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生き方

誰とでも友人になろうとする人が、誰の友人でもなくなる理由

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2021年05月05日 公開 2024年12月16日 更新

心の整理は悩みの解決に不可欠であり、「心の整理」とは「事実の整理」。いるものかいらないものか、自分にとって大切かどうかをはっきりさせ、漠然とした不安の実体を知れば、悩みをスリム化できる。悩み相談を数多く受けてきた加藤諦三氏が「心を整理する」方法を具体的にアドバイスする。

※本稿は、加藤諦三著「心の整理学 自分の「心理的な現実」に気づくために」(PHP文庫)から一部抜粋・編集したものです。

 

なぜ八方美人は「友人」ができないのか

ヒステリー性格の人や神経症的傾向の強い人は、10年間同じ屋根の下で暮らしてきた人に対しても、赤の他人に対してと同じ感情でつきあえるのである。

だからこそ今までものすごく親しい「ふり」をしていても、一瞬のうちにまったく赤の他人になってしまうことができる。

10年間同じ屋根の下で暮らしていても感情が通い合っていない。そこで突然その人とはまったく関係のない生活が始まっても、少しも悲しまないで平気な人がいる。そして何もなかったかのように平気で次の人と生活を始める。

ことにその次の人とは今まで敵対していたとしても、平気で生活を始める。そして前の人との関係は、何もなかったかのごとくに心の中からも頭の中からも消えていく。人間関係も生活も、時の流れと共に次第次第に積み重ねられていかない。

Aさんの親切も、Cさんの親切も同じ親切なのである。Aさんに親切にされることと、Cさんに親切にされることは八方美人にとっては同じことになる。それは自分しか大切でないからである。

八方美人は誰にも彼にも気を遣う。Aさんにも、Cさんにも気を遣う。そうして大切なエネルギーを無駄に消耗する。世間を気にするが、困ったときに世間は面倒を見てくれない。

 

「良い人」とは「自分に合った人」

論語の中に「朋(友)あり遠方より来たる、亦楽しからずや」とある。命をかけて友が来る。友と会って共に喜ぶ。お互いに嬉しい。おみやげを持っているから嬉しいのではない。それが心の絆を生む。

「私に」会いに来てくれたことが、最高に嬉しい。酒を飲むことが嬉しいのではない。人と会うときにはエネルギーを使うとよい。そうすれば友が遠方より来れば「よく来てくれた」と嬉しい。お金で一瞬を喜ぶのとは違う。

「近くに来たから寄った」では嬉しくない。それは安直。「来てくれ」と言っていないのに、相手が訪ねて来てくれた。私は「忙しいのに来た」という恩着せがましいのとも違う。

仕事でもプライベートでも、心の整理に大切なのは自分に合った人を選ぶこと。「良い人」と言ったときに、「自分がない」人と、「自分がある」人では意味が違う。大切なことは友達も恋人も自分に合った人を選ぶことである。

10人の女性がいるとする。そのうちの「誰とプライベートにつきあうか」というときに、あなたはどの人を選ぶだろうか。その中の1番の美人とか、1番セクシーな人とかにするだろうか?

つまり皆が「わー」と言う人を選ぶのかということである。一般的に1番素敵な人と言われている人を選ぶのかということである。つまり最高の人を選ぶのかということである。もしそうだとすれば、あなたにはまだ「自分がない」。

自分があるということは、その中の1番自分に合った人を選ぶということである。最高の人ではなく、最善の人である。あなたにとって1番「良い人」が1番自分に合った人になったときに、あなたには「自分がある」といえる。

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自分がないと皆に好かれようとする

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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