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20代後半から活躍する社員ほど、入社3年目まで「とにかく叱られている」

原邦雄(株式会社スパイラルアップ代表取締役)

2024年10月16日 公開 2024年12月16日 更新

20代後半から活躍する社員ほど、入社3年目まで「とにかく叱られている」

誰しも叱られるよりほめられたいと思うものですが、若いうちは「ほめられる自分」になるために失敗して叱られることも重要になります。失敗を引きずるのではなく、自分の成長の糧にするにはどうすればよいのでしょうか? 人材育成メソッド「ほめ育」の開発者で、人材研修の専門家、株式会社スパイラルアップ代表取締役の原邦雄氏が解説します。

※本稿は、原邦雄著「社会人3年目までの、ほめられる技術」(ぱる出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

フレッシュマンと言われているうちにたくさんの失敗をしよう

入社したての1年目の新人はもちろん、ようやく仕事や職場に慣れてきたはずの2~3年目の社員も、会社での経験値の低い若手は、何かにつけて不安だと思います。

当然、失敗もたくさんするでしょう。そして、失敗して叱られる。叱られると自信を失って不安になる。そうするとまた失敗する...。そんな負のスパイラルに陥って、会社に別れを告げてしまう3年目までの社員が多いと感じます。

20代後半から花開くための「ほめられ貯金」は、あなたが「いかにほめられたか」で貯まるものではありません。むしろ、その逆。入社して3年の間、周囲に「いかに注意・叱られたか」で、あなたの「ほめられ貯金」は増えていく。

つまりは、失敗していいのです。失敗して叱られる? 上等じゃないですか。まったく問題ありません。失敗できるのは新人の特権です。むしろ失敗することが仕事だと考えてください。だって失敗するのは、挑戦している証拠。挑戦しなければ失敗もしないわけですから。

注意されて自信を失うのではなく、逆に「次の機会に向かうための答えを手にした」と考えてほしいのです。挑戦して失敗したからこそ、成長するための新たな手掛かりを見つけられたと考えてください。

ただし「自分がやってみたかったから」「何でもいいから、とにかくやってみよう」という、場当たり的な行動で失敗するのはダメな例。失敗するなら、「意識の高い失敗」であることが必要です。

「意識の高い失敗」とは、会社の方針を理解し、上司の意向をくみ取って行動した、だけど失敗してしまった… そういう失敗です。もし失敗して怒られても、「次は頑張れ!」という期待を込められているはず。それはまさに叱咤激励、成長の糧となる「ほめられ貯金」でもあるのです。

 

先輩・上司が「叱りたい新人」こそ期待されている

私は「ほめ育」の専門家として、多くの企業で社員教育のお手伝いをしてきました。その中で、「ほめる」と「叱る」を同じぐらい大事にしています。相反する行為に見えるかもしれませんが、「社員を育てる」という意味においては、目指すところは同じだからです。

社員を伸ばすためには、良いところを見つけ、ほめることが欠かせません。でも、ほめるだけでもダメなのです。改善すべきところはちゃんと叱る、叱る、叱る...。そういう環境でないと、社員は決して成長できないと考えています。

叱るという行為には、新人や若手への大きな期待が込められています。根底には「愛」という感情があり、「成長してほしい」という想いが宿っている。だからこそ叱りますし、皆さんが素直に受け止め、自分が成長するための材料にすれば、その蓄積がゆくゆくはほめられる行為へとつながっていきます。

もし叱られて滅入ってしまったら、自分一人で負の感情を抱え込んでしまうのは避けましょう。あなたの周りを見てください。きっと「あの仕事どうなった?」と気にかけてくれる先輩がいるはず。「なんか最近元気ない気がするけど、何かあった?」といつも話を聞いてくれる同僚もいることでしょう。

苦しいなら頼ればいいのです。自分一人で受け止められないなら、周りに助けを求めることも大切です。

飲食店で皿洗いをしていた若い頃、店長に散々叱られてへこんでいたときに、「店が終わったら、ラーメンでも食べに行くか?」と声をかけ、連れて行ってくれる先輩がいました。

もう夜中の2時や3時。それなのに私の気が済むまで話を聞いてくれて、最後に「まあ、明日も頑張ろうや!」と言ってくれる。その温かさに、どれだけ救われたでしょうか。そして不思議と「また明日から頑張るか!」と思えたのです。

あなたの周りにも必ずいるはずです。自分の気持ちを受け止め、背中を押してくれる人を見つけるのもまた、成長につながる3年間を過ごすために必要なことと言えるでしょう。

 

「この人に指導されたい」という自分のメンターを見つけよう

「メンター」とは、「良き指導者」「相談者」「恩師」などという意味を持つ言葉です。

先ほどの先輩は、私にとって大切なメンターでした。そしてその後も、私は多くのメンターと出会い、多くの力をもらってきました。皆さんもぜひ「この人のように生きたい」「この人に指導されたい」というメンターを、ぜひ見つけてください。

メンターは必ずしも「営業成績トップのエース社員」のように、ずば抜けた能力を持つ人である必要はありません。もっと身近な部分で「すごいな」「こんな風になりたいな」と思える人でいいのです。

たとえば、「雰囲気が知的」「おしゃれ」「人の話を聞くのがうまい」「育メン」のように、どこか「いいな」と感じるポイントのある人をメンターとして選べばOK。メンターが一人いるだけで、あなたは会社に居場所をつくることができます。

「あの人が見てくれるから頑張れる。ほめてくれるから頑張れる」

そんな心の支えがあるだけで、伸び伸びと仕事ができます。その結果、自然と力がついてくるのです。

直属の上司から学ぶ点を見つけることができれば、どんな上司にあたっても有意義な時間になります。ですが、直属の上司をメンターと思えないどころか、その上司が苦手で嫌で仕方がない、という人もいると思います。そんなときでも、さじを投げないでほしいのです。

どんな人にも必ず良いところはあります。客観的に見ればきっと、上司の良いところが分かってくるはずです。たとえば「言うことが細かすぎる」という上司は、皆さんにとっては面倒な存在かもしれません。朝からミスを指摘されると、モチベーションも下がるかもしれません。

でも客観的に見れば「細かいところに気づくだけの分析力がある」ということでもあります。「言うことが細かすぎるから面倒」ではなく、「細かいところに気づけるのは、なぜだろう?」という目で上司を見てください。きっと学ぶべきところがあるはずです。気が合わないからといってすぐ「ダメ上司と認定」すれば、損をするのは皆さんです。心をニュートラルにして、良いところや学べるところを探してください。

ちなみにメンターは、一人である必要はありません。そして社外の人でも良いのです。取引先やお客さん、セミナーで出会う講師など、周りにはいろいろな人がいるはず。人ではなく、本に書かれた内容でも構いません。自分にとって刺激になるような"重要他者"を見つけることが大切です。

 

「ほめられ上手」は将来、「愛され上司」になる

「ほめられる技術」を会得した人は、将来の長きにわたって「幸せになる力」を手にすることができます。20代後半から30代、さらには40代と圧倒的な成長を手にするとともに、「愛される上司になる」という幸せを得られます。

どうすればほめられるか、ほめられれば一体どれほどうれしいか? そうしたことを自分が体験しているので、逆にほめることが上手になるわけです。必然的に"愛され上司"になるということですね。

ほめられ、叱られる。叱られる中で成長し、ほめられる。その大切さを理解したあなたなら今度は部下にそのことを引き継いでいけるはず。本音の言葉で叱られ、それを「ほめられる」ことへの大切な土台として吸収できたあなたは、必ず部下に信頼されます。本当の意味での「愛され上司」になるはずなのです。

経験は記憶によって自分に宿るわけですが、インパクトのある経験でなければ記憶に刻まれることはなく、ノウハウとして自分に備わることもありません。だからこそ、入社後の3年間という最も多感な時期に、インパクトの強い体験をして、自分の記憶の中に明確に残していくことが大事なのです。

それは何かというと、思いっきり叱られ、思いっきりほめられること。そして、思いっきり挑戦して、思いっきり失敗することです。それが許される特別な期間が、入社後の3年間であることをぜひ胸に刻んでください。

そのすべてのプロセスを吸収する素直さと誠実さがあれば、3年間の経験はきっと将来のあなたを支えてくれる、この上ない財産になるに違いないでしょう。

 

著者紹介

原邦雄(はら・くにお)

株式会社スパイラルアップ代表取締役/ほめ育財団代表理事

兵庫県芦屋市出身。大学卒業後、メーカーを経て、船井総合研究所に転職。様々な業種の人材育成に関わる。その中で、従業員のエンゲージメントの重要性を実感し、独自の教育メソッド「ほめ育マネジメント」を開発。これまでに600社以上の企業や教育機関に研修を行なっている。また、アメリカ、インド、中国、オーストラリアなど世界20か国に進出。著書に「今すぐできる! 今すぐ変わる!『ほめ育』マネジメント」(PHP研究所)など。

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