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「あがり症は治さなくていい」 あがり症を克服したカウンセラーが主張する理由

佐藤健陽(佐藤たけはるカウンセリングオフィス代表)

2020年05月06日 公開 2024年12月16日 更新

 

1つでも当てはまるなら、あなたもあがり症かもしれない

あがり症は、先述したように正式な診断名ではなく俗称です。そのため、その特徴も正式に定められているわけではないので、あくまで私の主観でお伝えします。

あがり症の人の特徴は実に様々なのですが、「あがり症の人が苦手なこと」を挙げるとわかりやすいと思います。苦手な場面で緊張し、あがり症の症状が出るからです。

先述したあがり症の説明では、発表やスピーチをするのが苦手な人を例に挙げましたが、ほかにも様々な、苦手な場面があります。

【あがり症の人が苦手なこと】
・人前で電話をかける
・公共の場所で食事をする
・パーティに行く
・権威ある人と話す
・あまりよく知らない人達と話し合う
・仲間の前で報告をする
・会議で意見を言う
・初対面の人と会う
・人々の注目を浴びる
・人に見られながら字を書く
・公衆トイレで用を足す
・誰かを誘おうとする
・試験を受ける

これらは、あがり症ではない人でも「ちょっと苦手」という人がいると思います。

また、人と接することを苦にしない人からすると、「そんなことでも?」と思うようなものもありますよね。でも、あがり症の人にはときに生死がかかるような重大な事柄になる場合もあります。

例えば、会食恐怖の人は、人と食事をする際に、箸やフォークを持つ手が震えるのではないか、音がカチャカチャ大きすぎやしないか、食べ物を咀嚼する音や飲み込むときの音が人に聞こえやしないか、と気が気ではなく、美味しいはずの食事の味もわかりません。

書痙の人は、自分の手元に人の視線が集まっていると思うと、緊張して手が震えたり、頭の中が真っ白になって何を書いているのかわからなくなったりします。

問題なのは、苦手な場面で感じる苦痛の度合いです。

あがり症の人にとってこれらの苦手な場面に遭遇することは、断崖絶壁に追い詰められて、もう前にも後ろにも逃げ場がないような絶望感や、底知れない恐怖を体験することと同じです。

どれも日常生活でよく見られる場面ですが、それゆえに、日々苦痛に直面する場面が多くあるので、その生きづらさは計り知れません。なかには、看護師なのに注射するときにあがって手が震えてしまう人や、仕事ができると評価されているのに人前で発表する場面が増えることを避けるために、昇進を断る人さえいます。

あがり症の人は、当然これらの苦痛から逃れたい、あがり症を治したいと思って様々な方法を試します。私も通ったことがある話し方教室や講座、トレーニング等々。

しかし、それらはどれも対症療法であって、根本的な意味であがり症が治ることはまず難しいでしょう。

仮に、あがり症の症状は消えても、今度は書痙やパニック障害など、対人恐怖症や心身症といった他の神経症に移行したり、特定の誰かとの対人関係の悩みなど、過度に気にする対象が異なって生じる傾向が強いです。

では、あがり症に苦しむ人は、いったいどうしたらいいのでしょうか。一生あがり症の苦悩から逃れることはできないのでしょうか。

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あがり症であることを忘れることはできる

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