未曾有の超高齢社会の最前線を見てきた精神科医の和田秀樹氏がたどりついた一つの答え、それが「後半生こそ自分軸をもって生きる人が結局は幸せである」ということ。
人生100年時代となり、気がつけば「定年なき時代」に。だからこそ、折り返し地点に立った50代は、自分の人生を自分で決められる最後のチャンス。早くに行動に起こすことで、驚くほど豊かな後半生に変えていくことができるのです。
そのキーワードとなるのが「自分軸」。
自分の人生をどう生きるか。どんな喜びを感じ、何を大切にするか。そうした根本的な問いに、今、向き合う姿勢が何より重要です。仕事、お金、他者、過去の自分......、それらの「とらわれ」から自由になった時、ストレスから一気に開放されて人生の見え方が180度変わります。
※本稿は、和田秀樹著『50歳からのチャンスを広げる「自分軸」』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
健康である限り、何歳までも働き続ける時代が到来している
50代のみなさんにとって「定年退職後の人生」「シニアライフ」というのはまだあまり想像が付かないかもしれません。周りの先輩や上司の人たちの生き方をみて、「こうできればな」「自分ならこうでありたい」とぼんやり考えるくらいでしょう。
「雇用延長で今の会社で働く」
「それまでに資産を形成して悠々自適な生活を送る」
「アルバイトで稼いで趣味に打ち込みたい」
「あまり深く考えていない」
おそらく、5人いれば5通りの生き方があるでしょう。ただし、明らかなのは、多くの人にとって定年退職はかつてほど人生の大きな節目とはならないということ。みなさんがこれまで見てきた昔の上司の「定年後」の生き方はあまり参考にならないはずです。
では、現在のシニア世代の実情を少し見てみましょう。
総務省統計局では、2024年9月15日現在、65歳以上の高齢者は3625万人と過去最多になりました。総人口に占める割合は29.3%と、これも過去最高です。高齢者の就業者数も914万人と過去最多で、高齢者の4人に1人はなんらかの仕事に就いています。
この内訳を年齢階級別に見ると、65〜69歳の就業率は10年連続で伸び続けています。2021年にははじめて50%を超えて2023年に52%となり、65歳を過ぎてなお半数以上の人が働いていることが見てとれます。みなさんのまわりの先輩たちを見てもお分かりだと思いますが、今では60歳で仕事を辞める人のほうが少数なのです。
70〜74歳も5年連続で上昇し、34%と約3人に1人の就業率を示しています。
実際、年金制度も「定年なき時代」を想定して制度が何度も改正され、現在は、働いていても厚生年金と合わせた収入が月額50万円を超えなければ年金を満額もらえるようになっています。つまり、働いても年金をカットされないわけです。
今や働くかどうかの岐路は70歳からで、60歳で働くのをやめるのは現実的ではなくなりました。健康であるかぎり、働き方を変えながらも何歳になっても働き続ける。これが当たり前の世の中が到来しているのです。
「忙しいから」と何もしなければあっというまに60歳に!
みなさんの多くは会社の中で与えられた役割を全うすることに人生の多くを費やしているはずです。給料をもらっている以上、決められたことをする。それは会社員としては間違っていません。
ただ、会社の役割に忠実になるあまり、日本人の多くは会社と自分を同一視し、会社人間として生きる傾向が強いともいえます。そのため定年世代になって(60歳以上)、再雇用など働き方が変わると、今まで自分を支えていた基盤を失い、喪失感を抱く人が少なくありません。
たとえば、医者の場合、50代で人生を考え直して、準備すれば60歳前後で自分の道を進み、開業できます。そこから人気のクリニックも目指せますが、70歳過ぎだと、いくら元大学教授でも難しいでしょう。新たなビジネスや私のような文筆など別の世界でデビューするならなおのこと難しくなるはずです。
私も長年、老年精神医学に取り組んできましたが、定年前の社会的地位の高い人に限って、引退後の適応が難しい傾向にあります。第二の人生を見出すのが困難な人が多いですし、うつのようになる人も少なくありません。
ですから、50代のうちから、「60歳になったときに会社の看板がなくなっても何ができるか」を考えてみてください。「忙しいから」といって何もしなければあっというまに60歳を迎えます。一日も早く、これまでのキャリアや肩書に固執するのではなく、ゼロベースで自分に何ができるのか、何をしたいのかを考え直すことが大切です。
50代になれば社会のしくみも理解していますし、自分の性格や向き不向きも把握しているはずです。体力もまだあります。第二の人生の針路を定めるには最適な年代です。