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もとは八福神だったのに...いにしえの人々が「七福神」に懸けた願い

マーク・矢崎(日本占術協会認定占術士/日本占術協会理事)

2024年01月02日 公開 2024年12月16日 更新

 

金運の神様 布袋尊(養願寺)

品川神社から国道を渡り、新馬場駅前の道を進んで、左の路地を入ると、品川虚空蔵尊と呼ばれる養願寺がある。東海七福神の布袋尊が、祀られているお寺だ。

普段は、虚空蔵菩薩が祀られて、無限の知恵や望みのものを好きなだけ授けてくれるという、太っ腹な仏様がメインのお寺。お正月の七福神めぐりの期間は、同じ太っ腹つながりで、本堂に布袋尊が置かれ、布袋様のご朱印をいただけるとのこと。

布袋様はでっぷり太った笑顔の仏様で、もともとはあらゆる欲望を乗り越えた徳の高い中国のお坊さん。手にした袋は、さまざまな富や欲望を押し込めた堪忍袋で、富を求める者には、その袋から金銀財宝を取り出して与えてくれる、と言われているのだ。

布袋尊は福徳円満の神様だから、金運はもちろんだけど、人間関係や友情、恋愛などの、人と人とが仲良くなって、円満にしてくれる働きもある。

 

長寿の神様 寿老人(一心寺)

養願寺の本堂を背にして参道へ目を向けると、路地の向こうの旧東海道を挟んだ正面にあるのが寿老人を祀る一心寺。このお寺は、別名、品川のお不動様と呼ばれ、千葉の成田山新勝寺の不動尊を分霊したお不動様が本尊で、寺の前を旧東海道が通る由緒正しいお寺なのだ。

またこのお寺は焙烙という素焼きのお皿を頭に乗せて、その上に大きなモグサを載せて火をつける、「焙烙灸」という風習が残っている。

毎月28日に行われる行事で、七福神めぐりと同時には体験できないが、肩こりや頭痛持ちなど、肩から上の病気にはご利益があるとのこと、興味のあるあなたはぜひ体験してほしい。

一心寺にお祀りされている寿老人は、中国の道教の神仙で、南極老人星と呼ばれるりゅうこつ座のカノープスという星の化身とされている神様。寿老人という名前が示すように長寿のご利益をもたらす神様だ。

不死の霊薬が入った瓢箪を持っていて、どんな病気も治してくれて、不死の命を授けてくれるというありがたい神様だ。

寿老人は、鹿に乗ったり、鹿を連れた姿で表されることが多いが、藤原氏の氏神である奈良の春日大社の神様は、茨城県の鹿島神宮から鹿に乗ってやってきたという伝説があり、寿老人は、春日大社の神様と同一視されている。

 

商売繁盛を願う 恵比須天(荏原神社)

一心寺の前の旧東海道を左に下って、山手通りを越えて品川橋の手前を目黒川沿いに右手に折れると、東海七福神の恵比須天を祀る荏原神社がある。 目黒川沿いの参道の鳥居の脇には、品川神社の大黒様と対になるような、大きな石の恵比須様の像が立っている。

恵比須様の「えびす」には、多くの当て字があり、蛭子、恵比須、恵比寿、夷、戎などいろいろに書かれている。夷、戎は昔、北海道を蝦夷と言ったように、辺境の地の異民族という意味がある。つまりえびす様は、本来は、海を越えてやってきた海外の神様、という意味があるのだ。

また漁師は、海で漂流する異人の遺体を見つけると、えびす様が来なさった、と手厚く供養した。すると、そのお礼として必ず大漁になったとされ、そこから漁業の神様としての、えびす様信仰が生まれたのだ。

しかし七福神が広まるにつれて、海を漂流することから日本神話の葦の船で海に流された蛭子神や、海の彼方の常世の国から来た事代主の神と同一視され、烏帽子に狩衣姿の日本の神様の姿で表されるようになった。

また縁起物としてえびす様と大黒様が一緒に祀られることが多いけど、大黒様と同一視された大国主は事代主の父神で、大国主は農業の神、事代主は漁業の神。

この親子の神様が頑張ってくれると、豊漁豊作で商売繁盛という意味がある。ぼくは、おいしいビールが飲めますようにと、ヱビス様に祈ってきたんだけどね。

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勝負の神様 毘沙門天(品川寺)

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