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生き方

気がつけば「自分の悪いところ探し」をしてしまう人の原因

有川真由美(作家)

2024年09月30日 公開 2024年12月16日 更新

気がつけば「自分の悪いところ探し」をしてしまう人の原因

「私はダメだ」と自分を責めていませんか? 完璧を求めるあまり、小さな失敗に心が揺れてしまう人も多いはず。でも、自信は貯金のようなものです。一時的に減っても、ゼロになることはありません。自尊心を取り戻し、自分らしく生きるためのヒントを、書籍『やりたいことができる私になる自信貯金』よりお届けします。

※本稿は、有川真由美著『やりたいことができる私になる自信貯金』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

 

行動すれば自信はあとからついてくる

高校で「自信」をテーマに講演したとき、男子生徒がこんな質問をしてくれました。

「毎週末、早く宿題を済ませて遊ぼうと思うのに、いつもだらだらして宿題にとりかかれず、結局、月曜日の朝、ギリギリになってから必死でやることになってしまいます。いつもやるべきことを先延ばしにしてばかりで、自信がなくなっています」

そのあと、私と生徒の間で、こんな会話が続きました。

「でも、いつも月曜日の朝にやって、宿題が終わるんですよね?」
「はい。なんとか......」

「じゃあ、『朝の数時間、必死でやれば終わる』という自信がどんどん積み重なっているわけね。土日にやらないのは、『なんとかなる』って自信があるから。だったら、月曜日の朝やると決めて、それまでは思いっきり遊んだらどうでしょう?」

「そっちか!『早めにやる』っていう自信はどんどんなくなって、『ギリギリにやる』っていう自信はどんどんパワーアップしているんですね。でも、やっぱり、宿題が終わっていないのはストレスで、ギリギリはスリルがありすぎて嫌なんです!」

「なるほど。それなら、方法がないわけではありません......」

「自分の小さな期待に応えること」で、自信は生まれます。「自分の期待に応えられないこと」は、自信を奪います。大人でもあるはずです。「キッチンの棚の整理をしよう!」と思って、早数カ月。「英会話を学ぼう!」と思って、早数年。動かないと、「面倒くさいなぁ」「時間もかかりそうだしなぁ」と心がずっしりと重くなり、「忙しいから、いまじゃないよね」などと脳内で言い訳トークをして、また放置してしまいます。

しかし、「やるべきことを放置する」という宙ぶらりんな状態は、ストレスとして心にのしかかり、心のエネルギーも自信も奪ってしまうのです。「やらなきゃいけないけど、やりたくない」とグズグズしている自分に対して、スパルタ式に「いますぐやれ!」「根性なし!」などと叱ってはいけません。一時的に実行したとしても、本当に嫌になってしまいますから。そんなグズグズさんにかけるべきは、やさしいこのひと言です。

「ねぇ。10分だけ、やってみない?」

やる気になれないのは、「面倒くさそう」「時間がかかりそう」「たいへんそう」と、"大げさ"に考えているから。しかし、どんな大きな課題も、一つひとつは"簡単にできる小さなこと"でできています。

全部終えるのは難しくても、「10分やること」は、だれでも簡単にできるはず。宿題でも、キッチンの棚の整理でも「じゃあ、10分だけでも、やってみるか」とやり始めると、弾みがついて10分、20分......と熱中しているもの。熱中できなかったら、そこでストップして、また別の機会にやってもいいのです。

英会話を学びたいときも、「英会話アプリをダウンロードする」「英単語をノートに5つ書く」など、"簡単にできる小さなこと"に分解して実行しましょう。

とにかく、一歩進むことで、「自信貯金」はチャリンと貯まります。やる気も自信も、わいてくるのを待っていても無駄。自信がなくてもとりあえず動いているうちに、「やれる、やれる」と気持ちも乗って、あとからついてくるのです。

そして、もうひとつ、「宿題をしなければ」という義務感だったり、「仕事をやらされている」という押しつけだったりすると、消極的になるのも当然。一日のすべての行動を「やるべきこと」ではなく、「やりたいこと」にして、主体的に取り組みましょう。

宿題や仕事、棚の整理もやりたくなければ、やらなくてもいいのです。夢を叶えるため、お金を得るため、自分の成長や美意識のためなどに「今日はこのタスクをどうしても終わらせたい」「終わらせるのだ」など自分で決め、積極的な言葉を使いましょう。忘れないでください。言葉が行動を生み、行動が自信を生むのです。

 

「私はダメだ」なんて、ひとくくりに考えない

自信がない人は、ちょっと失敗したり、少しでも自分の欠点が見えたりすると、「やっぱり、私はダメな人間だ」とひとくくりにした思考になりがちです。ある女性管理職がこんなことを言っていました。

「有名大学出身の新入社員にかぎって、ちょっと叱ったら、ひどく反発したり、逆に落ち込んだりして、会社に来なくなることが多い。プライドが高いから、自分が否定されたみたいで嫌なんでしょうね。全部を否定しているわけじゃないのに......」

"プライド"とは、他者との比較や、まわりからの評価によって、自分は価値があると認識する気持ち。"自尊心"が、自分で自分の存在価値を決めるのに対して、プライドは他人が自分の価値を決めるので、その価値はつねに揺らいで不安に苛まれるのです。

これまで挫折や失敗の経験がない人、人からほめられる経験を多くしている人は、プライドが高く、完ぺき主義に陥りがち。無意識に「認められなければいけない」と思っているので、失敗したり、叱られたりすると、「だって、○○だから」などと必死で言い訳したり、「自分は悪くない」と正当化したがります。

しかし、それは、本当は自信がなくて、「ダメなヤツだと思われるかも」「自分は、本当は大したことがないのかも」という不安の裏返しだったりするのです。

少しぐらい失敗して自信をなくしても、「そりゃあ、うまくいかないこともあるのは当然」「全部うまくいくなんて、思い上がりもいいところ」と現実に寄り添って、早めに立ち直れる人が、本当の意味で自信のある人です。

そんな人は、ダメな部分をひとくくりにして悲観的に考えるのではなく、いい部分もあるし、「全体的にはOK」と楽観的に考えています。つまり、一時的に自信をなくしても、「自信貯金」はゼロにはなっていないのです。

いいことがあって大いに喜ぶのはよしとしても、「自分はすごい」と思いすぎない。かといって、よくないことがあっても「自分はダメだ」と、ひとくくりに悲観しすぎない。

まわりの評価や、状況によって一喜一憂していると、自己評価も上がったり下がったりして、どんどん自信が薄らいでいくのです。どんな状態になったとしても、平常心に戻って、目の前のことに専念したり、喜びや感謝を感じたりすることが、いちばんの自信になっていくはずです。

そもそも人間は古来、生き抜いていくために、ネガティブな情報に意識を向ける性質がありました。危険なことに気づき、つねに注意していないと、自分や家族の命を守れなかったからです。

反対に、ポジティブな情報は、記憶に留める必要がないため、なかなか意識を向けません。気がつけば、いつも「悪いこと」探しをして、そこにばかり目が向いている状態になりがちです。他人に対しても、ひとつ嫌なところが見えると、その人の全部が嫌になってしまうことがあります。長所がたくさんあるのに、そこは見えなくなってしまうのです。

自分自身に対しても、「短所はたくさん挙げられるのに、長所がわからない」という人は多いもの。「私は太っているから」「三流大卒だから」「話すのが苦手だから」と、コンプレックス(劣等感)ばかりが気になって、消極的になってしまう人もいるでしょう。

本当は山ほど長所があり、自分が短所と考えていることも、魅力になっているというのに。もし、あなたが「私は自尊心が低い」と感じているなら、まわりにばかり目を向けて、自分のことをよく知らないのかもしれません。

「ないもの」を嘆いてばかりいないで、「もっているもの」に感謝してみてください。どんなに人を羨んでも、「じゃあ、その人と代わりたい?」と聞かれたら、ほとんどの人は、「いや、代わらなくていい」と答えるでしょう。それは、あなたのなかにも、かけがえのないもの、大切なものがあるからです。

好きなことに専念できること、家族や友人と笑い合うこと、これまで育ててくれた人や環境を大切に思えること......それらは、すべてあなたにしかできないことです。「自分という人間は、ほかのだれにも代えられない」「自分にしかできないことがある」という気持ちをもっていたら、自尊心が簡単に傷つくことはないのです。

 

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