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永遠の成長を目指し勉強せよ!



2012年10月10日 公開

山本真司 (コンサルタント)

PHP新書『35歳からの「脱・頑張り」仕事術』より》

暇になると不安になる

img01.jpg 私は、できる部下にはマネージャーの仕事をあげてしまえ、領土割譲しろと言ってきた。自分の仕事は楽になるし、部下も喜び、育つから。だが、頭ではわかっていても、現実には難しい。 

 キャパオーバーで死にそうなときはドンドン領土割譲するだろうが、問題は、領土を割譲しているうちに、本当に自分が暇になってしまうときだ。暇とは恐ろしいものである。自己否定なのだから。自分が暇でも仕事が回るということは、自分がいらないということだと思ってしまう。

 暇だと怖くなるものだ。本当に自分が必要ないということが、いま、目の前の事実で説明されているわけだから。格好良く、さっと帰ってしまうマネージャーもいるが、私は、自信がないのだろう。暇であることを不安視してしまった。

 暇ができたのだから、ちゃんと家に帰らなきゃとは思うものの、不安感を抱えて家にいても休まらない。友人から、伸びるためには「打ち込める趣味を持て」と言われるものの、これも駄目。気もそぞろだった。

部下のできないことをする

 そこで、自分の気持ちに新しい「仕組み」を植えつけた。そして行動した。その結論は、極めて単純明快。「部下のできないことをする」だけだった。

 いまの顧客のもっと上のポジションの人に会って、飯を食う。そして、次の仕事の営業の種を蒔く。

 社内人脈を作るような活動には、時間をあまり使わないようにした。その代わり、外部のネットワーク作りに時間を使う。「これは!」と思う人とは、昼夜、ビジネスへの道が見えなくても付き合った。そこで、いま手がけているテーマに関する面白い見方を教えてもらったりもした。

 ふと気がつくと、結構な人のネットワークができ上がっていた。新しい仕事の最初の仮説作りで、自分ではまるで仮説が思い浮かばないようなときに、そういう人達に電話しまくった。それだけで、仮説ができてしまうことも多かった。

 部下もだんだん、私をあてにするようになってきた。「山本さん、ⅩⅩⅩ業界の人と話をしたいんですが。ヒアリングできますかね?」「ああ良いよ。知り合いにその業界の人がいるから」 - 内向きで、自分の担当の仕事、いま現在担当している顧客にしか目のいかなかった私が外に目を向け始めた。

 よく、外部の方々と酒を呑んだ。面白い仲間も増えた。そういう仲間から、新しい顧客もドンドン開拓できた。これは、なかなか楽しい。おまけに、そういう方々からの耳学問で仕入れた知識、知恵を、部下達の仕事に還元できる。

 それと並んで、勉強を始めた。40歳になってからの手習いだ。自分の「仕組み」完成のための、分野を限定しない読書に集中する時もあった。

 “四十の手習い”は、自分の担当する業界の将来展望や、今後の経営の方向性、私の所属するコンサルティング業界の方向性、将来性、新事業分野の可能性など多岐にわたった。私もこの当時は、パートナー(一般企業では部長か執行役員相当か?)に昇進していたので、こうした話題は、自分のパートナーとしての仕事にも役に立つ。

 パートナーという肩書きながらも、相変わらずマネージャーのように現場を飛び回ることが好きだった私は、暇になったマネージャーが何をするべきか、という問いへの、より自分を納得させられる解答を得つつあった。

本当にやるべきは、自分が成長し続けるための活動

 最後の結論は、「部下のできない仕事をする」という次元を超えた、もっと抽象度の高いものになった。若干格好良過ぎるが、「自分が成長を続けること」というのが、自分の追い求めているものであることがわかってきた。

 だから、その時々でどんなテーマを選んでも良い。業界経験も長くなってきてシニアの仲間入りをした私だったが、知らないこと、わからないこと、新しく、面白いと思ったこと、そして、自分の成長に資することは、何でもやろうとした。

 いまでも私は、時間が余る方法を毎日模索している。自分が学び、成長できそうな面白いことが世の中には、ゴマンとあることがわかったからだ。

 手がけたものもたくさんあった。自分の経営観を文章にまとめて、業界誌に発表することも意識的に多くするようにした。昔からこういう記事書きには関心があって、合間を見てやっていたが、「仕組み」仕事術を確立するまでは、ドッシリと取り組むことはできなかった。

 こうした経験が、だんだん、私に文章を書くという新しいスキルを身につけさせてくれ、そこそこの冊数を書いてしまった。

 こういう経験は、部下に語る新しい素材として還流する。起承転結の修練を編集者さんから徹底的に鍛えられ、まえがきの意味、あとがきの目的まで、手取り足取り教えてもらった。

 だから同じように、部下の記事、論文書きを指導できた。また、自分で請け負ってきた記事・論文の寄稿を、部下と一緒に発表するようになってきた。自分の仕事で一緒に取り組んでいる分野について、すこし目を離して斜めに見る体験は、明らかに私と部下の目線を変えていってくれた。

 だんだんと、部下達と定期的に合宿の勉強会をしたり、通常仕事にアドオンして、講演会、寄稿、出版などをやるようになってきた。手伝ってくれる部下のやる気がみなぎるのは、見ていてわかった。それだけでなく、部下が能力的にも一段上にシフトするのを感じた。

 「これだ」と思った。部下は私が休みなく成長していこうという姿勢を見ている。私が本当に伝えるべきは、そのことなんだな、と思った。だからそれ以来、一見スットンキョウな目標をぶちあげて、ドン・キホーテさながらに、良くわからないものに立ち向かってみたりもした。

 それが、自分の部下の、そして組織の成長のためになるという確信をもつに至った。目が内に向かない。外に向く。いろいろな人が新しい視点を、それも外からうけた刺激を持ち寄る。

 私も、そういう声に接するたびに、「まだ修行が足りない」という思いを強くした。そしてまた、新しい分野の勉強に邁進した。自分を成長させるために。「永続的自己成長」のマインドが芽生えたのである。

 

山本真司(やまもと しんじ) 山本真司

(やまもと・しんじ)

経営戦略コンサルタント

1958年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、株式会社東京銀行入行、シカゴ大学経営大学院にて修士号(MBA wit honors、全米成績優秀者協会会員)取得。1990年、ボストン・コンサルティング・グループ東京事務所入社。A.T.カーニー東京事務所マネージング・ディレクター・極東アジア共同代表、ベイン・アンド・カンパニー東京事務所代表パートナーなどを歴任。20年以上の経営戦略コンサルティング経験。現在、株式会社山本真司事務所代表取締役、立命館大学経営大学院客員教授(戦略コンサルティング論)、静岡県サッカー協会評議員、慶應義塾大学大学院・早稲田大学大学院(スポーツ・ビジネス論)非常勤講師などとして活動中。
著書に、『40歳からの仕事術』(新潮新書)『30歳からの成長戦略』(単行本:PHPエディターズ・グループ/文庫:PHP文庫)『20代 仕事筋の鍛え方』(ダイヤモンド社)『会社を変える戦略』(講談社現代新書)などがある。


◇書籍紹介◇

35歳からの「脱・頑張り」仕事術35からの「脱・頑張り」仕事術

山本真司 著
本体価格 820円   

「自分だけ頑張っても駄目だった!」――20年以上の経営戦略コンサルティング経験を持つ著者が、苦闘の末に体得した、頑張り過ぎなくても「自動的に仕事が回る」手法を伝授!35歳近辺のマネージャーだけではなく、営業、企画、管理部門など、他者を相手に仕事をする全てのビジネスパーソンに役立つ内容です。

 



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