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「信頼されるヘッドハンター」に必要な7つの資質

水野臣介(株式会社オーピーエヌ代表取締役社長)

2025年01月24日 公開

「信頼されるヘッドハンター」に必要な7つの資質

人材ビジネスの中でも最高難度のヘッドハンティング。ヘッドハンターが求人企業と候補者の双方から信頼されるパートナーになるためには、どのような資質が必要なのでしょうか?

人材派遣会社の営業マンを経て業界専門誌『月刊人材ビジネス』を発行する株式会社オーピーエヌの代表取締役社長へ。20年以上にわたり人材ビジネス業界の変遷をウォッチし続ける水野臣介氏が解説します。

※本稿は、水野臣介著 『人材ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より一部抜粋・編集したものです。

 

求められるヘッドハンターの資質

ヘッドハンティングは人材ビジネスの中でも最高難度です。ヘッドハンターは、求人企業と候補者をマッチングするプロセスの中で、多岐にわたるビジネススキルを必要とします。

ヘッドハンターとは、いわば「求人企業と候補者の架け橋となる成功の鍵」。次に挙げるようなさまざまな資質が求められます。

【1. 優れたコミュニケーション能力】

ヘッドハンターは求人企業と候補者との間で、コミュニケーションを円滑に進める必要があります。そのため、まずはクライアントのビジネスニーズや企業文化を理解し、それを候補者に的確に伝える能力が求められます。

さらに、候補者の強みやキャリア志向を深く理解し、クライアントに適切な説明を行うことも重要です。このため、タフな交渉力や説得力、そしてハイレベルの傾聴スキルが欠かせません。

【2. 業界知識】

各業界や職種に関する深い知識を持つことは、ヘッドハンターにとって必須です。

業界動向や企業戦略、人材市場の変化に敏感でなければ、クライアント企業に適切なアドバイスをしたり、適切な候補者を見つけ出したりすることはできません。

特にエグゼクティブレベルのポジションを扱う場合、その業界特有の事情やトレンドを熟知していることが、候補者からの信頼につながります。そのためヘッドハンターは毎日、穴のあくほど日本経済新聞を読んでいます。今はスマホなので穴は開きませんが。

【3. ネットワーキングスキル】

ヘッドハンターは常に幅広い人脈を築き、維持する必要があります。

単に応募者を探すだけではなく、パッシブ候補者(転職の希望を明らかにしていない潜在的な候補者)にもアクセスするためのネットワークが重要です。これには、定期的な交流や信頼関係の構築が不可欠です。

SNSや業界イベントなどを活用して、新しいネットワークを広げる能力も求められます。そのため、ヘッドハンターは毎週、イベントに出席したり、講演会の登壇者にアプローチしたりして、足しげく属人的な人脈を構築していきます。最近ではリファラルを経由して人材を探すケースも多いようです。また、ビジネス特化型SNSとして知られるLinkedInは、ヘッドハンターによく利用されています。

【4. 洞察力と分析能力】

クライアント企業に適切な候補者を見つけ出すためには、候補者のスキルや経歴だけでなく、候補者がクライアントの企業文化にマッチするかどうかまでを判断する洞察力が必要です。

履歴書やインタビューで得られる表面的な情報に加え、候補者の性格や価値観、将来的にビジネスパーソンとして成長するかなどを総合的に見極める力が求められます。また、複数の候補者がいる場合、その中から最適な候補者を選び出すためには、比較分析のスキルも重要となってきます。

【5. 倫理観とプロフェッショナリズム】

ヘッドハンターは、候補者やクライアントの機密情報を取り扱うことが多く、そのためには高い倫理観とプロフェッショナリズムが求められます。

報酬(紹介料)も高額であるため、不正確な情報を双方に提供して、条件のズレが残ったまま成約させることは絶対にしてはいけません。候補者とクライアントの両者に対して常に透明性を保ち、公平かつ誠実に対応することが信頼構築の基盤となります。

【6. 忍耐力と柔軟性】

ヘッドハンティングは、短期間で成果が出るものではなく、長期間にわたってクライアントや候補者とのやり取りを続ける場合がほとんどです。そのため、膠着した状況では忍耐強く、急な変化には柔軟に対応できる資質が重要です。クライアントの要望や候補者の意向が突然変わることもあるため、それらの状況に応じ、最善の結果を目指す姿勢が求められます。

【7. 結果重視の姿勢】

ヘッドハンティングの成功は、いかに適切な人材を見つけ出し、企業に貢献できる人材を採用させるかにかかっています。そのため、プロセスにこだわるだけでなく、結果を重視し、成約を増やし、実績を追求する姿勢が重要です。クライアントの満足度を高め、長期的なパートナーシップを築くためには、成果を出し続けることが求められます。

 

ヘッドハンターが喉から手が出るほど欲しい人材

このように、ヘッドハンターはコミュニケーション能力、業界知識、ネットワーキングスキル、洞察力、倫理観、柔軟性、そして結果を重視する姿勢といった資質をバランスよく持ち合わせている必要があります。

これらのスキルを磨くことで、クライアントと候補者の双方にとって信頼できるパートナーとなるのです。

クライアント企業からのオファーが最も多いのは、40代のミドルクラスです。気力・体力が十分でキャリアが積み上がっている上、さまざまな経験を通して広い視野と深い洞察力があるためです。ライフステージの中でもプライムタイムではないでしょうか。

プロフェッショナル人材は、キャリアやスキルの向上に目を向けるだけでなく、人として成長するためのトレーニングも怠りません。自分の目標と組織の目標のバランスを取れる人材です。必要に応じて立ち止まり、しっかり休憩することもできます。

ビジネスの目標に対して「これぐらいの組織で、これぐらいのことをすれば、これぐらいの成果が見込める」という目算を立て、行動できるのです。

自発的で柔軟性があり、「強靭な精神力=メンタルタフネス」を持ったプロフェッショナル人材は、どの業界でも希少価値が高くなります。ビジネスパーソンの中でも、めったにいない存在ではないでしょうか。そんな人材の存在を知れば、どこの経営者も獲得したくなる気持ちが高まるばかりです。

「年収は高くてもいいから採用したい」という話はよく聞きます。急速に進歩している業界、例えばIT系ベンチャー企業では、取締役や技術開発部長などは2~3年のペースで他社に転職するという話を耳にします。私も、「短い間でしたがお世話になりました」という退職のメールが来ると、思わずヘッドハントを想像する癖がついてしまいました。

 

ヘッドハンターの年収交渉術

話を戻しましょう。「年収は高くてもいいから採用したい」といっても、会社には賃金規定があります。同じ立場、同じ仕事をする人が複数いる場合、その人だけ突出した年収を提示しては、組織全体にも影響が出かねません。クライアント企業は、優秀な人材が組織に与える影響まで考慮しなければなりません。

「社長はあの人だけ特別扱いしている」「社長は我々にもう期待しなくなった」「今度来た人、年下だけどもうすぐ我々の上司になるらしいよ」――大きな会社で人事が動くと必ずと言っていいほど、こういう内緒話が社内を駆けめぐります。

候補者の年収アップはヘッドハンターにかかっています。ヘッドハンターは、クライアント企業と粘り強い条件交渉を続けます。採用に至るまで1年かかることもあるのですが、年収をはじめ、いくつもの条件交渉が続くため時間がかかってしまうのです。

私があるヘッドハンターを取材した時の話です。事業責任者をスカウトする目的で始めた交渉で、当初は正社員としての採用を想定していました。しかし、希望年収を実現するために、結果的にグループ会社化し、その社長として迎えたそうです。給与ではなく役員報酬で希望額を満たし、円満なスカウトが成立したといいます。

ヘッドハンターは候補者とクライアント企業の間に入り、双方の希望条件に対し、さまざまな角度から何回もヒアリングを重ねます。この仕事は、メールのやり取りだけでは進みません。粘り強い交渉術が話を前へ進めるのです。

著者紹介

水野臣介(みずの・しんすけ)

株式会社オーピーエヌ代表取締役社長

人材派遣会社での勤務を経て業界専門誌「月刊人材ビジネス」発刊の前身となる出版社の株式会社オピニオンに入社。20年以上にわたり人材ビジネス業界の変遷をウォッチし続ける。2018年に「月刊人材ビジネス」を継承し株式会社オーピーエヌを設立、代表取締役社長に就任。現在は人材ビジネス業界向けに幅広い活動を展開している。

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