東大理三に合格した受験生が語った「最大の勝因」
2011年11月22日 公開 2024年12月16日 更新
経済的な事情で国公立大を目指さざるを得ず、東京大学理科二類に合格した宮口公寿氏。そんな彼は、「人生で遭遇する問題は、ほとんどの場合解決できる」と語る。宮口氏が考える、問題を上手に解決する考え方とは。
※本稿は、宮口公寿 著『東大に合格する記憶術』より、内容を一部抜粋・編集したものです。
問題があるからこそ解決できる
私は「問題がなければ、何も解決しない」という信念をもっています。先ほどのジム通いも、自分の体が老化したことを痛感したので定期的に通うようになったのであり、その結果、若いころよりもむしろ健康になりました。
ところが自分の問題をなかなか解決できない人はたくさんいます。なぜでしょうか?
「人間は見たいものしか見ることができない」と言われています。ほとんどの人は、問題があるとそれから逃げてしまいます。お金を借りまくっている人は借入先のリストを作成しょうとしません。お金を返すのが困難なので、その困難を回避したいという深層心理が働き、問題を正面から見ようとしないのです。
アメリカで有名な心理学者のドクター・フィル(Dr.Phil)は、人間は困難に遭うと、
否定 Deny
無視 Neglect
省略 Omit
をすると、著書のなかで言っています。
人間は、問題から目をそらす天才なのです。あえて問題に立ち向かおうとはしないのです。
私がもっとも言いたいのは、
「問題を解決する前に、問題を把握することに集中してください」ということです。
けっして最初からその問題を解決しようとはしないことです。問題を分析することに専念し、問題の所在を明らかにすれば、ほとんど解決したも同然です。
問題の特定がもっとも大事なのであって、最初から問題を解決しようとすれば、そのプレッシャーで問題把握の目が曇ってしまいます。
ダイエットの例で説明しましょう。結果を得ようとしないで(すぐにやせようと思わないで)、まずはやせる生活習慣を身につけてください。その生活習慣を維持すれば、確実にやせることができます。
私のもっとも好きな言葉に、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997年)という映画に出てくる次のような台詞(せりふ)があります。
「この世の中には解決できる問題と解決できない問題がある。解決できる問題は解決できるから悩まない。解決できない問題は解決できないから悩まない」
以上の言葉に、私は以下の言葉を付け加えたいと思います。
「人生で遭遇する問題は、ほとんどの場合解決できる」
「解決できる問題を解決するだけで、あなたの人生は180度転換し、信じられないくらい幸せになる」
私は自分の人生で、この言葉どおりの体験をしました。私の家は、江戸時代後期から200年以上続く刀鍛冶(かたなかじ:日本刀をつくる鍛冶屋)でした。しかしオイルショック後家業が傾き、私は高校生のときに自分の力で食べていこうと決心しました。
大学受験のことをまったく知らなかった私は当初、早稲田・慶応でも合格できればいいと、無謀にも一流私立大学をめざしました。しかし偏差値が41だった私は、早稲田・慶応には絶対に合格しないとわかって絶望しました。
それでも私は、志望校のランクを下げることはしませんでした。目標を低くするのではなく、逆にもっと難関の大学をめざせば早稲田・慶応に引っかかるかもしれないと思い、最難関の東大を目標にしたのです(結局、経済的な事情で国公立の東大をめざさざるをえなかったわけですが)。
東大合格のノウハウが必ずあるはずだと思い、その過程のなかから記憶術を習得し、そして自分なりの「試験に合格する記憶術」を会得するに至ったのです。
人間とは不思議なもので、強く希望していると解決の糸口が見つかるものです。問題を解決できないのは、前述のようにその問題を把握していないからではないでしょうか?
「困難とは作業衣を着たチャンスである」という言葉があります。私にとっての困難をまとめると、
・家の経済状態が厳しく、国立大学にしか行けなかったこと
・偏差値が41だったこと
でした。だからこそ、必死になって東京大学をめざし、合格することができたのです。生来怠け者の私は、もし家業が傾いていなかったら、東大をめざすこともせず、もちろん早稲田・慶応にも合格していなかったでしょう。
マイナスをプラスに変える力
繰り返しになりますが、「成績が悪いから成績をよくすることができる」のです。その実例がまさに私でした。人間には、誰もが与えられた類いまれな才能があります。マイナスをプラスに変える力です。この力には天井がありません。
* * *
電気メーカーであるPanasonic(旧社名‥松下電器産業)を創業した松下幸之助さんの名言で、私がもっとも好きな言葉があります。
「あなたが経営者として成功できた理由は何ですか?」と質問されたとき、成功した要因は学歴がなかったこと、体が弱かったこと、家が貧乏だったことだと言っています。
「学歴がなかったから何も知らなかった。おかげで、何事でも、誰にでも聞く耳をもてた。そして何を聞いても感心した」
「体が弱かったので、仕事を人に任すことができた」
「家が貧乏だったから、少しのお金にも感謝できた」
普通なら、貧乏で学歴がなく体が弱かったら、人生に成功する可能性はゼロに近いと思います。そして、そのことが心の重荷になって、人生の積極的な歩みをやめてしまいます。
どんな人でも人生のなかでつらいことに遭います。あなたの人生で遭遇した出来事がどんなに大変なことであっても、それを大変であると思うのはあなた自身なのです。それを大変だと思うか、それとも、それほど大変ではないと思うかは、あなたの考え方次第なのです。
積極的な考えをもって歩み続ければ、必ず事態は好転します。公開模試がE判定でも東大理科三類に合格した東大生も、同じことを言っていました。
「合格した最大の要因は徹底的なポジティブ思考だ」
積極的な考えをもち、歩みをやめないことが、想像以上の大きな差を生むのです。
【PROFILE】宮口公寿 (株式会社フューチャーワークス代表取締役)
1959年、東京の刀匠・宮口一貫齋恒寿の長男として生まれる。1979年東京大学理科二類に入学。1983年東京大学薬学部卒業、1985年東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了。第一三共株式会社分析代謝研究所の研究員を経て、1989年に株式会社フューチャーワークスを設立。2008年より宮口式記憶術の普及をはじめる。
著書に『偏差値41から東大へ! 宮口式「超」記憶術』(講談社)『読んだら、きちんと自分の知識にする方法』(アスカ・エフ・プロダクツ)がある。