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生き方

「死にたい」でも「本当に死にたい」わけじゃない...大人はどう自分を愛せばいいの?

クォン・ラビン (著)、桑畑 優香 (翻訳)、 チョンオ (イラスト)

2025年03月28日 公開

「死にたい」でも「本当に死にたい」わけじゃない...大人はどう自分を愛せばいいの?

「こんなふうに生きていくなら、いっそ死んでしまいたい」変わらない日常や将来への不安、確かな希望を約束できない日々のなかで、ふとそう思ってしまう瞬間。それは本当に「死んでしまいたい」のではなくて、ただ「今の自分を愛せていない」だけなのかもしれません。自分をいたわり、よくやっていると認めてあげること。そのために、言葉の処方箋はいかがですか。

※本稿は『死にたいんじゃなくて、こんなふうに生きたくないだけ』(&books/辰巳出版)を一部抜粋・編集したものです。

 

「緊急連絡先を書いてください」

ひとり暮らしが10年近くになると、家族との関係もだんだん希薄になっていく。一番近く、もっとも愛すべき存在であるにもかかわらず、一番遠く、もっともややこしいのが家族だ。愛するがゆえに言いたいことをぐっと飲み込み、わたしの心はどんどん硬く閉じていく。

新しい職場に入社したときや、病院に入院したり手術を受けるときに、かならず言われる 「緊急連絡先を書いてください」 という一言が、わたしをじりじり追い詰める。

緊急連絡先に記す人がいないのだ。 友だちや恋人の名前を書いても、その人たちは本当の保護者ではない。そんな事実が、わたしを孤独の底に突き落とす。 

わたしの保護者はわたし。そんなわたしはどうしたらいいのか。

 

自分を愛する方法

自分を愛するのは難しい。 自分の傷と欠点を痛いほどわかっているから。 そんなあなたをまるごと愛してくれる人が現れても、疑心暗鬼になって自分の欠点をあげつらねたり、「どうしてこんなわたしが好きなの」と問いつめてしまったり。

でも、決して忘れてはならないのは、宝くじに10回当たるよりも稀まれな、まるで奇跡のような確率で生まれたあ なたは、家族から、いや、家族だけじゃなく、すべての人に愛されるべき価値があるということ。立場を変えて考えてみて。欠点と傷を抱えてうずくまっている人がいたら、あなたは無視して通り過ぎるだろうか。自分の姿に重なってみえるその人を、抱きしめてあげたいと思うのではないか。

大人になってから「自分を愛する方法を知りたい」という人にたくさん出会った。周りが望む人生を一生懸命生きた末に、自分を愛する方法を見失って迷い、苦しむ人たち。自分を愛する方法は、学校も家族も教えてくれないから。

自分を愛したい。だけどどうすればいいのかわからない。

小さなことでいいから、自分という存在に価値を与えてみて。それをよりどころにあなたが立ち上がることができるなら、自分を愛する第一歩になる。それがきっと、人生で一番大切なこと。

 

15万ウォンの明日

『死にたいんじゃなくて、こんなふうに生きたくないだけ』

どこかに行きたい。ふと、そう思った。でも、通帳の残高はわずか15万ウォン。これから半月を賄うためのわたしの生活費すべてだ。もうすぐ午後4時、そしてお金もない。それなのに、海を見たいという衝動に駆られ、 チケットを買って電車に乗り込んだ。こんな想定外の瞬間を愛しているのは、計画どおりに進まないのが人生だから。

わたしは時々、衝動的な感情に身を任せる。 ひとり旅なんて絶対に無理だと思っていたのに、海が見える宿にひとりで泊まり、砂浜に座ってひたすら海を眺めた。なんとなく買った缶ビールを空っぽのお腹に流し込みながら、ただ海だけを見ていた。

捨てる場所が必要だった。 別れを経験したあと、このあふれる愛という感情を、どこかに流してしまわなければならなかった。 通り過ぎる人たちが、波に濡れてぐしゃぐしゃになったわたしを見ていた。そんなこともお構いなしに、海の向こうに沈む太陽を見つめた。 

ほどなく闇が包み、わたしは真っ暗の海を前に横たわり、夜空を見上げた。すると、突然涙が波のようにどっとこみ上げてきた。 

すべてが崩れ落ちるようにつらいとき、15万ウォンの旅を思い出す。長い人生のたった一日にすぎないけれど。 あの日の経験は、過去を整理して明日へと進む旅だった。

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