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使わない「子ども部屋」の放置はNG!老後も家をスッキリさせる整理術

保坂隆(精神科医)

2025年07月03日 公開

使わない「子ども部屋」の放置はNG!老後も家をスッキリさせる整理術

ついつい買いがちな「便利グッズ」。しかし、実はその"便利さ"が、脳の老化や物忘れを早めてしまう可能性があると医師の保坂隆さんは警鐘を鳴らします。毎日のちょっとした工夫で、ハツラツとした脳を保つには? 書籍『精神科医が教える 心が軽くなる「老後の整理術」』より紹介します。

※本稿は、保坂隆著『精神科医が教える 心が軽くなる「老後の整理術」』(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

使わない「子ども部屋」を放置していませんか?

一戸建てに住んでいる年配の方に「今、子ども部屋はどうされていますか?」と聞いてみると、意外なくらい多いのが「実は子どもがいた時のままで、物置のような状態なんですよ」という返事です。

たとえば、定年を迎える人の子どもであれば、すでに30歳前後が多いでしょう。就職や結婚などで現在は別居しているのなら、もう子ども部屋は必要ないはずなのですが、多くの場合は、子どもが学生だった頃と同じ状態で放置されているようです。

それだけならまだしも、なかには自宅で保管しきれない荷物を実家に預けて、便利な倉庫、物置代わりにしている子世代も多く、ますます子ども部屋は活用度の低いスペースになっていると思われます。

しかし、固定資産税をしっかり払いながら、家の中で自分たちが何も利用していない空間があるというのは、もったいない話です。「老後の生活スタイル」を見直すと同時に、改めて子ども部屋の有効利用を考えてみてはどうでしょうか?

子ども部屋のリフォームでは、まず夫婦の寝室を2つに分けて、個々のベッドルームとして活かすというのが人気のあるプランです。

子どもが学校に通っていた時代はもちろん、仕事をしていた時は通勤のため、夫婦そろって決まった時間に起きていた人が多いと思います。けれども、仕事をしなくなると起床時間や就寝時間が異なって、夫婦別々の部屋のほうが都合良く過ごせるというケースも少なくありません。

こうした希望は、特に奥様から出されることが多いようです。「長年、夫のイビキに悩まされてきたけれど、もう勘弁してほしい」とか「隣で動かれると夜中にすぐ目が覚める」「そろそろ一人で、ゆっくり眠れる寝室が欲しい」といった理由を挙げて、夫婦別室の暮らしを提案されますが、反対にご主人が寝室を別にしたいと望まれるケースは、めったにないということです。

その他には、老後は体力が何より大事だと、子ども部屋をトレーニングルームに改造して、筋トレやストレッチを楽しんでいるご夫婦もいます。

「自宅でもルームランナーやサイクルマシンが使えるので、雨の日もトレーニングができますし、わざわざ専用の部屋を作ったことで、運動に対するモチベーションは上がりましたね」という感想も聞かれるように、これは「運動を習慣にしたい」という希望を持つ人には、おすすめのプランと言えるでしょう。

また、「夫婦二人でスポーツジムに通うと結構なお金がかかるので、その点では経済的にもプラスだと思います」「夜出かけるのは億劫ですが、夕食後も家で運動できるのが良いところです」といった意見もあり、アクティブな老後の生活スタイルを考えるには参考になるアイデアかもしれません。

これらが「動」のプランだとすれば、子ども部屋を茶室や書斎、図書室などの「静」のプランに転換する方法もあります。

特に何か趣味で究めたいものや、物づくりなどじっくり取り組みたいものがある場合は、こうした模様替えもいいでしょう。

老後の人生にとって、自分の趣味はそれまでの仕事に替わる大きな要素になりますから、このくらい重点を置くのは当然です。むしろ模様替えがきっかけとなって、趣味への関心は増すはずです。

そして、もうひとつは子ども部屋を、友人知人とのオープンスペースとして活かす案です。

俳句や絵画などのサークルを開催して仲間と趣味の共有をしたり、ご近所の主婦を集めて郷土料理の研究会を開いたり、将棋囲碁の愛好クラブを開くなど、小さなコミュニティの場にすることで、新しい人間関係を築くこともできます。

お付き合いの輪が小さくなりがちな老後だからこそ、積極的に自分の家を交流の場に提供するのも、ひとつの有意義な方法ではないでしょうか。

さらに、もし子ども部屋が玄関の近くで、他の部屋を通らなくても行ける場合には、「貸し部屋」として活用することも考えられます。

たとえば学習塾や書道教室、幼児教室などにレンタルスペースとして貸し出すことができれば、額はわずかでも定期的な収入が得られますから、家計の助けになります。そこまでいかなくても、他のコミュニティの会合の場に臨時で貸し出すなんてこともできるでしょう。

このようにアイデアや条件次第で、新たな活用がいくらでも可能な子ども部屋ですから、何年も手つかずのまま放置することのないよう、よく考えてみてください。

ただし、いずれの場合にも事前に子どもとよく話し合い、了解を得た上で模様替えするのが基本です。子どもが久しぶりに帰省したら、いきなり自分の部屋がなくなっていたというのでは、ビックリしてしまいますよね。

まずは、大掃除の時期と合わせるなどして子どもに自分の部屋をチェックしてもらい、不要な品を選別して整理することから始めましょう。

もちろん、子どもが小さい時の思い出のまま、その部屋を大切に残しておきたいという方もいると思います。

けれども、ただ何となく手つかずのままになっているのであれば、思い出は心の中に大事にしまっておいて、「新たな生活プラン」を考えることも老後には必要です。

一度、夫婦で子ども部屋をどうするか話題にされてみてはいかがでしょうか。

 

「収納スペース」が増えるほど、物が片付かなくなる罠

不動産屋さんに「最近人気があるのは、どんな物件ですか?」と質問すると、「一戸建てでもマンションでも、収納スペースの多い家が人気ですね」という答えが返ってくるはずです。

これは日本が高度成長期を迎え、電化製品などが急速に普及した頃から今も続く傾向です。現代でも「シンプルライフ」→「スッキリした生活」→「居住空間になるべく物を置かない」→「収納スペースの多い家」という考え方が主流で、家づくりでも収納の利便性が大きなポイントを占めています。

ですから、マンションや住宅の広告チラシ、パンフレットには「大型ウォークイン・クローゼット完備」とか「充実した収納スペース」「たっぷり入る収納力でお部屋スッキリ」といった謳い文句が並んでおり、それが高齢者の転居の住まい選びでも、変わらず大きな基準になっているようです。

ちなみに、住まいの中の収納スペースを計算するには「収納率」という数値を使いますが、これは住宅の床面積に対する収納面積の割合です。

つまり、収納率の数値が大きいほど収納場所が多いことになりますが、この値には一般にクローゼットや押し入れなど、高さが180センチ以上ある収納だけが含まれ、小さな収納庫などは当てはまりません。

それでは一軒当たりどのくらいの収納容量があれば良いかというと、一戸建てでは約12~15%、マンションでは約8~10%の収納率が望ましいとされています。

ところが、仮にこれ以上のスペースがあっても、長く住むうちにだんだん室内に物があふれて、結局、収納力に物足りなさを感じるという体験をされている人は多いのではないでしょうか?

では、なぜ十分な収納力があるのにスペースが足りないと感じるかといえば、それは「人間はゆとりがあるほど、節制が効かなくなる」からです。

つまり、通常より大きなサイズの服やズボンを買うと、楽ちんなので安心してダイエットのことなど頭から忘れてしまい、結果的に油断してどんどん太ってしまうようなものです。「スリムな体型」を維持したいなら、やや小さめのサイズの服を着るぐらいが、ちょうど良いのかもしれません。

キャパシティに余裕があれば、「あるだけ溜め込む」のが人間の習性なので、たとえば最近のシンプル・インテリア術では、「収納グッズを買わない」ところからコーディネートが始まります。

収納グッズを買うと、その中に何をしまうかを熱心に考えるようになり、根本的な「スッキリ」(最初から買わない、不要な物は捨てる)とは逆方向に働くわけですね。

ですから「最初から収納スペースは小さめに設定」「収納グッズは置かない」、そして「目いっぱい詰め込まない」というのが、新しい収納の考え方になりつつあるようです。

高齢者の方でスッキリ暮らしたいのになかなか物が片付かないとお悩みなら、こうした収納に対する「新しい考え方」も参考にしてみてください。

「収納スペースが多ければ、すべて解決する」という長年の固定観念を捨てるところからも、「老後の整理術」は始まるのではないでしょうか。

 

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