
不安や憂うつ、イライラ、焦り...それは"思考過剰"が原因かもしれません。現代人の意識は思考に偏りやすく、そのアンバランスが生きづらさにつながることがあるのです。本稿では、そんな思考過剰から抜け出し、「今ココ(過去や未来にとらわれず、今この瞬間に目を向けること)」の感覚を得るために有効な「呼吸瞑想」のやり方について、書籍『じぶんでできる左脳過剰の静め方』より紹介します。
※本稿は枡田智著『じぶんでできる左脳過剰の静め方』(かや書房)を一部抜粋・編集したものです
マインドフルネスの基本「呼吸瞑想」
オーソドックスな呼吸瞑想のやり方をご紹介いたします。やり方を読んで、少しでもいいので試してみてください。一度体験すると、説明がより理解しやすくなると思います。
①リラックスして座る
椅子に座っても、床に足を組んで座ってもかまいません。椅子に座る場合は、座面が平らで硬めの椅子を用意しましょう。リクライニングチェアのような、座面に傾斜があって、柔らかいフカフカな椅子だと、姿勢を保って座りにくいです。ダイニングチェアのような、少し硬めで平らな椅子がおススメです。
足を組んで床に座る場合は、瞑想用のクッションをお尻に敷くといいです。床に直接座ると、体が柔らかい人でないと、姿勢を保つのが難しいと思います。瞑想用クッションは座ってもつぶれにくく、お尻に高さが出せるため、姿勢を保ちやすくなります。瞑想用クッションはネットで簡単に購入できます。
リラックスしながらも、軽く背筋は伸ばしておきます。力を入れてガチガチにならないようにしますが、ダラっともならないようにします。
瞑想中は目を開けておきます。もちろん、瞬きはいくらしてもOKです。目については、流派によって開けるスタイルと閉じるスタイルがありますが、私が習った流派では、目を開けます。目を開けていたほうが、眠くなったりボンヤリしたりしにくく、クリアな意識を保ちやすいです。
②呼吸に意識を向ける
そっと呼吸に意識を向けます。呼吸が体に入ってきて、出ていく様子を、ただ感じます。なるべく鼻で呼吸ができるといいでしょう。息が鼻や喉を通っていく感覚や、胸やお腹に入って、体が膨らんだり縮んだりする感覚を、ただ感じます。呼吸をコントロールしようとはせず、自然な呼吸に任せます。特定の箇所に絞って感じる必要もありません。呼吸を全体的に感じておきます。
グーっと意識を狭めて呼吸に一点集中する、というよりは、リラックスして優しく呼吸を感じる、くらいの力加減がいいです。呼吸を感じられていれば、同時に体感覚や他の五感が感じられていてもかまいません。重心が下に降りていて、お腹や座面あたりを感じながら、呼吸が感じられていると、よりよいです。
呼吸が感じられていれば、今ココ、感覚に意識を置くことができています。この状態をなるべく保ちましょう。
③思考に気づく
呼吸を感じていると、そのうち何か考え事が始まります。そして、意識は思考にそれていき、呼吸を感じられなくなります。
そうなると、多くの人が「ダメだ! 瞑想失敗だ!」と思ってしまうのですが、そんなことはありません。思考に意識がそれるのは当たり前です。誰でも必ずそうなります。
大切なのは、それに「気づく」ことです。自分が思考していて、呼吸から意識がそれているという状況を、自覚するのです。自覚したら、慌てずにそっと呼吸に意識を戻します。
思考に気づいたときに、自分を責めたり、思考を攻撃したり、思考を力ずくで抑え込もうとはしないようにしましょう。「あぁ、思考しているんだな」と軽く優しく思考に気づき、慌てずに呼吸に戻りましょう。
そして、呼吸を感じ続けます。するとまた思考が起こり、意識が呼吸から離れます。そうしたら、また思考に気づいて、そっと呼吸に意識を戻します。このプロセスを何度も繰り返します。
おそらく最初は、呼吸を感じていられる時間はそう長くはないでしょう。ほんの数回呼吸を感じたら、すぐに意識が思考にそれてしまいます。しかし、それで問題ありません。そこでめげずに、何度でも思考に気づき、何度でも呼吸に戻りましょう。
この「思考に気づいて呼吸に戻る」というプロセスが、とても大事です。瞑想中はこのプロセスが何度も起きます。このプロセスで、思考の世界から、今ココに意識を切り替える練習をしているのです。
このプロセスができていれば、瞑想の練習になっています。この「思考から今ココに切り替える力」が、マインドフルネスの力です。思考から抜け出し、ありのままの今ココ、感覚の世界、右脳優位な意識に入っていくための力です。
思考以外のものに意識がそれた場合も同じです。例えば何か音が聞こえたり、体にかゆみやムズムズ感が出たり、気になるものが見えたりして、意識が呼吸からそれることがあります。その場合も、呼吸から意識がそれたことに気づいて、自分を責めずに、慌てずに呼吸に意識を戻します。
意識がそれる原因となった音や見えたもの、体感覚などを過剰に嫌がったり、排除しようとしたりはしません。ただ意識がそれたことにシンプルに気づいて、慌てずに呼吸に戻るだけです。
呼吸が感じられていれば、他の五感も一緒に意識にあってかまいません。この瞑想を数分間続けます。まずは5分ほどでOKです。慣れてきたら10分~20分ほどやってみましょう。タイマーをセットしてやるのがおススメです。