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ストレスを溜めない人がやっている「リンパの流れ改善」習慣

大橋俊夫(信州大学医学部教授)

2012年11月09日 公開 2022年12月27日 更新

大橋俊夫

心と体を休めるには寝るのが一番

ゆったりとした姿勢でベッドに横になる。足の下に座布団や毛布を敷いて、心臓の位置よりも足を上に上げて寝る。そうすることでリンパの流れはよくなり、翌朝には足のむくみが取れている。人間の体の回復力とはそれほど優れているのです。

しかし、体は休めることができますが、心の部分はまた少し違ってきます。ベッドに横になっても、なかなか寝付けない。心配事があったり、不安感を抱えていると、どうしても眠ることができません。

今の日本では、こうした精神を病んだ人たちがとても増えているようです。不安というものを医学的に説明すれば、その要因は脳の中にあるとされています。

脳幹部の内部に、ラッフェ核という場所があります。ここがセロトニンという化学伝達物質を仲介して、不安を引き起こしていると言われています。

怪我などをした時にも、痛覚の神経の伝導経路の一部から、このラッフェ核に情報が伝えられ、この化学伝達物質が大量に出て、「体に異常が起きているから気をつけろ」という信号を作り出しているわけです。

この信号が出るから、心臓が反応してドキドキしたりするのです。

精神科で処方される抗不安薬というのは、このラッフェ核にも作用するものです。そしてもう1つ処方されるのが、睡眠誘発剤です。

とにかく眠ることによって、不安感を軽減させる。実はこの睡眠こそが、心の癒しには一番なのです。

精神科にかかるほどではなくても、心に不安や心配事があると、私たちはなかなか眠れません。あれこれと思い悩んでいるうちに、どんどん目が覚めてくる。

気がついたら外が明るくなり、寝不足のままで1日を過ごすことになる。そういう経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

とにかく、何も考えずに眠ることです。不思議なもので人間は、暗い夜に考え事をすれば、どうしてもマイナス思考になってしまう。

「ああ、どうしよう。あれは、うまくいくだろうか。もしもうまくいかなかったらどうなってしまうのだろう」。悪いほうに悪いほうに想像が働いてしまいます。

そんな時には、「とにかく今夜は眠ってしまおう。明日になってから考えよう」と思うようにしましょう。例えば夜に10の心配事があるとします。それをずっと考え続けていたら、心配事は20にも30にも膨らんでしまうものです。

ところが考えることを止めて、眠ってしまったらどうでしょう。朝に目覚めた時には、その心配事は3くらいになっているものです「あんなに悩んでいたけれど、実はたいしたことじゃないな」。そう思えるはずです。

確かに悩み事というのは、それぞれに持っている性格にも左右されるものです。心配性で小さいことに悩む人もいれば、心配事などすぐに忘れてしまう人もいます。

同じ生きるのなら、ウジウジと悩んでばかりいるのは損だと思いませんか。性格は心の持ちようでいくらでも変えられます。上手に忘れる技術さえ身につければ、きっと今の心配事は半分になりますよ。

心配事や不安感を少なくするためには、とにかく眠ることです。まずは規則正しい生活を、心掛けること。夜の11時には必ず寝る。そして朝は6時に起きる。

そういう習慣が身につけば、多少不安なことがあっても、眠たくなって考えることができません。心配事かあったけれど、気がついたら眠ってしまっていた。これが最高の心の健康法かも知れません。

睡眠ということで少し付け加えておきます。レム睡眠とノンレム睡眠という言葉は聞いたことがあると思います。これは眠りの深さを示すものです。睡眠には浅い眠りと深い眠りがあります。

レム睡眠というのは、大脳の表面だけが休んでいる状態です。この状態では、目の玉はぴょこぴょこと忙しく動いている。

Rapid Eye Movement ―その頭文字を取ってREM睡眠というわけです。夢を見ている時はこの状態です。

一方のノンレム睡眠のほうは、大脳の奥の中脳までが休んでいる状態です。この深い睡眠に陥っている時には、多少の物音では目が覚めません。熟睡している状態です。

このレム睡眠とノンレム睡眼が1晩のうちに繰り返されているのです。どうしてこの2種類の睡眠があるのかは解明されていませんが、非常にうまくできた睡眠のシステムだと思います。

ともかく、体と心を休めるには睡眠が一番です。眠ることの大切さを日頃から充分に意識しておいてください。

 

【大橋俊夫(おおはし・としお / 信州大学医学部教授)】
1949年茨城県水戸市生まれ。信州大学医学部医学科卒業。医学博士。英国ベルファストクイーンズ大学講師(生理学)を経て、現在、信州大学医学部教授(器官制御生理学)。2003年より5年間、信州大学医学部長。2006年~2008年全国医学部長病院長会議会長を歴任。2001年より日本リンパ学会理事長を務め、本邦におけるリンパ学研究の推進に専念。専門は循環生理学、特に微小循環、リンパ循環の生理・薬理並びに病態生理学。
著書に『新生理科学大系 16巻/循環の生理学』『標準生理学』(以上、医学書院、共著)『肝臓を怒らせないために』(信濃毎日新聞社、共著)『リンパ管―形態,機能,発生―』(西村書店、共著)など多数がある。

 

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