指示どおりにできない部下や、話がうまく伝わらない部下に困っている......。もしかしたら、その原因は、どの部下にも同じ指導をしている上司側にあるかもしれません。
3000人以上のインタビューを通しハイパフォーマーを分析してきた人事・組織コンサルタントの相原孝夫さんが、チームを上手く機能させるコミュニケーション法について解説します。
※本稿は、相原孝夫著『人望が集まるリーダーの話し方』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。
相手に合わせて質と量を調整する
説明能力が高いことの本質は、ひと言で言えば「相手に合わせた話ができる」点にあります。
「相手に合わせて話し方を変える」といっても、さまざまなタイプの人がいるので簡単ではありません。同じことを伝えても、人によって伝わり方が違うので、日々の業務に加えて相手を理解したり、話し方を変えたりしなければならないためです。
管理職研修などで「相手に合わせて話さなければならない」という話をすると「そこまでする必要があるの?」「かえって公平性を欠くことにはならない?」「とてもそこまではできない」といった意見も多く聞かれます。確かに煩わしいことではあるでしょう。
しかし、「明確に指示したほうが安心して作業が進められる人」もいれば、「期待だけを伝えて任せたほうが能力を発揮できる人」も当然います。
特に、ダイバーシティが進んだ組織において、チームを上手く機能させて、チーム成果を最大化するためには、一人ひとりに合ったコミュニケーションをとることは、欠かせないのです。
相手に合わせるということでは、次の3つのポイントがあります。
①さまざまなタイプに合わせて話し方を変える
②相手の思いや感情を理解して話す
③相手との相性を考えて話す
それぞれ次項から考えていきましょう。
人のタイプを見極めるマトリクス
<『人望が集まるリーダーの話し方』P.147>
①「さまざまなタイプに合わせて話し方を変える」から考えていきます。
まずは、相手のタイプを見分ける必要があります。対話を重ねればおおよそわかるものですが、それでもある程度の試行錯誤は必要です。
タイプの見分けをして「彼女はこまめにフォローしないと不安になりがち」だとか、「彼は細かいことを言うとやる気をなくしがち」など、少しずつわかってくるものです。
こういうことは、苦痛だと思ってやってもいっこうに身につかないので、むしろ楽しむ工夫をすることをお勧めします。次で説明するフレームに当てはめて相手の反応を楽しむなどもその1つです。
メンバーの一人ひとりを漫然と見ているよりも、何らかのフレームを想定して見ていたほうが特徴はつかみやすいものです。最もシンプルでよく使われるものとしては、「意欲」と「能力」の軸による分類があります。いわゆる、「Will/Skill マトリクス」です。この2軸で4つのタイプに分類することができます。それぞれのタイプごとに接し方が異なります。
タイプが判別できれば、自ずと接し方の方針が立つわけです。
上の図の右上の象限は「意欲もあって能力もある」タイプであり、こういう人には「任せる(Delegate)」が基本方針となります。細かな指示はせず、責任の重い仕事を任せることで実力を発揮します。
次に、右下の象限は「意欲はあるが能力がない」タイプであり、若手社員に多いタイプです。成長できるよう「指導する(Teach)」ことが重要となります。
反対に、左上の象限は「能力はあるが意欲がない」タイプであり、最も難易度の高いセグメントと言えます。一定の経験のある有能な社員が何らかの理由でやる気を失くしているケースで、宝の持ち腐れの状態です。
「やる気を出させる(Motivate)」が基本方針となりますが、能力があり、本来自信もあるため、モチベートのやり方もまた各人ごとに考えなければなりません。
左下の象限は「意欲も能力もない」タイプであり、自主性を期待することは難しい状態です。事細かく指示し、「命令する(Direct)」ことで徐々に育成を図ると共に、やる気を起こさせる必要があります。
これはかなりシンプルに割り切ったタイプ分けの例ですが、こうした軸を持っていれば、人を見る際にもそのような観点で見ることができ、どれに当たるかがわかれば相応しい接し方もわかります。
ハイパフォーマーの特徴の1つとして「目利き人材」が挙げられます。人を見る目があり、他者の特徴を的確に把握できる人です。なぜできるのかと言えば、人を見るうえでの自分なりの軸を持っているからです。
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モチベーションタイプを見抜く「キャリアアンカー」