公認心理師が語る「ストレスに弱い人・強い人」の違い
2023年12月22日 公開 2024年12月16日 更新
首尾一貫感覚を知ろう
・首尾一貫感覚は3つの感覚からなる
「首尾一貫感覚」とはどのような感覚でしょうか。ここでもう少し詳しくご説明しましょう。
首尾一貫感覚とは、強いストレスがある状況でも困難を乗り越え、心身の健康を保つことのできる力です。そのため、別名「ストレス対処力」ともいわれています。
首尾一貫感覚は、人生でふりかかるストレスやアクシデントから自分を守り、対処できる力であるだけでなく、そうしたストレスやアクシデントさえも、自分の成長や人生の糧に変えることができる力でもあります。
首尾一貫感覚は、英語で「Sense of Coherence /SOC」といいます。
「Coherence」は、日本語に直訳すると「首尾一貫」です。「首尾一貫」というと少し硬い感じがしますが、「Coherence」には、「首尾一貫」のほかに「統一性」「全体感」という訳もあり、「筋道が通っている」「全体として辻褄が合っている」という意味にとらえていただいてOKです。
首尾一貫感覚とはつまり、
「極限のストレスを経験し、過酷な状況に直面したとしても、それを成長の糧にさえするなどして、自分の人生を全体として辻褄が合ったものにできる、つまりいいことや悪いこと、さまざまな出来事があったとしても、全体として腑に落ちると思える人生にすることのできる感覚」
となります。
そして、この首尾一貫感覚は3つの要素(感覚)からなっています。ここでは簡単に次のようにまとめます。
■把握可能感(だいたいわかった)――自分の置かれている状況や今後の展開をある程度、把握できると思うこと
■処理可能感(なんとかなる)――自分にふりかかるストレスや障害にも対処できると思うこと
■有意味感(どんなことにも意味がある)――自分の人生や自分自身に起こることにはすべて意味があると思うこと
一つひとつ説明していきましょう。
把握可能感とは?
まず「把握可能感」です。
把握可能感は、自分の今いる環境がどのような状況にあるのか、今後どのようになるのかについて、ある程度理解できている、納得のいく説明がつけられるという感覚です。
「おおよそ想定の範囲内」「だいたいわかった」と思える感覚です。
例えば、接客業の人が、お客様に突然怒鳴られたとします。「なんで怒鳴られたのかわからない」と戸惑う人は、落ち込んだり、不安になったりします。
一方、「世の中には、自分の想像のつかない変わった人もいる」と状況を把握できる人や、「接客業をしていれば、お客様に怒鳴られることもある。まあたいしたことにならないだろう」とある程度予測できる人は、あまり落ち込まず、悩まないのではないでしょうか。
こうした、「想定内」「予測がつく」「こんなもんだろう」「だいたいわかった」と思える感覚が把握可能感になります。
この把握可能感は、ルールや規律、価値観、責任の所在などが明確な環境で経験を重ねることにより育まれるとされています。
職場で言えば、就業規則や人事評価がきちんと整備されていて、「この仕事をここまでしたら評価される」「評価ポイントは3つあって、8割達成したら昇給する」というような見通しがつきやすい環境のことです。
つまり「把握がしやすい環境」といえます。そのようなある程度把握しやすく、予測が可能な世界で、一貫性のある経験を繰り返すことで育まれるのが、把握可能感です。