ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。
今回、紹介するのは『ゆるい職場 若者の不安の知られざる理由』(古屋星斗、中央公論新社)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
ブラックとホワイトだけでは語れない
いい職場の定義が変わるかもしれません。ここ10年ほどは悪い職場と言えば、ブラックと呼ばれるような過酷な環境の会社だと言われてきました。その逆に優良企業で負荷の少ない業務があてがわれるホワイトな職場が賞賛されてきました。
もっと単純化してしまうと、大企業にはホワイトな職場が多く、中小企業にはブラックな職場が多いので、選べるならば安定した大企業に勤めたいという風潮がありました。
しかし特に若い世代では、本書のタイトルにもなっている『ゆるい職場』という考え方も生まれてきているようです。端的に言えば、労働時間が少なく、上司は表面上優しく、厳しく指導されることがない代わりに、成長実感が得られない職場のことを指します。
Z世代と呼ばれている今ちょうど20代を迎えている世代は、きつい仕事や厳しい指導は嫌がると語られがちです。しかしそれでは解像度が粗かったと気づくでしょう。その重要な示唆のある本書の内容に触れていきたいと思います。
ゆるい職場の出現
従業員数1,000名以上の大企業では、仕事が「きつい」と感じる人よりも「ゆるい」と感じている人の方が多いという調査が紹介されています。それは数字にも如実に表れてきています。
1999年から2004年卒の1年目社員の平均労働時間は、1週間当たりで49.6時間だったのに対して、2019年から2021年卒では44.4時間にまで短縮されています。単純計算で1日当たりの労働時間が1時間以上短縮されていることがわかります。
熱心に残業をする人が減っているのとともに、日本は先進国の中で突出して若年失業率が低いこともわかっています。スペインの29.8%、イタリア24.2%に対して、日本ではわずか3.8%です。若年層はそれほど厳しい仕事を選ばなくても、日本では相対的に十分な雇用が提供されていると言えます。
その一方で、新規大学卒就職者の3年以内離職率は30%程度で推移していて、若年層は仕事に満足しているとも言い切れない統計も紹介されています。
業務時間は減って働きやすくなった中でも、3年以内離職率は改善できていないのです。以降でそれぞれのメッセージのギャップのありかも、明らかになっていきます。