取り除くことがどれだけ大切か、この例でわかってもらえるのではないでしょうか。