「経験と勘」で意思決定を続ける日本企業の末路...仕事の質を上げる科学的思考
2023年03月31日 公開
ビジネスパーソンであれば、日々何らかの意思決定をしています。経営層や管理職はもちろんのこと、若手や新人でも業務の中で常に判断を迫られていることでしょう。
何事も個人の経験や勘ではなく、あくまでエビデンスに基づいて質の高い意思決定をすることは不可欠。しかし、どのような原因がそのような数値(結果)をもたらしたのかについて、きちんと検証した上で発言できる人はどれだけいるでしょうか。
そこで重要となるのが、原因と結果に関する因果関係を明らかにする「科学的思考法」です。早稲田大学ビジネススクール准教授の牧兼充氏が、世の中の怪しい風説や声が大きい人の意見に惑わされない"合理的な意思決定"をするための思考法を紹介します。
※本稿は、牧兼充著『科学的思考トレーニング』(PHPビジネス新書)より、一部抜粋・編集したものです。
科学的思考は日常でも求められる
「科学(サイエンス)」と聞くと、「自分は文系職種だから関係ない」「数字は苦手だから専門家に任せればいい」と考える人も多いかもしれません。
科学的思考法とは、決して特定の職業や業務に関わる人だけに必要なものではありません。むしろ現代社会においては、ビジネスパーソンなら誰もが身につけるべき必須スキルと言っても過言ではないでしょう。
「原因」と「結果」に関する因果関係を明らかにし、エビデンスに基づいて判断する。これが科学的思考法の本質です。
ビジネスパーソンであれば、日々何らかの意思決定をしています。経営層や管理職はもちろんのこと、若手や新人でも業務の中で常に判断を迫られています。
「営業のアポをより多く取るには、どの時間帯に電話をかけるべきか?」
「上司から問い合わせフォームのデザインを変えるように言われたが、どう変えるべきか?」
きっと皆さんも、こうした意思決定を毎日のように迫られて、頭を悩ませているのではないでしょうか。
日本の企業では、意思決定において「経験と勘」を頼りにする習慣が長らく続いてきました。しかし環境変化が激しく、不確実性の高い現代社会において、過去の成功体験だけを根拠とするのはあまりに危険すぎます。
個人の経験や勘ではなく、あくまでエビデンスに基づいて質の高い意思決定をする。それが事業の成功確率を高めたり、イノベーションを創出したりするために不可欠な思考です。
今、私たちはビジネスの場だけでなく、日常生活でも科学的思考法が求められる状況を体験しています。
しかし、どのような原因がそのような数値(結果)をもたらしたのかについて、きちんと検証した上で発言している人がどれだけいるでしょうか。
科学的思考法とは「原因」と「結果」に関する因果関係を明らかにするものであり、世の中の怪しい風説や声が大きい人の意見に左右されることなく、合理的な意思決定をするための手法です。
自分自身が判断を誤らないだけでなく、周囲の人たちに「なぜこれが間違っているのか」を適切に伝えることも可能になります。
因果関係をチェックする3つのポイント
すでに述べた通り、科学的思考法とは因果関係を推論する手法です。よって、この思考法を身につけるには、どのような場合に因果関係が成り立つかを理解しなければいけません。
特に、因果関係のない相関関係を因果関係と勘違いするケースが多いので、両者を区別するスキルを持つことが重要です。
因果関係ではなく相関関係であることをチェックするポイントは、主に3つあります。
(1)見せかけの相関
見せかけの相関を疑うことができないと、単なる偶然にもかかわらず、原因と結果の関係が成り立っていると信じ込みやすくなります。
(2)第3の変数バイアス
一見するとAがBの原因であるように思えるが、実はCという第3の変数がAとBの両方に影響を与えていた。これが「第3の変数バイアス」です。
(3)逆の因果関係
「逆の因果関係」とは、その名の通り、原因と結果を逆に捉えてしまうケースです。Aが原因でBが結果であると思えたものが、実はBが原因でAが結果だった場合、これを「逆の因果関係」と呼びます。
因果関係がありそうに思える事象に遭遇したら、まずはこの3つを疑ってみる必要があります。