どんな職場にもいる「議論好き」な人の対処法
今も昔も、「雑談が苦手」という悩みは尽きないもの。たとえば、「初対面で何を話していいかわからない」「話がつまらないと思われていないか不安」「とにかく沈黙が訪れるのが怖い」などなど...。
しかし、放送作家でありながら、科学的に研究されたトークメソッド「インプロ(即興力)」の養成講師として活躍する渡辺龍太氏によれば、雑談上手と雑談下手の違いは「紙一重の違い」に過ぎないと言う。
そこで今回は、そんな渡辺氏の著書『雑談がおもしろい人、つまらない人』(PHP研究所)の中から、「雑談と議論の違い」について語っていただいた。
「話したくない」と思われる人の共通点
雑談において、政治や宗教の話は禁物と言われています。それはなぜかというと、政治や宗教といった話は「議論」を呼んでしまう可能性が非常に高いからです。議論になると、「お互いの意見のどちらがより正しいか」を主張する展開になりがちで、よほどの盛り上がりがない限り、少し変な空気が流れてしまいます。
しかし、「単に政治や宗教の話さえ避ければいいはずだ」と勘違いして、雑談中に議論をしたがる人が数多くいます。次の会話は、陽気な若手社員Aさんが、普段あまり話さない別の部の先輩Bさんに話しかけているところです。
A 「来月、大谷翔平の試合を生で見にアメリカに行くんですよ! 試合のチケットも旅費もとっても高かったんですけど、めったにない機会だし、思いっきりお金使っちゃいました。おかげで貯金、もうほぼゼロです(笑)。あはは!」
B 「(怪訝な顔で)え? 若いからって、貯金ゼロはないでしょ。そんなんだと将来、苦労するよ」
A 「(え、食いつくところ、そこ?)じ、実は、大谷翔平とは地元が一緒なんです! だから特別な選手で、一度はメジャーで見たかったんです……。お金は、これから貯めるようにしますよ」
B 「いやいや、俺も野球好きだけど、貯金ゼロはさすがに引く。そういう長期的な目線がないところが、何か、仕事にも出てるよね……(深い溜息)。こんな注意してくれる人、あんまりいないからラッキーだと思った方がいいよ。ここまで言われて、どう思った?」
いかがでしょうか。議論開始のゴングの音が聞こえてきますね。Aさんは、大谷翔平さんのファンだからアメリカに試合を見に行くという、何気ない雑談をしただけです。そして、ちょっとしたネタとして、貯金を使い果たしたと大げさに表現し、Bさんを笑わそうとしただけです。
ところがBさんときたら、「貯金ができないやつは、仕事もできない」という持論を展開して議論をはじめてしまいました。非常にめんどくさいタイプです。しかし、こういう人は本当に良かれと思って持論を相手に語っているので、自分が議論をふっかけている自覚がありません。