『本所おけら長屋』を語りつくす！“セキララ”座談会
2020年05月02日 公開 2023年10月12日 更新
最新刊（11巻）はどうでしょう？
昔の“巻”ばかりが挙がりますが、最新刊（11巻）はどうでしょう？
最後のお話「らくがき」がまた泣けました。私も絵を描くので、その気持ちがわかるというか。それよりなにより、「ぬけがら」のお染さんの過去！ これがまた……ねぇ。
お染は、重要なキーポイントを握る人物なんです。これまで、いろいろな人物の過去を明かしてきましたが、じつは松吉の過去はまだ出していない。
「こまいぬ」の石貫が、“松吉のお父さんに似ている”とあって。そのうち、松吉のことも明らかにされるのかな、って。
居酒屋のお栄ちゃんのこともまだですよね？
私、お栄ちゃんと松吉のやりとりが気になってる。松吉は、まだ気づいていないですよね、自分がお栄ちゃんに惹かれているってことを。
万造よりも、松吉なんだ！ 先生、意図していたんですか？
もちろん！
ところで、先生自身はどの回がお好きなんですか？
一同 知りたい（笑）。
それにキャラクターは、ご自身の性格とか癖を反映していたりするとか？ 先生の分身というか、先生そのものが『おけら長屋』だなって感じてます。
ひとり『おけら長屋』になっているハズです（笑）
書いていて泣いたのは、5巻の「はるこい」。黒石藩主の津軽高宗が、売られてきた女郎に慰められるシーン……あれは泣いた。女郎にならざるを得ないという選択をさせたのは、ほかならぬ高宗であって。その実情、吉原にいるという姿を目の当たりにして。でも、自分が慰められてしまうという……とても切ない場面でね。
ハッピーエンドじゃないんだけれども、高宗が大人になっていくというのが好きだな。
「はるこい」の尾形清八郎のその後も知りたいです。
露骨な質問をします。毎回、「泣かそう」「笑わそう」と思って書くんですか？
根底にはありますね。ただ「泣かそう」として泣かせるものを書けるワケじゃない。
ほぼ毎回、泣かされていますが。
ありがとう（笑）。でも泣かすほうが、笑わせるよりも簡単かな。書店回りをしていると、「おけら信者」の書店員さんがいらして。「この一文がすごかった。笑い転げた」なんて報告されると、ものすごくうれしい。
金太が登場すると、いつもクスッとします。でも裏にいろんなテーマを含んでいるんだろうな……とも。
金太の登場場面は、現代社会へのアンチテーゼでもあるんだよね。あの世界では、隔離や疎外することを絶対にしない。
とはいえ、「仲間にしましょう」というのもおかしくて。なんとか、こいつの居場所をつくってやるという、自然な流れを前提にしている。
じつは幼稚園や保育園にもそういう子はいて。大人は隔離したり、反対に仲良くさせたりと画策しがちだけれども、私はそれが嫌で。大人が関与せずに育ったら、そのまま“金太とおけら長屋”のような関係になるんじゃないか、って思います。
金太の存在は大きい。今の社会で大切なことを教えてくれるような気がする。
『本所おけら長屋』の隠れテーマは人間力です。どんな問題も、『おけら長屋』の面々は、人間力で解決していくから。神代の昔から、普遍的に、いじめとかセクハラとかずっとあった。でもそれは人間力でカバーできるはずだったのに、今はそうじゃない。物事、粋か野暮かで判断できれば、ストーカーなんて絶対に存在しないよね。
みんながそれぞれ違って、それでいいということを理解しないと。互助という言葉がありますが、防災にしろ福祉にしろ、今の人たちって「やり方がわからない」って言うでしょ？
でも、『本所おけら長屋』を読めば、ちょっとしたおせっかいのことが載ってるから！ お互いに関心を持つことからはじめましょうよ。
お仕事につなげる、桑原さんもすごい（笑）。『おけら』のいいところって、女同士の“いざこざ”がいっさいないの（笑）
そうですよね（笑）。女性はたくさん出てくるけれど、みんな仲よくて、いい意味で自己主張できてるしね。
不満があっても、その場で言いたいことを言っているから、そこで解決できちゃうのかも。
これができない長屋があってねぇ。今回（11巻）の「らくがき」に出てくる（笑）
比較できるからこそ、『おけら長屋』の住人が光るんですよ。ホント、教科書に載ればいいのに！
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