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生き方

思い込みに縛られ実力を発揮できない人「あの人は出来ているのに、なぜ自分は...」

和田秀樹(精神科医)

2025年05月02日 公開

思い込みに縛られ実力を発揮できない人「あの人は出来ているのに、なぜ自分は...」

「あの人は出来ているのに...」「また失敗するのでは?」「逃げたら負け」自分でも気づかないうちに、そんな「思い込み」や「決めつけ」に縛られていませんか?どうしたら、そのような縛りから解放され、落ち着いて考え、自分らしく行動することができるのか?精神科医の和田秀樹さんに解説して頂きます。

※本稿は『仕事も対人関係も 落ち着けば、うまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋編集したものです。

 

打率1割でも打席に立ち続ける

日本人には「完璧主義」の傾向がありますから、どんなことでも「100%」を目指しがちですが、世の中に完璧なるものは存在しません。

プロ野球選手であれば、打率が3割を超えると一流打者と呼ばれることは、誰でも知っていますが、なぜか自分のことになると「10割」を狙ってしまうのです。

すべてのことで10割を目指してしまうと、完璧でなければ気が済まなくなって、少しのミスや失敗でも不安になり、焦る気持ちが芽生えます。

完璧主義の人ほど、「あの人ができているのに、なぜ自分はできないのか...」と比較で考えてしまうため、すぐに落胆してしまう傾向が強いようです。

自分の目には「10割バッター」に見えても、そんな人は滅多にいません。

圧倒的に仕事ができる人であっても、目に見える成果が大きいだけで、すべてのタスクに成功しているわけではありません。

異性にモテモテの人であっても、100%の人から好かれていることはなく、目立つ異性とつき合っているから、羨ましく思っているだけのことです。

大事なのは、10割バッターを目指すのではなく、仮に1割でもいいから、打席に立ち続けることです。

10回に1回でもヒットが出れば、それがホームランでなくても気分が晴れます。「三振してもいいや」と思って打席を増やしていけば、いずれどこかでホームランが出る可能性もあります。

プロ野球選手であれば、打率1割の打者をスタメンに起用することはありませんが、幸いなことに、自分の監督は自分自身です。

完璧を目指さず、打率1割でもいいから打席に立ち続けることが、平常心を保つことにつながります。

 

アドバイスを10個集める

仕事のアイデアが浮かばないとか、提案の内容がまとまらなかったりすると、誰でも焦り始めて不安になります。

周りの人に相談したり、信頼できる先輩に話を聞きに行くなど、さまざまな方法があると思いますが、人に意見を聞くならば、できる限り多くの人の見解を集めた方が後々の安心につながります。

いくら信頼できる先輩であっても、その人の考えがいつも正しいとは限りません。

日本人には、たくさんのチャンネルで物ごとを判断するのが苦手な人が多いため、信頼できる人の意見を鵜呑みにして安心する傾向がありますが、アドバイスというのは、数多く集めることが鉄則です。

「本当に正しいのか?」と考えてしまうと、不安を払拭することはできませんから、アドバイスは1つや2つではなく、最低でも10個くらい集めることが大切です。

それを比較検討することで、自分が「妥当」と思えるものを選ぶ習慣を身につけることが、平常心を保つことに役立ちます。

医療の世界には「セカンドオピニオン」という考え方が定着していますが、日常生活でも、異なる意見が大事なことは同じです。その繰り返しが、安心と安全を担保することになるのです。

 

きちんと「懲りる」

仕事で何か失敗をすると、次もまた失敗するのではないか...という予感がして、不安になることがあります。

誰にでも経験があると思いますが、これは単なる悪い予感ではなく、十分に起こり得ることだと考える必要があります。

「失敗学」を提唱した東大名誉教授の畑村洋太郎先生は、「人間は同じ失敗を繰り返すものだ」と説いていますが、まさにその通りで、人間というのは、何かミスをすると、同じミスを何度もしてしまう傾向があります。

なぜならば、ミスをしたのと同じやり方を、次でもやってしまうからです。

仕事でミスをして、「また失敗するのではないか?」と不安になり、焦っている人というのは、ほとんどの場合、前と同じ方法論を踏襲しがちです。

「次も失敗したら、どうしよう...」と不安になっているわりには、失敗の原因分析が甘いため、別の方法が思いつかないのだと思います。

急にスキルが上がることはありませんから、結果的に同じミスを何度も繰り返してしまうのです。

一度失敗したら、きちんと「懲りる」必要があります。

発明王と呼ばれたトーマス・エジソンは、「私は失敗したことがない。1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」という名言を残していますが、何か失敗をしたら、うまくいかなかった方法を参考にして、別のやり方を考えることが大切です。

別の方法でやっても、また失敗することもありますが、失敗した方法でやるよりも、失敗する確率は確実に落ちます。

大事なのは、ミスを減らすことと、同じミスを繰り返さないことにあるのです。

 

「逃げ場」を用意する

会社や学校などで、辛いことや厳しいことがあって、どうしても我慢できないならば、無理をせずに「逃げる」ことも選択肢の一つです。

日本人は、我慢することを「美徳」と考えており、逃げる人のことを「卑怯者」と考える傾向がありますが、精神科医の目から見ると、逃げることは極めて合理的な選択であると考えています。

我慢する毎日を続けていると、不安感が強くなり、憂鬱な気持ちになって「適応障害」や「うつ病」になる危険性があります。

最悪の場合には、自殺する人まで出てしまいますから、不安や緊張、焦りというのは、想像以上にメンタルにダメージを与えるものなのです。

仕事が辛ければ、上司に部署の異動を申し出るなり、転職を考えることも有効な選択肢となります。いじめが怖くて学校に行くのが厳しいならば、転校することもできます。

すぐに実行に移さなくても、「最後には逃げ場があるぞ」と考えることができれば、気持ちに余裕が生まれます。

逃げるという「最終兵器」があることを頭の片隅に置いておけば、緊張や不安を軽減することにも役立ちます。

逃げ場を用意しておくことを「敗北」と考える必要はありません。

平常心を保って、自分らしくいるための「手段」と考えれば、自然と前向きでポジティブな気持ちを手に入れることができるのです。 

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