「涙活」発案者が語る “涙の効能” ― 泣くだけでストレスは吹き飛ぶ!
2014年02月24日 公開 2023年01月11日 更新
こんなにすごい! 涙の効能
「感動泣き」は大人の泣き方
人間は泣きながら生まれてきます。
でも、新生児が「おぎゃあ」と泣いているとき、実際には涙を流しているわけではありません。
私たちが涙を流すようになるのは、1歳ぐらいになってから。先ほども少し触れたように、赤ちゃんは身体的ストレスによって泣きます。単純に、泣くことで不快なストレスを解消しているのです。
その後、泣くことで親や周囲の大人がストレスを処理してくれることがわかると、泣くことには「ストレスの表現」という意味も加わります。泣くことで理解してもらうという、コミュニケーション手段の1つになるのです。
ところが、成長とともにこの手段は抑えられていきます。「お兄ちゃんなんだから泣かないの」「そんなことで泣くなんておかしいよ」「我慢しようね」と言われ、泣くことで大人にストレスを解消してもらおうとするのではなく、言葉で伝えることを覚えていくのです。
こうして、子どもは「ストレス泣き」を卒業します。
その次に流す情動の涙は、悔し涙や悲しみの涙です。
ケンカや勝負で負けたとき、自尊心が傷つけられたとき。好きな人にフラれたとき、ペットとのお別れのとき……。抑えきれない感情が涙となってあふれるのです。
そして、大人になって流す涙が「感動の涙」です。
感動の涙は、幼い子どもは流すことがありません。なぜなら、感動の涙のベースにあるのは「他者への共感」だからです。映画やドラマを見て泣いたり、スポーツ選手の頑張っている姿を見て泣いたりするのは、登場人物や選手に共感し、喜びや悲しみを一緒に感じて泣いているのです。経験が少なく、相手の 気持ちを想像できないうちは、この涙を流せません。
「情動の涙」の中でも、この「感動の涙」こそ、ストレスを流すのに最もいい涙です。
というのも、情動の涙を流すには一度は脳がストレスを感じる必要があるのですが、そのストレスが自分自身のことである場合、悲しみや怒りに耽溺してしまいやすく、涙を流してもスッキリできないことがあるからです。
たとえば、大好きな人との別れを思い出して泣くという場合。涙を流すこと自体、ストレスを解消する効果はあるのですが、思い出すことで別れのストレスを再度味わうことになり、その悲しみを引きずってしまうかもしれません。
ですから、積極的に泣いてストレスを解消する涙活の意味では、他人の経験に共感して泣く「感動の涙」が一番いいのです。
泣くだけで心も身体も健康になる
情動の涙は、ストレス解消に効果があるというお話をしました。
ここで少しストレス解消のメカニズムについてご説明しておきましょう。
ストレス状態とは、どういう状態のことでしょうか?
一般的に「ストレス状態」とは、「交感神経」の緊張が高まっている状態のことを言います。みなさんも聞いたことがあると思いますが、自律神経には、交感神経と副交感神橙の2つがあります。交感神経は、身体や頭を活発に活動させるのに対し、副交感神経は身体を「お休みモード」にし、リラックスさせる役割があります。
交感神経が活発な状態というのは、いわば「戦闘モード」です。身の危険を感じると、身体がこわばったり、心臓がドキドキしたりしますが、これは交感神経が活発になって身体に司令を出しているのです。
ということは、交感神経優位から副交感神経優位へ、スイッチを切り替えるようなことができればストレス解消になります。ところが、このスイッチ切り替えはそう筒単にはできません。
人間は、起きている間は交感神経が優位に働いており、一度高まってしまった交感神経の緊張を緩めることは難しいのです。簡単なのは寝てしまうことです。寝てしまえば、副交感神経が活発になるので、交感神経の緊張は緩みます。
とは言え、すぐに寝ることができる場合ばかりではありませんよね。
実は、起きている状態のまま、副交感神経を活発にすることができる唯一の方法が、涙を流すことなのです。なぜなら、涙を流す器官である「涙腺」は、副交感神経のコントロール下にあるからです。
交感神経が高まってストレス状態にあったものが、そこから解放されて涙が流れ、リラックス状態へ移行します。
つまり、「情動の涙」は、交感神経から副交感神経へのスイッチのような役割を持っているのです。
「涙活」の医学面での監修をしてくださっている、脳生理学者の有田秀穂先生によれば、情動の涙を流すことには、ストレスを軽減させるほかにも、自律神経のバランスを整える、免疫システムを活性化させるという効果があるそうです。
自律神経は、健康を保つのにとても大事です。交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうと、なんとなく体がだるい、なかなか寝付けない、起きている間もぼおっとしているなど、さまざまな不調が出てきます。
情動の涙を流して、自律神経のスイッチングをすることでバランスが整い、こういった不調が軽減されます。
また、免疫システムは副交感神経の支配下にあるため、情動の涙を流して副交感神経を刺激することで活性化できるのです。
私自身、以前は風邪引き体質で年中どこか調子が悪かったのが、涙活を始めてから調子が良くなりました。自分でも不思議なくらい、風邪を引かなくなったのです。
気分もスッキリ、身体も健康になるのですから、やらない手はありません。
<書籍紹介>
泣くことは究極のストレス解消法! いま話題の涙活提唱者が、閉じていた涙腺を開かせ、心の緊張をゆるめるとっておきの方法を紹介。
<著者紹介>
(てらい・ひろき)
涙活プロデューサー、「涙活」発案者。
1980年、神戸市生まれ。同志社大学経済学部卒。
「離婚式」の発案者としても広く知られ、現在までに約200組の式に携わる。2013年1月から「涙活」をスタート。現在、泣ける映画・音楽・詩の朗読など毎回テーマを変えて月2~3回のペースで、涙活を開催している。映画やドラマとのコラボレーションも積極的に行っており、涙活を番組化した「タカトシの涙が止まらナイト」(テレビ東京系)には、企画段階から携わっている。
また。涙活の形として泣ける話に特化した人情噺、「泣語(なくご)」を新たに発案し、多くの話題を呼んでいる。医療や教育の現場において、心のケアを目的とした「感涙療法士」の認定制度もスタート。世界中に感涙(感動の涙)を広めるべく、日々活動に奔走している。
主な著書に、『心が元気になる涙のキキメ』(マガンジンハウス)、『涙活でストレスを流す方法』(主婦の友社/有田秀穂共著)、『涙活公式ガイドブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン/涙活研究会共著)がある。
涙活公式HP : http://www.ruikatsu.com