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不思議と涙を誘われる「漫画家・矢部太郎さん初の大規模展覧会」

PHPオンライン編集部

2024年05月10日 公開 2024年05月10日 更新

 

一本に並んだ漫画が人生のよう

矢部太郎展

一番大きな部屋は、名作フィクション『大家さんと僕』の展示になっています。空間のポイントを樋笠さんが教えてくれました。

「壁際には入口から出口まで漫画が並び、合間に今回のために矢部さんが描き下ろしたアクリル画が飾られています。

真ん中の円状の机には、漫画の中からクスっと笑えるようなエピソードが厳選して並べられています。天井から吊るされるスクリーンには、『大家さんと僕』の一説を矢部さんが紙芝居で読んだ映像が流れています」(樋笠さん)

今回の展覧会のタイトルは「ふたり」は、企画段階で決まっていたそう。『大家さんと僕』の物語では、2人の会話、関係の深まり、すれ違い...そういったものがリアルにかつやさしく描かれていて、それを展示で表現できないかと草刈さんが持ちかけたのだとか。

矢部太郎展

「空間がポップで可愛らしいんですけど、なんだか神聖な感じにもなっていてすごく嬉しいです。僕にとって『大家さんと僕』はそういう作品だから」(矢部さん)

『大家さんと僕』は、アパートの1階に大家のおばあさん、2階には芸人の矢部さんの少し変わった二人暮らしが描かれています。ほっこりとした日常が流れ、時にほろっと泣ける作品として長く愛されています。実在の人物をモデルに描いているからこそ矢部さんには特別な想いがあり、展示の空間の仕上がりを見た感動を語ってくれました。

「一本の道のように物語を読んでいくのは、人生のようにも見える。それに展示に来てくれた方も前に誰かがいたらそれ以上読み進められないから待ったり、一つの物語を何人かで共有するような、家で漫画を読んでいたらなかなかできない体験になるかもしれません。

描き下ろしのアクリル画は、もう一度物語をたどるように描いていったので見てほしいですね」(矢部さん)

 

矢部さんだから描ける、やさしいアクリル画

矢部太郎展

後半にかけて通路には、矢部さんがこの展示のために描き下ろした"約100点"のアクリル原画が並びます。約100点というのは、最初に草刈さんとの間でそう決めたものの、まだ達していないため数えないことにしているとか...。

アクリル絵の具で描く機会は、これまであまりなく「初めてに近い」と話す矢部さん。やさしさが具現化したような、ため息が出るほど素敵な絵の数々を見ることをできます。

通路を突き当たると図録のために描き下ろした『昼寝姫』がちら読みできます。担当編集の方に自由に描かせてもらえたという矢部さんは「最高傑作です」と嬉しそうにこぼしました。来場者へのお土産にはなんと、昼寝姫のシールがあるというので、図録とともに楽しめそうです。

 

矢部さんが提案した唯一の展示も

最後の部屋には、現在連載中の作品、3月に新刊として出たばかりの『プレゼントでできている』など3作品が部分的に紹介されています。中でも『プレゼントでできている』の内容に出てくる、ヨガの先生からもらった"人物像"や、タクシー運転手さんにもらった"期限が1年前の50円割引券"の展示が矢部さんのおすすめだそう。

通路にぽつんと立った古い電話は、『大家さんと僕』に出てくるシーンをイメージして矢部さんが提案したもの。電話を取ると矢部さんが語りかけてくれるのを聴くことができ、5パターン用意されているといいます。(ちなみに編集部・片平が取ったときは、矢部さんの優しい「もしもし~」でした。他のパターンも聴いてみたい!)

締めくくりに、これまでの作品が一挙に並んだ光景について問われると、

「けっこう描いてたんだなあと思いました。漫画って1コマ1コマ描いては次を描くから、あまり振り返らないので、改めて作品を並べてみて"大作家なんだなあ"と思いました笑」(矢部さん)

と語り、場を和ませました。

 

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