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医師が明かす、年老いても「頭がいい人」と「そうでない人」の脳の違い

和田秀樹(精神科医、臨床心理士)

2021年12月21日 公開 2022年03月07日 更新

 

「面白い老人」で前頭葉の老化を防ぐ

脳の前頭葉は「知性」つまり、意欲・好奇心・創造性・計画性などを司る部分です。この前頭葉は早い人で、40歳ぐらいから萎縮が目立ち始め、老化を始めます。

前頭葉が老化すると思考が平板になり、新しいことにチャレンジせずに、定番のことをしたがる「前例踏襲型思考」になりやすくなります。そのほうが脳に楽だからです。前頭葉の老化を防ぐには、若い人が教えてほしいと考えるような「面白い老人」になる努力をすれば、大丈夫です。

その努力をすれば、若い人に頼られる老人になることができ、それがさらに前頭葉の老化を防ぎ...と好循環に持っていくことができます。

さて、その「好循環」をゲットするにはどうすればいいのでしょうか? それには二つのことが必要です。一つは、他人と異なることを考える習慣をつけること。もう一つは好奇心です。

 

どんな分野でも自称「専門家」になる

まず「他人と異なることを考える習慣をつけること」についてお話をします。日本では、「知らないと恥ずかしい雑学辞典」みたいな本がよく売れます。

しかしながら、実は「知らないと恥ずかしいこと」を知っていても、そんな知識は何の役にも立ちません。たいていの人が知っていることですから、当然です。

日本人には、恥をかきたくないから勉強をするという人が多い。若い人に頼られる老人になるためには、みんなと同じ知識を持つのではなく、他人から見て「頭がいい」と思われるような勉強をするべきなのです。それは、ほかの人が知らない知識を身につけるということです。

例えば日本を代表する映画監督の川島雄三さんは、ほかの人が一生懸命に読んでいる本なんかはまったく読まず、誰も知らないような本を山ほど読んでいたそうです。

みんなが読んでいる本は、その内容についてみんなに聞けばいい。必要なのは、誰も知らない知識なのです。それを知れば、ほかの人ではできない発想ができる人間になることができます。

テレビを視ても、意図的に頭をへそ曲がりな方向に使い、ツッコミを入れ、世間のいう常識を疑うようにする。そして、常に自分なりの考えを持つようにする。そうすると、物事に対する考え方の切り口が、ほかの人と変わってきます。意識してそうしておかないと、40歳を超えるとどんどん前例踏襲型のつまらない人間になってしまいます。

例えば、誰もが経験することですが、歳をとればとるほど、行きつけの店にしか行かなくなります。新しい店に行って冒険をしなくなるのです。しかし、そんなふうにしている限り、前頭葉の老化はどんどん進んでしまいますし、若い人が「すごい!」というような意見を言うこともできません。

本も、好きだからと同じ著者の本ばかりを読む。司馬遼太郎の本を読めば賢くなるかもしれませんが、ほかにも読んでいる人はいっぱいいますので、少しも目立つことはできず、当たり前の人にすぎません。

大河ドラマで渋沢栄一をやっているからといって、『論語』を読んでいる人が増えていますが、役に立つ内容もあるものの、みんなが知っている共通知識にすぎません。特に現在のようなスマホで何でも調べることができる時代の頭の良さとは、他人とは異なることを考えるということです。

例えば今、ひろゆきさんが人気がありますが、彼はほかの人にはない彼独自の考え方を展開することを旨としています。常識的な考えしかしない人は、お金を払ってでも自分がこう考えていることに対して彼はどう考えているかを知りたいわけです。

そういった意見を会議などで積極的に話すようにすれば、あなたは一目置かれるようになります。詳しくなるのは全部のジャンルでなくていいのです。

例えば歴史なら、江戸時代だけでもいいし、もっと狭いジャンルでもいい。それにまつわる知識がすごくある人は強いのです。そういう人であれば、ほかのジャンルの問題に対しても、こんなことは誰も言っていないというようなことを思いつくのです。

以前、映画の知識はほとんどない日本文学の研究者と一緒に映画を観て、そのあと話をしたことがありました。その人は監督などの知識は皆無でしたが、独特の見方をして、面白い解説をしてくれました。それは、彼が日本文学に大変に詳しかったからなんです。

一分野をとことん知っていれば、ほかの分野の芸術の解説も、ユニークな切り口でできるのだな、と感心しました。だから、面白い老人になるためには、オタクになるのはいいことなんです。どんな分野でもオタクになれば、ちょっと変わった、真実を突いた話ができるのです。

 

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