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文房具ソムリエが教える「自分に合った手帳」の選び方

石津ヒロシ(文房具ソムリエ)

2024年12月12日 公開

文房具ソムリエが教える「自分に合った手帳」の選び方

手帳を買ってみたものの、1年間使い続けられなかった...という方は多いのではないでしょうか。文房具ソムリエの石津ヒロシさんは「3か月単位で手帳を続ける」ことを推奨しています。手帳を無理なく続けるコツについて、書籍『文房具ソムリエの手帳時間』より紹介します。

※本稿は、石津ヒロシ著『文房具ソムリエの手帳時間』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

 

同じ手帳を「続けられる人」は多くない

これまで数えきれないほどたくさんのお客様に手帳を販売してきましたが、多くのお客様が同じ手帳を1年間続けられていないということに気づかされます。そもそも、自分に合った手帳を選ぶということが難しいのです。

手帳作家さんたちの中にも、「なかなか手帳が続かなかった」という方がたくさんおられます。そして、そんな作家さんたちがつくった手帳の多くが、3か月のサイクルになっていることも注目に値するでしょう。

手帳売場に行くとき、品揃えが多い大型店舗で手帳を選ぶ人は多いでしょう。じつはこの時点で、自分に合った手帳を探すのは難しくなります。

心理学には「検討できる選択肢が増えると、逆に選択が難しくなるという」法則があり、これはコロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授による「ジャムの実験」などで広く知られています。結局、好みのデザインや使い勝手のいいサイズで選んでしまったりします。

しかし、デザイン性を追求するあまり、いざ書いてみたら自分にとっては使いにくい手帳を選んでしまった方も少なくないでしょう。

また、小さいサイズでコンパクトな手帳を求めるあまり、実際に書き出してみると細かい字を書かなくてはならなくなった、という方もいるでしょう。こうなると、本来の手帳を使うシーンが限定されてしまい、続かないという結果になりかねないのです。

デジタルツール・アプリに移行する人が増えているのは、ITの発展だけではなく、このようなケースが多いという背景があるのも事実です。しかし、手書きアウトプットの重要性は、十分わかっていただけているでしょうし、じつにもったいないことです。

1年間、手帳が続かないなら、そもそもの概念を変えるべきです。1年という期間を手帳に求めなくなれば、使いたいタイミングで使っていけます。最初に購入した手帳が「どうも自分に合わないな」と感じたのなら、途中からでも新しい手帳に切り替えましょう。まずは手帳を使うモチベーションを下げないことが大事です。

ここでも「3か月1クール」と考えれば話は簡単です。思い切って手帳を買い替えたり、日付なしの手帳を買い足したりしながら、どんどん手書きアウトプットを続けていきましょう。とにかく、手書きの手帳がないという状態をなくしていくことが大切です。

1年という期間は確かに区切りがいいですが、あまり縛られるのはよくありません。1年間手帳を使い続けることができない、ということで罪悪感を覚えている方もいるかもしれませんが、ご自分を責める必要はありません。
今度からは3か月単位で考えましょう。

3か月ずつ、いろいろ試しながら使っていくこともできます。1年単位ではとてもできなかったことでしょうが、こんなところにも「3か月1クール」のメリットがあるのです。

いつからはじめてもいいので、何かを思い立ったとき、その日をスタートとして新しい計画を立てていきましょう。その日から、新しい自分の目標、夢を叶えるために、まっさらな手帳からはじめてみてください!

 

1年単位の手帳はどう使えばいいのか?

手帳を30年以上売ってきましたが、ここでは実際に文房具売場での手帳は年間でどんな売り方をしているかをお話ししましょう。

まず、9月に次の年の手帳を売場で一気に並べるわけですが、じつはその前、4月に次の年の手帳のラインナップを各手帳メーカーが一気に発表します。ですからバイヤーは、次の年の手帳はどんなものが流行るのか、4月には予想してお店に並べる手帳を決めなければなりません。

9月から12月の4か月で日付入りの手帳を販売し、その実績をもとに翌年の4月に展示会で見定めなければなりません。日付入りの手帳ですから、12月までに売り切れるように手帳を仕入れるわけです。

ということは、みなさんは9月から11月はじめくらいまでに手帳を選んでいただかないと、お目当ての手帳に出会えないかもしれません。12月の終わりに、「そろそろ手帳を買おうか」と思う人、心当たりがありませんか?

私は「3か月1クール」での手帳をおすすめしていますが、何も王道の1年単位の手帳を否定しているわけではありません。また、使う目的によっては、1年単位のほうが見返したりするのに便利な場合もあるでしょう。

ですから「毎年この手帳が必ず必要だ」という方は、9月から10月には手に入れておいて、手帳の移行期をつくってください。

今年の手帳から来年の手帳に移行する時間をしっかり使って、その年にあったことを振り返り、次の年に思いを乗せていくわけです。つまり、厳密には1年間使うというより、9~10か月使って、うまく移行するということです。そういう意味では、メインで使う手帳を決めておいて、プロジェクトごとに手帳を使い分けて複数手帳を使っている人の移行はスムーズでしょう。スケジュールだけ移行する感覚になる方が多いからです。

さて、文房具売場の話に戻します。

12月までに売れなかった手帳は、1月以降も販売を続けることが多いです。返品をして、店頭から一気になくなることもあります。選択肢として、年が明けると一気に少なくなるということは想像に難くないでしょう。

ですから、どんなにのんびり考えている人でも、年をまたいでから買うということは避けてください。「残り物には福がある」と言いますが、実際にはそうなることのほうが珍しいと思います。

今は、SNSで手帳を実際に使っている人の投稿や、ネットで手帳ブランドの講座などで情報を仕入れられます。それらが自分に合った手帳かを考えながら、9月には次の手帳を買おうと決めておきましょう。

10月末までは大人気の手帳でもほぼ入手できます。この流れを見ていると、1年単位の手帳は買いたいときではなく、買うべき日を決めておくことが大事だということがよくわかります。

ただし繰り返しますが、実際にその手帳を1年間使うことはないでしょう。手帳を1年使うという感覚というよりも、自分の相棒を探す感覚でとらえてください。来年の自分の相棒を迎えるのは大事なので、アンテナを張っておきましょう。

 

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