「使えない&使われない」職場の"誰得システム"を生み出す真犯人
2018年12月07日 公開
<<停滞している企業ほど見受けられる、システムに関するこんなやり取り。
「システムを新しくしたらかえって仕事が増えた、なんとかしてくれ」
「こんなシステム使うなんてめんどくさい、元に戻せ」
現場の生産性を向上させるためのシステムが、なぜ使えない・使われないものになってしまうのか? システムを「使う人」「作る人」「守る人」いずれの立場も経験した沢渡あまね氏が、問題の元凶を解き明かす>>
※本稿は『システムの問題地図』(沢渡あまね著、白井匠イラスト、技術評論社刊)より一部抜粋・編集したものです
悲しきITシステムの成れの果て……。あなたの職場にもこんな光景、ありませんか?
奈川あずさ。大手産業機械メーカー、片桐メカトロニクスの情報システム部に所属する5年目社員です。彼女はいつものように、打ち合わせで経営企画部を訪れました。
奈 川「牧尾課長、フロアの端っこにあるデスクトップ端末、何に使っているんですか?」
牧尾課長「ウチが管理している、G-SAMに接続しているパソコンだよ。グローバル販売台数管理システム、の略だったかな?」
奈 川「(そんなシステムがあったんだ。初耳だわ)……管理しているって、ホコリかぶっていますけど」
牧尾課長「ウチは開発・運用主管部門として管理しているだけだから、ほとんど使わないんだ」
奈 川「ユーザー数も、アクセスも極端に少ないですけれど……」
牧尾課長「ははは、使い勝手悪いからね。無理やり、どこぞのパッケージソフトウェアを入れたみたいだし。画面に1つ1つ、台数の計画と実績を手入力しなくちゃならない。これが現場(営業部)から不評でね……。そもそも、営業部はExcelで売上を管理しているし。あ、後でわかったことなんだけれどね」
奈 川「画面もいつの時代のシステムだって感じ……」
牧尾課長「思ったより開発に時間がかかってね。各営業部やら経理やらが『この機能も増やせ』『これはダメだ』っていちいち文句言ってくるもんだから、遅々として先に進まなくて。ベンダーも、言われたままひたすら作るしかしてくれなくて」
奈 川「な、なんと……。どうりでユーザー数が少ないわけだ」
牧尾課長「もともと、前の経営企画担当役員が思いつきで作ったシステムだからね。自分への報告のために。あ、いまでもごく一部の国の営業担当者は台数管理のために使っているみたいだよ。毎日、派遣さんが一生懸命データを入力しているようだね」
奈 川「……それって、費用対効果マイナスじゃないですか? どんなROIを算出してシステム化したんだか」
牧尾課長「ははは。企画段階では、手作業がなくなる想定だったからね」
奈 川「……このシステム、なくしても問題ないんじゃないですか?(サーバもネットワーク機器ももったいない。ほかに流用したい)」
牧尾課長「あ、ダメダメ。営業管理部が文句言ってくるよ。営業部のスタッフのメールアドレスを抽出したり、管理職をリスト化するのに、G-SAMを使っているんだって。日次の通達や、部内メルマガの発行に必要なんだそうだ」
奈 川「……(そんな使い道だけのために、このシステム残しておくんですか!?)」
なんでそんなシステムがあるの?
イラスト:白井匠