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人と関わりたいけど刺激は苦手...専門家が説く“内向型HSP”と“外向型HSP”の特性

山本千儀(日本コミュニケーション心理学協会マスター講師)

2023年01月27日 公開

人と関わりたいけど刺激は苦手...専門家が説く“内向型HSP”と“外向型HSP”の特性

感性が人一倍、敏感・繊細な人を「HSP」と呼びます。昨今、多くの人がHSPであることに苦しみを感じています。敏感であるが故の生きづらさは、どうしたら解消できるのでしょうか。山本千儀さんが、HSPの苦しさを取り除くための「環境の整え方」について紹介します。

※本稿は、山本千儀著『「他人に振り回される私」が一瞬で変わる本』(日本実業出版社)より、一部を抜粋・編集したものです。

 

生まれつき感受性が強く、敏感な気質を持つ人々

世の中には直感が鋭すぎてつらい思いをしている人がいます。いわゆるHSPと呼ばれている人たちです。特に人との距離感、自己防衛、危機回避や安全地帯を意識していただきたいのはこの方々です。

皆さんはHSPという言葉をご存じでしょうか。HSPとは、Highly Sensitive Personの頭文字を取った言葉であり、生まれつき非常に感受性が強くて敏感な気質を持つ人のこと。

この概念は、アメリカの心理学者であるエイレン・アーロン博士によって提唱されました。

HSPというのは診断名ではなく、生まれつきの性質のことで、約5人に1人が当てはまるといわれています。脳の扁桃体が過剰に情報をキャッチするせいで、ストレスを抱えてしまう状態であり、感受性が強くて人一倍敏感な気質のある人たちです。

日本では「繊細な人」というニュアンスで解釈されることが多いですが、私がいろいろなHSPの人と関わったり、自分自身の特徴を俯瞰したりした印象では、繊細という言葉だけではいい尽くせない、他にも深いニュアンスが含まれているように感じます。

日本語でいえば、「繊細」というより「敏感」「過敏」という単語のほうがしっくりくる感じがします。アンテナが高くて、エネルギーを敏感にキャッチしてしまうというイメージです。

HSPは情報や刺激に敏感に反応します。竜巻や地震など自然災害が発生するとき、いち早く危険を察知した動物や昆虫などが逃げ出すといった話を聞いたことがあると思います。それは、動物や昆虫にHSP気質があるからだといわれています。

HSPの人は周りの人のエネルギーを敏感にキャッチするので、対人関係でつかれてしまいやすい傾向があります。

また、この傾向がある人は、優しい性格を持ち、共感力が高く、自分よりも他人を優先しがちです。

他の人が見えないところまで気づき、「あの人はこういうことがしたいのかな、力になれないかな」「ここを補足すると、みんなが助かるかも」などと気づきも多いため、細やかな配慮を自ら率先してしまうのです。

実は私自身もHSPであり、人より細部まで気づくことに悩み、なるべく必要以上に見ないようにスルーすることを意識してきました。

それでも人知れず悩みを抱えていたのですが、あるとき『鈍感な世界に生きる 敏感な人たち』(イルセ・サン著、枇谷玲子訳、 ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本のタイトルに衝撃を受けました。「これって私のことかも?」と目の前がスッキリ晴れた感覚と共に大きな衝撃を受けました。

 

人に疲れるのに、人と関わりたい? 社交的な繊細・敏感さん

HSPの方々は、共通する4つの特性があるといわれています。

・ 物事を深く処理し、深掘りして分析する。(D:Depth of processing)
・ 刺激に対して敏感に反応し、つかれやすい。(O:Overstimulation)
・ 高い共感性を持ち、感情移入しやすい。(E:Emotional reactivity and Empathy)
・ 音や光、匂いなどに対する感覚が鋭く敏感である。(S:Sensitivity to Subtleties)

これら以外に、HSPの人が敏感のために気になることは、実に多種多様です、本書では、特に人間関係に強く左右される、人と関わりたいのに人につかれる、「外向型HSP」(HSE)について触れたいと思います。

HSPと一言でいっても、実は複数のタイプに分かれています。私自身、これまでHSPの方々とコミュニティで交流したり、セッションを行ったりしてきた経験からも、十人十色で一括りにできないのを実感しています。敏感の対象が人それぞれなのです。

あえて大まかに分類すると、4タイプに分けることができます。

まず、内向型と外向型に大きく分かれ、外向型のHSPは「HSE」と呼ばれています。HSPの中にHSEという1つのタイプがあるといったイメージです。

HSEは「Highly Sensitive Extrovert」(ハイリー・センシティブ・エクストロバート)の略であり、「外向型HSP」と呼ばれることがあります。HSEという概念を提唱したのは、HSPを提唱したエレイン・アーロン博士と共に活動している心理カウンセラーのジャクリーン・スティックランド氏です。

そもそもHSPの人は感情がとても繊細であるため、人間関係につかれやすい特徴を持っています。この特徴は内向型も外向型も同じです。

ただし、1人で過ごすことを好む内向型に対して、外向型は人につかれやすいのに人と関わりたいという特性を持ちます。過敏な気質と外交の気質を両方持っているので、まるでアクセルとブレーキを同時に踏んでいるような人たちといえます。

内向型のHSPからは明るく社交的で繊細な人に見えない、一方、非HSPからは気をつかい過ぎ・気にし過ぎと見え、どちらからも理解をしてもらえず、深く悩むことが多いのです。

以上をもとに、刺激追求型、刺激を追求しない型という観点を加えて、4タイプに分類してみたものです。

・HSP(刺激追求しない型・内向型):人と関わるのが苦手、刺激が多いとつかれる、内に向けて対話する、1人の時間で回復

・HSE(刺激追求しない型・外向型):人と関わるのが好き、刺激が多いとつかれる、外へ発信、外からエネルギーをもらう

・HSS型HSP(刺激追求型・内向型):人と関わるのが苦手、好奇心旺盛・刺激を好む、内に向けて対話する、1人の時間で回復

・HSS型HSE(刺激追求型・外向型):人と関わるのが好き、好奇心旺盛・刺激を好む、外へ発信、外からエネルギーをもらう

 

コロナ禍で苦しんだ外向型の人たち

外向型で刺激を追求しない型(HSE)は、「人と関わるのが好き」「刺激が多いとつかれる」「外へ発信する」「外から、特に人からエネルギーをもらう」といった特徴を持っています。私自身もどちらかというとこのタイプに分類されます。

特徴を見ていただければおわかりのように、矛盾した特徴を兼ね備えています。

1人になりたい時もあるのに、1人でいる時間が長くなると不安になり、さみしくなります。人と関わるのは好きだけど、人のエネルギーを敏感に受け止めてしまう、人の気持ちが自分に投影してしまう。刺激を求めているわけではなく、むしろ刺激を受けてつかれてしまうことが多々あります。

悩みを抱えた時には誰かに相談をして、外の人からエネルギーをもらうのですが、エネルギーをもらって元気になると同時に、敏感な感情を受け取ってつかれてしまうのです。

こうした違いは、コロナ禍が起きた時に顕著な違いとなってあらわれました。緊急事態宣言が発令され、ステイホームを余儀なくされていた時期です。

内向型のHSPの人たちは概ねポジティブな反応をしました。会社や学校に毎日通わなくても良くなったことで、気持ちがラクになったというのです。ある人は「こんなにラクな生活があるんだ!」と目を輝かせながら話していました。

外向型のHSPの人たちは自粛期間をそわそわと過ごすことになりました。社交的な人たちは、他人と関わることで気分転換や元気になるエネルギーをもらうので、人と関われない期間が長引くと、何か物足りないような感覚になります。

Zoomなどのオンラインコミュニケーションツールを活用して、雑談をしたり飲み会をしたりしていたHSPの人はこの外向型タイプの人たちでしょう。

 

HSPの苦しさを解消するには?

では、HSPの人たちは、どのようにすれば苦しさを解消できるのでしょうか。

1つは、環境を整えることです。具体的には必要のない物を捨て、整理整頓・清掃をするのです。

HSEを含むHSPの人たちは、100の情報や刺激のうち、普通の人たちは20くらいしか受け取れないところ、80くらい受け取れる特性を持っています。脳に供給される情報量が多過ぎるのでつかれやすいわけです。

ですから、日常的に脳疲労になるので、気分を乱す要素は、排除しておくのが理想です。また、家族や周りの人に「ドラッグストアの匂いが苦手。芳香剤や洗剤、人工的な香りが苦手。騒音や小さな雑音、機械音が気になる」などと伝えて理解してもらうのも良いでしょう。

私が特に家で実践しているのは、時間がなくて物が散らかった時の対処法として、散乱した物をとりあえず1箇所に集めます。そうすると、6箇所に散らばった視覚情報が1に減るのです。

物理的な環境ももちろんですが、自分のことを理解してくれる人の存在も不可欠です。特にHSEの人たちは他人優先の傾向があり、周りの人にお願い事をするのも苦手です。ですから、少しでも違和感を持つ人、自分にとってつかれる人には近づかないようにしましょう。

 

繊細・敏感であることはギフト

主にHSPの特性と生きづらさを例に挙げましたが、実は、繊細で敏感な人であることはギフトです。というのも、敏感な人の多くは細かいところにまで目が行き届き、発想力と感受性が豊かで、クリエイティブな能力を持っています。

特に現在注目されているアートの分野では、敏感な人たちの絶妙なタッチと色や繊細な音は、人々の心を動かし深い感動を与えます。 今、様々な分野でAI(人工知能)の導入が加速しており、「AIによって失われる仕事」がしばしば話題になっています。

そんな時代にあって、クリエイティブな能力はAIでは代替不可能であり、ますますその才能が求められると予測されています。

時間管理の専門家であり、税理士の石川和男さんは、『仕事が速い人は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)という著書の中で、仕事が速い人の「7つの原則」を挙げており、最速で「0→1」を生み出すクリエイティブ思考術の重要性を説かれています。

つまり、HSPのクリエイティブな能力は、これからの時代に大きな強みになるということです。敏感さや生きづらさを抱えているHSPの人たちは、日常生活で苦労する機会があるかもしれないですが、能力が活かされるチャンスが必ず来ます。

HSPの人が持っている素晴らしい能力として、与えられたギフトに気づき、フル活用して欲しいです。

 

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