「エロで売るな」小籔千豊に叱られた大塚澪の初著書 辿り着いた”怒られ上手”の極意
2026年05月18日 公開
オペラが歌える吉本芸人――大塚澪(おおつかれい)さんは、スラっとした長身と人目を惹く美貌を持ち、音楽学校出身で特技はオペラという、お嬢様的なプロフィールでありながら、実は、吉本新喜劇の舞台に立つ芸人さんである。
その大塚さんがこのたび本を出版した。タイトルは『ゾンビメンタル:どんなにヘコんでもすぐに復活する人の思考法』(東洋経済新報社)。テレビでの共演が多く、大塚さんが敬愛する大先輩・小籔千豊(かずとよ)さんとともにお話を伺った。
「エロオペラ」をやったら、「そんなの今すぐやめ!」と叱られた
――まずは、この本の内容について教えていただけますか?
【大塚】吉本興業の社内で「出版チャレンジ」という企画がありまして、30人ぐらいがプレゼンを行なった結果1位をいただき、出版に至ることができた本です。ですので、めっちゃ気合が入っています!
私は子供の時からすごく人に怒られやすい体質なんです。
だからこの本には、私がたくさん怒られてきたなかで学んだ、「人に喜ばれる怒られ方」や、人から怒られることをポジティブに捉える方法などを書いています。
つまり、アンガーマネージメントの逆、「アンガー“され”マネージメント」。怒りのダメージを最小限にしてプラスに転換する究極の方法を、心を全裸にして書きました!
――吉本の芸人さんに怒られたことで印象に残っていることはありますか?
【大塚】吉本に私と似たような特技を持った子が新人で入ってきたときに、「私が最初にやってたのに...!」とうじうじしていた時期があったんです。それを見た島田珠代姉さんに「そんな特技、くれたれ!」って言われたことです。「あげてしまって、残ったところにその人の本来の価値が生まれるから、何にもなくなった時に何ができるかを考えなさい。それは誰にも盗めないものだから、そこをまず磨くのが大事なんじゃない?」って言っていただいたのが、すごい印象に残ってます。
――小籔さんには怒られたことありますか?
【大塚】吉本に入った当初、「エロオペラ」と謳って、オペラと下ネタを融合させたネタをやっていたんですが、小籔兄さんに「そんなの今すぐやめ!」と叱っていただきました。
【小籔】テレビのネタ見せ番組でね。なにか一発当てて世に出たいという考え方は僕もいいと思うんですよ。でも、エロい方向で認識されたら、どこの番組に出てもエロいこと要望されるぞと。この子がそれを望んでるならいいですけど、きっとこの子は何もわからんとやってる。だったらやめるべきちゃうかなと思って。
【大塚】言われたときはちょっと反発してたんですけど、よくよく考えたらそんなに得することはないなって。だからもう真面目になります。そのエロキャラを払拭するためにあるのがこの本です!
忘れられない「無限サザエ」事件
――「怒られノート」をつけているそうですが、どうしてそんなノートをつけるようになったんですか?
【大塚】芸人になって1年目ぐらいの頃なんですけど、腹が立ったとか、感情が動いた瞬間がお笑いネタになりやすい、っていう話を聞いたんです。それで、ネタ作りのためにノートをつけ出したんですが、怒られた話ばっかりになっちゃったんですよね。
でも、どんな状況だったか、とか、どうして怒られたんだろう?とか書いていくと、意外と怒られている意味がわかってきたんです。この人はこれとこれが言いたかっただけで、この言葉は必要なかったよね、みたいな。そうするとイヤな感情をひきずらなくて済むようになるし、自分の態度も改善できるんです。
この本に書いてあるのは、地方営業の夜、居酒屋さんでの宴会のエピソードでして...。
大皿の料理を取り分けるのは一番後輩である私の仕事なんですが、その時サザエが不人気で、私は、大御所の先輩のお皿に、よそ見をしている隙を見て、次から次へと乗っけていったんです。それがバレまして...。「誰や無限サザエやっているやつ!」って怒られました。
私はサザエが得意ではなくて、でも先輩に「食べろ」って言われたから、鼻つまんでお酒で流し込むっていう、超失礼なことをやっちゃったんですよね。そうしたら、「大塚、それロケでもやるんか?ひとりでも不快に思う可能性があるなら、その行動はするな」とちゃんと怒られました。
【小籔】嫌いなもん全然食べんでええし。店もサザエもよろこんでへん。
【大塚】ですよね(笑)。「すべての人に失礼やろ!」と言われました。お店の人にも、サザエの注文をしてくれた吉本の先輩にも、料理を作ってくれた人にも失礼でした。「まわりの人の気持ちを考えて行動するべき」ということがよくわかったので、以後は自分の行動に気をつけるようにしています。
寛平師匠に言われたこと
――この本の企画のきっかけとして、間寛平さんから怒られた経験があるそうですが?
【大塚】吉本に入って間もない20代前半の頃は、まだまだ未熟で気性が荒く、悔しい気持ちや怒りの感情をそのまま言葉にしてしまっていました。そんな私に対して、「自分を支えてくれている人に、なんで感謝できへんの?」「その態度はもったいない。あんた損するわ」と真正面から注意してくださったのが寛平師匠です。私のような若手座員のことも、寛平師匠はちゃんと見てくださっていたんです。
本来だったら、「もういや。顔も見たくないわ」って思っちゃうかもしれないんですけど、私はもっと寛平師匠とお近づきになりたいし、「なんで怒られたのか知りたい」ってその時は思ったんですよね。出版チャレンジの企画のときに、そのエピソードを思い出してこの本の企画ができあがっていったんです。
【小籔】大塚ちゃんは見た目ほわんとしてるから勘違いされがちなんですけど、ガッツがあるし、先輩からバチンと怒られたときも、しゅんとなったり、うろたえたりする人が多いなか、あまり動じてないというか、ちゃんと色々考えてんねやろうなと思ってたので、この本を出すとなったときも、とくに驚かなかったですね。
世の中にはいい人ばっかりじゃなくて変な人もおるしな。なんかむしゃくしゃするから、誰かを避雷針のようにして、ストレスの捌け口にして怒ったりする人っていうのは確実におるので。
その人の言うことは別に聞かなくていいんですけど。この先にも変な人と会う可能性はあるわけじゃないですか。だから、怒られてイヤな思いをしたことを全くなかったことにするっていうのは、また同じ問題を自分で起こしてしまうから損かなと思う。
そういう意味で、防御のためにも、怒られたときの対処法を覚えておいて、そういうタイプの人の前では、こういう態度をとらない、というふうに工夫していったらいいのかなと思います。
僕はあまり人に怒られるタイプじゃないんで、大塚ちゃんのほうがたくさん怒られてきて、「怒られるプロフェッショナル」ですから、この本を読んで、大塚ちゃんのテクニックをぜひ役立ててくれる人がいたらいいなと思います。
【大塚】ありがとうございます!