1. PHPオンライン
  2. くらし
  3. 車が欲しい夫に“カーシェア”を説得するべきか? 統計学が明らかにする根拠

くらし

車が欲しい夫に“カーシェア”を説得するべきか? 統計学が明らかにする根拠

斎藤広達(経営コンサルタント)

2023年03月23日 公開

車が欲しい夫に“カーシェア”を説得するべきか? 統計学が明らかにする根拠

様々なデータ、会社の売上や目標、日々の家計から国家予算まで...身近にあふれるさまざまな「数字」。その意味を正しく把握し、自分事として把握するためのスキルが「統計学」だ。

@変換は、時間当たりの数字を出すことで、大きすぎる数字を「自分事」として考える技術。この@変換を用いることで、どちらが得かを見極めることができると、斎藤広達氏は解説する。

※本稿は、斎藤広達著『超文系人間のための 統計学トレーニング 「数学を読む力」が身につく25問』(PHPビジネス新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

最近はやりのカーシェアリング

-----------------------
Q. 夫が「車が欲しい」と言い出しました。確かにあれば便利ですが、高い買い物でもあり、駐車場代などもかかります。いっそ、最近はやりの「カーシェアリング」でいいのでは、と提案してみたのですが、夫は「やっぱり自分の車が持ちたい」との一点張り。さて、夫をどうやって説得すればいいのでしょうか。
-----------------------

自動車は高い買い物です。軽自動車でも100万円弱、セダンなら200万円は考えておいたほうがいいでしょう。さらに、駐車場代やガソリン代、税金もバカになりません。

しかし、それによって得られるメリットも大きいものがあります。いつでも好きなときに好きな場所に行けるのはやはり魅力ですし、子どもがまだ小さい家庭では特に重宝するはずです。また、地方となれば、車がなければ生活が成り立たないということも多いでしょう。

この事例では「カーシェアリング」の話が出ています。カーシェアリングとは1台の車を複数の人と共有するというサービスで、基本料金の他、使うたびに利用料が発生するのが普通です。

自動車は街中のコインパーキングなど利便性の高いところに置いてあることが多いため、今回の事例は都市部に住んでいる人の話と考えていいでしょう。つまり、「車がないと生活ができないわけではないが、あれば便利」ということです。

 

自動車のコストを「月」に直してみる

さて、こうした「高い買い物」をすべきかどうか考える際に役立つのが、「時間による@変換」です。

仮に200万円の自動車を買うとします。

買った車を何年間使い続けるかはもちろん、人によりますが、税法上、新車の減価償却は普通自動車で6年、軽自動車で4年です。あくまで税法上ではありますが、買った車は4~6年で価値がゼロになる、ということです。

そこで、ここでは仮に5年間使い続ける、ということにしましょう。

まず、1年で@変換してみます。すると1年で40万円(200万円÷5年)となります。さらにもう一段階踏み込んで、1カ月で@変換をします。すると、1カ月当たり3万円ちょっとになります。

40万円÷12カ月=3万3333.333.......円

だいぶ、イメージしやすい数字になってきました。問題は、自動車にはその他にもさまざまなコストがかかるということです。

ぱっと思い浮かぶのはガソリン代です。1リットルで20キロ走るハイブリッド車なら、ちょっとしたドライブで50キロほど運転したとして、ガソリンは2.5リットルほど。仮に1リットルが150円と仮定しても、375円ぐらいです。意外と少ないですね。

そこに、行った先での駐車場代や高速道路代が入るわけですが、これもとんでもない額にはならないことがほとんどです。1回につき数百円といったところでしょう。また、スーパーやショッピングセンターなどへの日々の買い物については、駐車場代は無料のところも多いはずです。

仮に毎週末ドライブに出かけ、その他、5日ほど短距離の移動に使うとすると、ひと月で5000円も見ておけば十分かもしれません。

問題は月ぎめの駐車場代です。都心の場合数万円もすることもあれば、地方の場合はタダ同然、ということもあるでしょう。ここでは都市部の例だということで、月1万円を見ておきます。

自動車税は年間3~5万円ほどかかりますし、保険にも入るでしょう。月ぎめ駐車場代と合わせ、ここでは仮に年間20万円としておきます。これを@変換で月に直すと約1万7000円です。

以上を合計すると、車を買った場合のひと月のコストは、こうなります。

・クルマの保有コスト 3万3000円
・ガソリン代など都度費用 5000円
・駐車場代、税金、保険など 1万7000円
計5万5000円

つまり、自動車を買うということは、月に5万5000円のコストを払うということと同義なのです。

 

車は「持たない」時代に?

では、カーシェアリングはどうでしょうか。業界最大手といわれるタイムズカーの料金を見てみます(2022年1月現在)。

タイムズカーを利用するには、まず会員登録をする必要があります。月額基本料金は880円です(利用料金に充当可)。

その上で、都度使用料としてベーシッククラスの自動車が15分220円。つまり1時間880円です。ただし、6時間までは上限で4290円とあります。

ガソリン代は利用料金に含まれます。長時間利用の場合は距離料金もかかりますが、たとえば8時間で80㎞走った場合でも6780円です。事故を起こした際などにある程度の負担をしてくれる安心補償サービスに入るかどうかは任意ですが、ここでは入ると仮定しましょう。

そして、先ほどと同様に、「月4回のドライブ(6〜8時間)」「月5回の都度利用(1時間半)」で計算してみると、こうなります。

・月額基本料 880円
・ドライブ代 4290円×4=1万7160円
・都度利用代 1320円×5=6600円
・安心補償サービス 330円×4=1320円
・行った先での駐車場代・高速道路代 500円×4=2000円
・その他、6時間を超える利用をした場合の差分など 3000円
3万960円

これで、議論のベースとなる数字が出てきました。「月5.5万円で自動車を購入するか」「月3.1万円で購入せずに自動車を使用するか」を比べることで、どちらを選ぶべきかを迫ればいいのです。

最初の問いの答えに戻ると、奥さんはこのコストの差を示して、夫を説得するのがよさそうです。

 

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×