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リーダーがチームメンバーに向けて話すべき「雑談の内容」とは?

加藤芳久(経営コンサルタント)

2025年03月25日 公開 2025年03月25日 更新

リーダーがチームメンバーに向けて話すべき「雑談の内容」とは?

リーダーに必要な素質はさまざまあるが、経営コンサルタントの加藤芳久氏は"雑談"こそリーダーに求められると主張する。チームメンバーとの方向性をすり合わせるために有効な"雑談"とは?詳しく教えていただいた。

 

職場の環境づくりは大事である

「良い職場環境」と聞いて、どんなイメージがありますか?

職場の窓は大きくて日が差し込み、明るい室内には観葉植物が並んでいる。掃除が行き届いていてデスクはきちんと整理整頓されている。そんなドラマのような職場をイメージされた方もいらっしゃるかもしれません。

職場の環境整備活動として5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を実施することも大切ですが、私がお伝えしている一番大切な「職場環境」とは、こうしたハード面のことではなく、ソフト面である職場の空気感や雰囲気を指します。

これまで多くの企業の職場を視察、組織風土変革のコンサルティングを通じてわかったことがあります。それは、想像以上に多くのリーダーは空気や雰囲気という目に見えない職場環境が業績に与える影響を軽視しているということです。重要視していないからこそ、そこを重点的に改善しようという感覚がないこともうなずけます。

また、職場の雰囲気は、勝手に自然発生するものであって、自ら作り出せないと思い込んでいる方がほとんどということもわかりました。

こうした職場の雰囲気は何によって醸成されているのでしょうか?

答えは「人間関係」です。その職場で働く社員同士の人間関係の質によって、社内の雰囲気が決定されていきます。そして、その元締めというか、大きな影響を与えているのが職場のリーダーです。読者の方も経験があると思いますが、誰がマネジメントをするか、リーダーシップを取るかで雰囲気は大きく変わっていきます。では、どうすれば職場の雰囲気はよくなるのか?次から詳しく解説していきます。

 

環境づくりのために“雑談”を

いろんなリーダーに「良い雰囲気をつくりましょう」とお伝えすると、「その方法を教えてください」と質問を受けることがあります。そこで、ぜひ覚えていただきたいことは、社内の雰囲気とは、勝手に自然発生するもので手が付けられないものではなく、意図的に創り出していけるものということです。そして、これからのマネジメント、リーダーシップはこうした目に見えない「雰囲気」を作り出せる資質が求められています。

コロナ禍になり、オンラインで仕事をするようになり雰囲気づくりは、非常に難しくなったことは体験されていることと思います。

私の支援先でも2020年から数年に渡り新入社員や若手社員が続々と辞めるという事態が起きました。どうやらオンラインでの人間関係構築には限界があったようです。オンラインで承認のメッセージを送っても、その熱意は半分以下になるし、改善のフィードバックとして叱ろうとしても相手のエネルギーや言外から伝わってくる相手の変化を感じ取ることは難しいのです。

オンラインで実現できなかった人間関係の構築や雰囲気づくりにおいて、一番大切だったもの。それは「雑談」でした。

良い職場には、質の高い雑談があるということも分かりました。雑談と聞くと、ゴシップネタやスキャンダル、芸能ニュースを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、質の高い雑談とは次のようなものです。

 

適当に雑談をするのではなく、自分の“理念”や“想い”を伝えよ

雑談には2種類あります。

ひとつは、ただの雑談です。ゴシップやスキャンダルといった時間の浪費になるものです。もうひとつは、意味のある雑談と呼んでいるものです。

これは雑談の中に、理念や想いが入っていて、その人の感情、希望や可能性、お客さまに届けたい想いや実現したい世界観など、未来を創造できるようなポジティブなものです。もし、信頼が貯蓄できるとしたら、こうした意味のある雑談は、相手との信頼残高を貯蓄できる時間でもあります。

モノとモノは接着剤でくっつけますが、人と人は雑談がくっつけます。

その際、どんなくっつき方、つながり方をするのか?ネガティブな雑談や会社の批判・不平不満、愚痴でつながるのか、明るい未来や可能性を語ってポジティブにつながるのか?

つながり方、すなわち人間関係のつくり方によって、社内の雰囲気は大きく変化していきます。雰囲気を変えようとおもったら、まずは社内で使われている言葉を変えることをおすすめします。

 

“理念”や“想い”を伝えることで職場に起こりうる変化とは?

こうして、意味のある雑談で理念や想いを伝え続けると、ある変化が起きていきます。最初の変化は、話す言葉が似てきて、共通言語が増えてくるということです。人は、共通言語があると親しくなっていくものです。

子どものころや学生時代に、友人同士でしか知らない秘密の暗号や合言葉、先生のあだ名などありませんでしたか?こうした共通言語は人をつなげる効果があります。そして、共通言語が出来てくると、意思疎通にギャップが起きることが減り、コミュニケーションのトラブルが減っていきます。これは雑談量が増えたことより相互理解が進んだからといえます。

さらに、いわゆる「思い違い」が起きるまえに認識のすり合わせが可能になり、共通認識が増えたことにも由来します。ここまでくるとしめたものです。共通言語、共通認識ができると共通イメージが出来上がることになり、「何のために働くのか?」という本質的なコミュニケーションにも発展しやすくなります。

そして、この会社で働く意味についても価値観のベクトルが揃っていくようになります。それだけ、意味のある雑談による効果はパワフルです。

言葉には「事(こと)」と「場(ば)」を変える力があるのです。

著者紹介

加藤芳久(かとう・よしひさ)

経営コンサルタント

リーダー育成と組織変革を得意とする経営コンサルタント。「理念型育成®」を日本で初めて開発・体系化した人財育成の専門家。情報経営イノベーション専門職大学客員教授。 
大学卒業後、大手旅行会社、コンサルティング会社を経て、2016年に株式会社加藤経営を設立。資金も人脈も無いゼロからの起業だったが口コミで評判が広がり、上場企業、官公庁からのオファーが殺到する。これまで200社以上に対して人財育成の体系化・組織風土変革を支援してきた。顧客企業は、日本ハム、三井ホームなどの大手企業を中心に、米国発祥のステーキハウス・アウトバックから化学メーカーまで多岐にわたる。最高で半日200万円という高額フィーながらコンサル依頼が絶えない。日本最大級の洋上研修への参画をはじめ、台湾、シンガポールなど海外にも活躍の場を広げている。 
2022年には、株式会社ファイブベイ(FiveVai)設立、取締役副社長兼CHO(チーフハピネスオフィサー)に就任。千葉県出身。

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