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社長数が多い上位25大学でROEトップ「立命館出身者の経営力が高い」理由とは?

西山昭彦(立命館大学客員教授)

2025年03月27日 公開

社長数が多い上位25大学でROEトップ「立命館出身者の経営力が高い」理由とは?


(写真提供:立命館大学)

大学の力を示す数字は種々あるが、卒業した経営者の実績は社会に対する貢献度の一つといえる。近著『立命館がすごい』を著した立命館大学客員教授の西山昭彦氏が、同大学が「ROE日本一」になった要因を分析する。

 

関西の大学出身のほうが経営効率を意識

ROEランキング

『日本経済新聞』2025年2月26日付に、これまで見たことのない大学に関する記事が掲載された。その結果も衝撃的だ。

「デキる経営者、どこ大出身?」の見出しの下に、ROE(自己資本利益率)では立命館大学が日本一(10.9%)と分析されている。本調査は、上場企業約2200社の最終学歴を集計し、社長数が多い上位25大学を各経営指標で分析したという。

ROE=当期純利益÷自己資本×100で、株主が拠出した資本(株主資本+その他包括利益累計額)に対して、どのくらいの利益(親会社株主に帰属する当期純利益)を上げたかを示す。経営指標の中でも、経営効率性を測る最重要指標の一つである。

上位5位を見ると、一般の大学別順位と逆転した現象になっていることがわかる。関西私立2、関東私立1の後に定番の国立2として京大、東大が並ぶ。この順位ですべてを語ることはもちろんできないが、①私立>国立と②関西>関東は事実である。

この結果では、私立大学出身社長のほうが国立より、関西の大学出身者のほうが関東より経営効率をより意識、実践して成果を上げている、といえる。

この中で、立命館大学はROEが首位のみならず、PBR(株価純資産倍率)も1.34倍で2位にあり、25大学の中で立命館出身社長の経営努力が特質される。

 

職員も経営幹部候補

立命館大学立命館大学「EDGE+Rプログラム」HPより

追加調査をして、立命館大学出身社長がどういう経営努力をされてきたかを調べれば、その実態を知ることができる。しかしそれは後日のことなので、ここでは筆者の仮説を紹介する。

第1に、大学で学生が接するのは教職員である。このうち立命館大学では、職員の中から経営トップである理事長が選任されてきた歴史がある。つまり、職員は皆、企業でいう総合職であり、経営幹部候補である。

外部の大学からよく、「立命館の職員はすごいですね」という声を聞く。私も教授時代に日常的に接してきたが、若くても創発型でかつ緻密な仕事をするできる人材が多い。

職員が経営マインドを持っていれば、仕事の姿勢や発想に日常的に触れる学生も影響を受ける。それらが知らず知らず身につき、将来の経営力につながっているではないか。

第2は、大学側がさまざまなビジネスやベンチャーの促進策を長年行なっており、キャンパスで日常的にそういう機会が提供されている。

たとえば、学生ベンチャーコンテストが2004年に開始され、学生が持つ技術やビジネスアイディアをもとにプランを募集し、大学発ベンチャーの創出と起業家精神の育成を目的として実施されてきた。

2014年に開始した「EDGE+Rプログラム」は、2022年に改変され、現在はイノベーション創出を担いうる次世代の育成を目的とした正課外の実践型プログラムとなっている。学生がスタートアップのプロたちによるメンタリング、ワークショップ、セミナーを経て、最終審査会に挑戦する。自分や友人がこれらを見聞きし、参加した人と話をすることで、マインドは変わっていく。

 

グローバルな京都

第3に、京都という土地の特有の風土がある。1200年を超える都の歴史の上に、世界有数のハイテク企業が輩出してきた。京セラ、村田製作所、ニデック、島津製作所など多数あるが、いずれも京都本社を堅持しながらグローバルにビジネスを展開している。

村田製作所の友人に聞くと、海外売上比率は90%以上で、アップルの新商品開発には欠かせないパートナー企業になっているそうだ。

他方、反論として、社長が属する企業規模や社歴が国立大学、関東の大学のほうが上で、その分、経営効率を高めにくい環境にあるとも考えられる。

しかし、だからといってROEが低くてもいいとはならないはずだ。ROE、PBR、PER(株価収益率)の向上は、企業経営者が環境にかかわらず追求すべき指標であり、1位はやはり意味があると考える。

 

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