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子どもの中学受験「落ちたら終わり」? 和田秀樹さんが説く“目先の不安の対処法”

和田秀樹(精神科医)

2025年04月29日 公開 2025年05月01日 更新

和田秀樹

子どもの受験や親の介護、目の前の一大事について落ち着いて考えようと思っても堂々巡りで結論が出ない。結論が出ない理由をパートナー、友人、家族のせいにしてしまう。そんな経験はありませんか?どうしたら、平常心を保ち、リラックスして目の前のことに対応することが出来るのか?精神科医の和田秀樹さんに解説して頂きます。

※本稿は『仕事も対人関係も 落ち着けば、うまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋編集したものです。

 

「不安の沼」にはまり込んでいる?

人が不安になって、気持ちが落ち着かなくなる一番の原因は、「今のこと」しか考えていない点にあります。

わかりやすい例として、子どもが中学受験を控えた親のケースで紹介します。

子どもが中学受験をする場合、「落ちたら終わり」と思い込んでいる親が多いため、塾の成績が悪いとか、模擬試験の結果がパッとしないと、それだけでイライラして、焦り始める人が少なくありません。

こうした親に共通するのは、「中学受験がすべて」と思っていることです。

大学の附属校に行かせる場合を除けば、中学受験というのは大学受験の結果を保証するものではありません。「子どもを一流大学に進学させる」ことが最終目標であるならば、この時点で一喜一憂したり、絶望的な気分になっても、あまり意味がないのです。

一流大学に合格させるという本来の目的を叶えるためには、中学受験だけが唯一の戦術ではありません。中学受験はせずに、小学校の高学年から英語に力を入れておく方法もあります。

中学で学ぶ数学を先取りして、高校受験に力を入れるという方法もあります。中学受験に失敗したら、高校受験や大学受験で頑張れば、いいだけのことです。

高校受験がうまくいかなければ、大学受験で踏ん張ることでリカバリーできます。

仮に中学受験に失敗しても、その先の選択肢はいくらでもありますが、目先のことだけですべてを判断してしまうと、絶望感と不安を抱え込むことになります。

名門中学にギリギリで入って、周囲についていけずに勉強が嫌いになるよりは、二番手の私立中学で上位にいた方が、いい大学に進むことができることもあります。

不安や焦りを感じている人の多くは、目先のことにとらわれすぎて、自分で気づかないうちに、「不安の沼」にはまり込んでいるのです。不安になったり、気持ちが焦るのは、「自分がどこを目指しているのか?」という目標がハッキリしていないことに原因があります。

子どもを一流大学に進学させることが目標であれば、中学受験はあくまでも通過点に過ぎません。仮に合格できなかったとしても、必要以上に落ち込む必要はなく、次の一手を考えることができれば、前を向いて歩みを進めることができます。

 

目標を明確にして、長期的な視点で考える

目標が明確であれば、そこに向けて長期的な展望を持つことができますが、自分がどこを目指しているのかわからない状態を続けていると、「迷子」のように右往左往することになり、不安になってしまうのです。

迷子にならないためには、長期的な視点に立って、物ごとに向き合うことです。

目の前の仕事がうまくいかなくても、そこで悩んでモチベーションを下げたのでは、仕事が辛くなるだけです。次の仕事で成果を出すことを考えて、入念な準備をすればいいのです。

次の仕事で結果を出せば、会社をクビになる心配はなく、大きな成果が出せれば、出世につながることだってあります。

目先のタスク(課題)で頭が一杯になり、パニックに陥るくらいならば、次のタスクで頑張ろう...と頭を切り替えれば、ネガティブな感情を抑えることができます。

これは目の前のタスクから「逃げる」ことでも「先送り」でもなく、自己防衛のための手段です。

今はできそうもないと思うことでも、後でできるようになればいいわけですから、どうしても無理なものは、「今は諦める」と割り切って考えればいいのです。

私は老年精神医学が専門の精神科医ですが、親の介護の問題についても、同じことがいえます。

親の認知症が進むのを目の当たりにして、介護に直面することになり、慌てて右往左往する人がたくさんいます。

実際に介護が始まると、今度は頑張りすぎて、燃え尽き症候群になってしまう人も、少なくありません。

親がある程度の年齢になったら、持続可能な介護プランを立てる必要があり、家族や兄弟姉妹で話し合っておくことが大切ですが、親の変化に遭遇して、初めて慌て出す人がほとんどです。

先のことを考えずに、今のことばかりを見ていると、落ち着かない気持ちになって、自然と不安になります。

目先の問題に振り回されて不安になっている人には、先のことに目を向けてみる...という視点が欠けていることが多いのです。

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