組織が発展するためには、若手の育成は欠かせない。会社の将来を担う人材へと成長してもらうためには、上司の役割が重要となってきます。
目白大学名誉教授の渋谷昌三氏は、部下と信頼関係を築けているリーダーの多くは、部下の話をきちんと聞き、話しやすい雰囲気を作ることが上手だといいます。
できるリーダーが実践する、部下の心を掴むコミュニケーション術を聞きました。
※本稿は、渋谷昌三著『「この人についていこう!」と思われるリーダーになる心理法則』(PHP研究所)より、一部を抜粋・編集したものです。
オープナーなリーダーは信頼される
できるリーダーの多くは、部下の話をきちんと聞く技術を身につけています。どんなときにも部下の話をよく聞くので、部下から信頼されます。また、そのようなリーダーには、部下がいろいろなことを話してくれますから、情報も集まってきます。
職場の中では、「悪い情報」をリーダーに伝えて嫌な顔をされたくないため、部下は「悪い情報」ほど隠そうとしがちです。
特に、部下の話をきちんと聞かないリーダーに対しては、都合のよい情報だけが伝えられてしまいます。
その結果、お客様の反応が悪くなっていることを現場の誰もが気づいていたのに、リーダーだけが知らずにいて、気づいたときには業績が急降下していて手の打ちようがなかった、ということも起こりうる時代です。
そのような状態にならないためには、リーダーは部下の話に常に耳を傾け、どんな話でも聞いていく受容的な姿勢が必要となります。
まずは、自分が部下の話を聞く姿勢ができているかどうかを確認してください。
オープナー(opener)には缶切りやせん抜きの意味もありますが、オープナーのように部下の心をうまく開いていくリーダーは、次のような特徴を持っています。
1.打ち明け話をされることが多い
2.聞き上手と言われる
3.一緒にいると相手はくつろいだ気分になる
4.人の話を聞くのが好きである
5.相手が何を考えているのか話すように促す
どのくらい、ご自分に当てはまるでしょうか。
もし、当てはまる項目が少ないようでしたら、意識的に、部下の話をよく聞くようにしてみましょう。聞くときには、相手の話をどんな内容でも肯定的に受容し、理解を示すような態度で臨んでみましょう。
聞き上手は「うなずき上手」
聞き上手な人は、「なるほど」「なるほどね」「そうなんだ」と会話の中で何度も相手の話にうなずいています。
タイミングよくうなずいてもらったり、あいづちを打ってもらったりすると、人は話しやすくなって、何でも話してしまうものです。心を開かせるリーダーは、うなずきやあいづちがとても上手です。
心理学者のマタラッツオは、うなずきについて実験をしています。
ある面接試験の時間を15分ずつ3つに区切り、最初の15分は普通に面接をし、次の15分は頻繁にうなずきながら面接をし、最後の15分はまったくうなずかないで面接をしました。
その結果、2番目のうなずきの回数を増やしたときに、相手の話す時間が驚異的に長くなることがわかりました。
うなずいてもらうと、話しやすくなって、自然に話す時間が長くなるのです。部下の心を開き、ホンネを引き出したければ、うなずきやあいづちの回数を増やしてみるといいと思います。
相手がうなずいてくれると、話し手は「自分の話を認めてもらえた」「自分が受け入れられた」と感じます。
その結果、「この人には何を話しても大丈夫」という安心感が生まれて、重要なことやホンネも話してくれるようになるのです。
反対に、相手にうなずいてもらえないと、話し手は自分が拒絶されているような気分になってきます。自分のことを拒絶している相手には、誰も重要な話をしようとは思わないでしょう。うなずいてもらえないと、話し手は心を開くことができないのです。
別の心理学の実験からも、うなずきやあいづちをたくさんする人ほど、好意的に評価されやすいということがわかっています。
部下に心を開いてもらうためには、部下の話に耳を傾け、一言一言にあいづちを打っていくことが効果的です。
部下の話を聞かないリーダーが多いだけに、自分の話をじっくりと聞いてくれるリーダーは、それだけで部下から厚い信頼を寄せてもらえるはずです。