ある日突然、あなたが窃盗犯に…誰にでも起こり得る「誤認逮捕」の発生原因
2018年10月23日 公開 2019年04月03日 更新
弁護人の独自調査でアリバイ立証 しかし勾留は85日に及ぶ
わたしがいつも使う駐車場の時間打刻機は、3分ほど狂っている。わたしの自動車の時計は5分遅れている。自宅の居間の時計は数分進んでいる。
正確な時間を知りたいときはテレビかスマホでチェックすればいいので、そのままにしてある。
こんな例はよくあるだろう。
しかし、わずかな時間の差で誤認逮捕されることがある。
2013年1月13日午前5時半ごろ、Bさんはセルフ式給油所でガソリンを給油した。
3ヵ月後の4月24日、Bさんは「給油カード窃盗」容疑で警察に逮捕された(後に「ガソリン窃盗」容疑で再逮捕)。
青天の霹靂である。
警察は「Bさんが(盗まれた)カードを使って給油する姿が、ガソリンスタンド近くの防犯カメラに映っていた」と追及する。否認したが、毎日5時間以上の過酷な取り調べが続き、自白を迫られた。
「ポリグラフ(俗にいうウソ発見器)でも、お前が知っていると一発で結果が出た」
「やったことを洗いざらい話して、きれいな身体になって、きれいな手で子供の頭をなでてやれ。今のままじゃ、お前の手は汚れたままだ」
Bさんは、ぐらつきながらも否認を続けた。
逮捕から2ヵ月後、弁護人が独自調査でアリバイを確認し、防犯カメラの時刻が数分狂っていたことが判明した。Bさんの後に給油した人物が真犯人だった。
誤認逮捕の原因は、防犯カメラの正確な時間を確認しなかった捜査ミスに尽きる。
Bさんの身柄の拘束は7月に検察が起訴を取り消すまで85日間に及び、会社も休職した。
Bさんは損害賠償を求めて提訴。裁判所は府警の捜査も検察の起訴も違法と認め、620万円の支払いを命じた。
新聞報道では、警察はBさんに謝罪したが、捜査には問題がなかったとして内部処分はしないという。大阪地検は明確な謝罪はしなかったようである。
2つの事件も、なんの落ち度もない人間が逮捕・勾留され、面会も禁止されたまま自白を強要されている。
被疑者の身体を拘束するには、逮捕状請求から勾留まで、節目節目で警察・検察・裁判所が必要性をチェックし、必要がなければ釈放する建前である。
しかし、現実にはそれが機能していない。
警察官も、検察官も、逮捕令状を出した裁判官も、公判担当の裁判官も、保釈を拒否した裁判官も、誰も疑義をはさまない。「逮捕→勾留→有罪」への一本道をまっしぐらである。
こんな杜撰な「証拠」で逮捕・勾留されるのが捜査の現場である。
それもこれも、関係者が「事実は手軽に入手できる」と考えたからである。そのため証拠の確認を怠り、自白を引き出すことに専念してしまった。