韓流ブーム前夜の2002年に映画でハマり、Eテレ『テレビでハングル講座』で韓国語の勉強をすることになった、漫才師・ますだおかだの増田さん。当初は単語ひとつ覚えられなかったと振り返りますが、ダジャレに置き換えることで、スムーズに記憶できるようになったそうです。
そんな"ダジャレ学習法"をまとめた書籍は約15年前に刊行され、現在では入手困難となっていましたが、このたびますださんの提案により、『ますだ式ダジャレで覚える韓国語 新版』(Gakken)として電子書籍版がリリースされることに。
発売を機に、韓国語との出会いや、ダジャレを通じて身につけた語学の実践法について、ますださんにお話を伺いました。
「手に入らないのはもったいない」と言われ...
――15年前の著書『ますだ式ダジャレで覚える韓国語』が電子書籍版で再リリースされたそうですね。
【増田】この10年以上、「もったいない」と周りから言われていたんですよ。じつは僕、韓国ロケに行くときは常にこの本を持ってポケットに入れながらロケしていたんですが、それを見た番組コメンテーターの弁護士さんが「単語をダジャレで覚えられるなんていいですね~」と言ってくれて。
そしたら何と次にお会いしたときに買ってきてくださってて。なんか中古を高値で買ったらしく、「発売から期間は経っているけど言葉は変わらないので色あせない。普通に手に入らないのはもったいない」と言われて。それでハッとして出版社さんに再販できないかとお願いしました。
――デジタル書籍と形態が変化したことに関してはどう思われますか?
【増田】本を持って行くとなると荷物がひとつ増えるので、スマホの中で見られるのはすごく便利だと思いました。困ったらすぐに使えるのも便利だし。旅行には行かないけど、韓国語にちょっと興味がある人にも気軽に読んでもらえるとうれしいです。
――そもそもなぜ、ダジャレで覚えようと思ったのですか?
【増田】僕が韓国語に触れたのは1997年ごろ。韓国にはじめてロケに行くことになり、何か言葉を覚えなければあかんと思って、行きの飛行機の中で「ありがとうございます」だけでも覚えることにしたのがきっかけ。
「ありがとうございます」は「カムサハムニダ」なんですが、どうしても頭に入ってこなくて......。そんなとき、僕はプロレスのファンなので、アントニオ猪木さんの「ダァーッ!」と「(ハムニ)ダ」、猪木さんって我々にとっては神様のような存在なので「神様」と「カムサ」ってなんか近いと思い、振りしぼってできたのが、「神様に『ダァーッ!』」でした。
「神様に『ダァーッ!』」を繰り返し言ってみると、なんとなく「カムサハムニダ」に聞こえてくる。それ以降、僕にとって、「カムサハムニダ」は「神様に『ダァーッ!』」です。

――実際のロケでも使ったのですか?
【増田】めちゃくちゃ使いました。ずっと「神様に『ダァーッ!』」と言っていました(笑)。そしたらめちゃくちゃ通じるんですよ。きっと発音的には正確ではないのですが、意味は通じる。それで会話が成立したんです。なんなら今でも「神様に『ダァーッ!』」と言っていますよ。
ダジャレで覚える単語数を増やしていく

――その後、2009年度のNHK『テレビでハングル講座』に出演されていましたが、そこでもダジャレをたくさん披露していましたよね。
【増田】そうです。そのときのダジャレを元に制作したのがこの本です。それまでの間に、2000年前半の韓流ブームにハマり、映画やドラマを観るようになって、ロケで韓国に行くことも多くなり、なんとなく韓国語が近いものになっていきました。
それこそ、映画とか観ていると電話を取るときに「ヨボセヨ(もしもし)」と言っていたり、ラブシーンで「サランヘヨ(愛している)」と言っていたりとか、そういうのはなんとなく覚えていて。ただ、単語はそんなに覚えていなかったんですよ。
それで、NHKの番組がはじまったとき、リアルに韓国語を勉強していく姿を撮ってほしいと伝えたので、とりあえず勉強をすることにしました。ですが、たったひとつの単語すら、全然覚えられへん。
そんなときに、「神様に『ダァーッ!』」を思い出し、ダジャレで覚えていったんですよ。それを番組でも披露したらみなさんがおもしろがってくれて。とにかく、旅行で使いたい言葉を中心にダジャレにしていきました。
――まず単語から勉強していったんですね。
【増田】韓国語と日本語、語順は一緒なんですよ。なので、単語を3つくらい並べてみるとある程度は話が通じる。もちろん文法は大事なんですが、伝わるか伝わらないかで考えたら、片言でも単語をつなげたら意外と伝わるんですよ。強引ですけど、これはいつも僕がやっている方法なんでマネしてもらっても大丈夫だと思います。
だからまず単語数を増やすことからはじめていきました。っていうか、そこで止まってますけど(笑)。もちろん、発音も文法も大事ですが、まず単語数を増やして、"喋る"ことを重視して勉強しました。
――ダジャレはすぐに思いつくのですか?
【増田】すぐに思いつきます。どうやってダジャレを思いつくのか......あまり深く考えたことないですね。なんか文字を見ていたらダジャレが浮かんでくるんで、それにちょっとボケをプラスするとかでやっています。おもしろい、おもしろくないはわからないですが、僕らみたいな仕事をしていたり、関西人だったりは意外とダジャレはすぐに思いつくんじゃないですか。
ただ僕のダジャレ、ちょっと下ネタが多かったりするんですよ。これ、今の時代大丈夫?とかあったりするかもしれないですが、ある程度インパクトあった方が覚えられたりするんで。そこは自己判断で見てもらえるとありがたいです。
ダジャレはサクサク思い浮かぶ
――実際に掲載しているダジャレの中でお気に入りのモノを教えてください。
【増田】"あと"という意味の「ナジュン」で、「あとでな、純!」です。これ、言うときは『北の国から』の田中邦衛さんの口調にするのがポイントです。
今回、全部で544個掲載しているのですが、ちゃんとダジャレになってるのもあれば、強引で苦しいダジャレもあります(笑)。そこは「増田め、ダジャレにできへんかったな!?」と思ってください。

――この本には掲載していないですが、最近作ったダジャレを教えてください。
【増田】たとえば、「助ける」の意味の「トプタ」は「助けるのがその組織のトップだ」。
「返品」の意味の「パンプム」は「返品するから、お金はんぷん(半分)返して」。
「応援」の意味の「ウンウォン」は「うん、ウォンを渡して応援するよ」。
「週末」の意味の「チュマル」は「週末に、あちゅまる(集まる)」とか......。
結構、サクサク思い浮かぶんですよ。この調子なら、第2弾も期待できるかもしれないですよ(笑)。
――どういう方に読んでもらいたいですか?
【増田】韓国旅行に行こうとしている方など、気軽に手に取ってもらいたいです。この本を読んだら韓国語がペラペラになるとか、文法がわかるとか、ネイティブな発音がわかるとか、そんなことはまったくないです。
ただ単語を覚えるきっかけになれば。伝えたいことの60%が言えれば、あとの40%は相手が"理解しよう"と努力してくれるので、ぜひ本書で単語数を増やしてください!
取材・文/玉置晴子、撮影/徳永徹








