「努力が報われた」「落とした財布が戻ってきた」…世界への信頼を取り戻す小さな経験
世界への信頼感を回復するには、この「予期」を修正していく必要があります。
初期設定がハードモードすぎたため、自分以外の誰かを喜ばせたり、周りの人間からの攻撃を避けることを最上の目的とした「他人のクエスト」を生きていかざるをえなかった。だから、あなたは今、「人生の中で、自分でコントロールできる領域なんてない」と諦めているかもしれません。
しかし、あなたはハードモードを今まで生き延びてきたのです。あなたの生きる力は、あなた自身が思っているよりも、ずっと強い可能性があるかもしれません。
あなたが弱い立場だった時に打ち立てた世界に対する予測は、しばらく時間が経った今の現実世界とは、かなり違ったものになっているのではないでしょうか。
というのも、天気や株価と同じように、予測というのは周囲の状況の変化を受けて、刻々と変化するものだからです。
先ほど、人間は「自分がこう動いたら、周りの反応はきっとこうなる」という予測がうまくいく体験を積み重ねることで、「ここにいても大丈夫だ」という安心を得ていくものだと述べました。
「どうせこうなるだろう」という悲観的な予測を持って行動してみたものの、周囲の反応がその予測より「いいもの」であることもあるでしょう。
予測がいいほうに外れると、「あれ、そういうこともあるのか」と書き換えられます。そうした経験をもって、「世の中とはこういうものなのか」というふうに予測がリニューアルされていくのです。
過度に悲観的にも楽観的にもならず、現実の反応に基づいて自分の予期をアップデートし、精度を上げていくことで、予期誤差は減っていきます。
「話しかけた人が思ったより親切だった」「落とした財布が戻ってきた」「努力が報われた」などの経験を積み重ねることによって、「世界は思ったより安全かもしれない」と感じることができれば、それが世界への信頼を取り戻すことにつながっていくでしょう。