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「平均勉強時間」は当てになる? 勉強が苦しくなる、間違った3つの思い込み

谷崎玄明(公認会計士、心理カウンセラー)

2025年01月16日 公開

「平均勉強時間」は当てになる? 勉強が苦しくなる、間違った3つの思い込み

「日々計画的に勉強を続けているのに、思うような結果が出せない」「また『三日坊主』で終わった」

一念発起して資格取得を目指したものの、こんな状況に陥ってしまう人は多いでしょう。現役の公認会計士として働く谷崎玄明氏もかつてはそうでした。しかし大学4年生のとき、公認会計士試験に一発合格。辿り着いたのは、「あらゆるムダ」を省く勉強法です。

谷崎氏によれば、ムダには大きく分けると「心の力」「効率化」「習慣化」の3つがあるそう。ここでは「心の力」のムダについて解説します。

※本稿は、谷崎玄明著『今さらだけど、あらゆるムダを省いたら最難関試験に一発合格した!』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。

 

「心の力」のムダは3つの思い込みから生まれる

まず、「心の力」のムダについて説明していきます。

「心の力」とは、集中力や意志力であって、気力です。あなたも勉強をしていて、なんだか疲れた、身体以外のどこかが疲れていると感じたことがありませんでしたか。

実は、そのとき、「心の力」は疲れて弱まっているのです。

「心の力」にムダがあるということは、あなたが本来、勉強に費やすべき「心の力」を"別の対象"に注いでしまっていることを意味しています。

ここで挙げられる"別の対象"として、思い込みがあります。思い込みがあると、その思い込みに対して「心の力」を余計に消費させてしまい、それが「心の力」のムダになります。

思い込みには主に次の3つのものがあります。

・計画に対する思い込み =「計画通りに勉強を進めなければ......」

・勉強時間に対する思い込み=「このくらいの時間だけ勉強しなければ......」

・勉強の苦しみに対する思い込み=「苦しいけど頑張って勉強しなければ......」

これらの思い込みを捨てることができれば、「心の力」のムダを省き、心を丸くすることができるでしょう。

 

「計画を立てなければ、合格できない」という思い込みを捨てる

あなたは、勉強には計画が必要だ、と思っていませんか。

「計画を立てる」→「計画通りに実行する」→「合格(目標達成)する」と思っていませんか。残念ながら、いえ、幸いなことに、それ、思い込みです。

わたしも長年のあいだ、「計画を立てなければいけない」と思っていました。あらゆる計画術を読み、長期目標、中期目標、短期目標を立てて、一日レベルまで計画を立てたこともあります。

しかし次第に、「こんな綿密に勉強をすることは無理だ」と思い始めたのと同時に、うまく計画を立てることの難しさを痛感しました。

わたしたちが資格や検定試験に合格するための計画を立てるとき、それが「今日」から離れれば離れる(長期間の計画を立てる)ほど、それがきっと叶うという期待が大きくなってしまいます。

計画の客観性は失われ、いつしか「本当に計画通りに進むか」という冷静な自分の判断よりも、「計画通りに進めたい」という願望のほうが強くなります。

このまま計画を立ててしまうと、不鮮明で不明瞭な未来へ期待し、たいていその期待は裏切られることになります。何度も期待を裏切られ、散々に頭を抱え、悩み、結局、わたしは計画を立てること自体をあきらめました。

「計画を立てなければ、合格(目標達成)できない」という思い込みを捨てて、計画を立てずに勉強を進めてみたのです。

その結果、心がラクになり、短期合格かつ一発合格につながりました。

だからこそ、今こうして声高らかに「計画なんて不要だ」と自信満々に叫んでいるのです。

 

心が軽くなった気がしたら、その分が思い込みの重さ

さて、ここまで聞いてどう思われましたか。

計画を立てなくても大丈夫と聞いて、肩の荷が下りた気がしませんでしたか。なんだか心が軽くなった気がしませんか。その軽くなった気がする分が、思い込みの重さであって、「心の力」のムダの正体です。

計画を立てなければいけないという思い込みは、これまで誰も「計画を立てなくて良いよ」と教えてくれなかったから生じているものです。

誰もがオウム返しのように「計画を立てよ、計画を立てよ」と繰り返し、計画を立てるメリットばかりを強調し、デメリットには目をつぶり続けた結果です。

では、計画を立てずに、どうやって習慣化するのか、どうやって自分を律するのか、なんて真面目な人は思うかもしれませんが、ここでは、まず先に「計画を立てなくても、合格(目標達成)できる」ことだけを知っておいてください。

それだけで、あなたの心はずいぶんと丸に近づいていることでしょう。

 

「平均勉強時間」に対する思い込みを捨てる

あなたが「このくらいの時間だけ勉強しなければ......」と思うとき、そこには基本的に平均勉強時間が介在しています。

「平均勉強時間だけ勉強するべきだ」「平均勉強時間に足りていないから、もっと頑張らなければ」といった、勉強時間に対する思い込みです。

世の中には「平均」が溢れていますが、平均から始まる言葉には、これから先、なるべく眼と耳を塞いでいきましょう。

平均が、あなたに与えてくれるのは、くだらない比較か、根拠のない自信喪失か、見せかけの幸福か、束の間の安心か、安心の末の慢心や怠惰です。

これは平均勉強時間も同じです。

平均勉強時間は、試験(学ぶ内容)の難易度が上がるにつれて当てにならなくなっていく残念な事実があります。

平均勉強時間が50時間の資格や検定試験の場合、20%の乖離があったとしても10時間の差ですが、3,000時間の場合は600時間にもなってしまい、平均の幅が大きくなり平均の意味をなさなくなります。

これが平均勉強時間の本当の姿です。

たとえば、公認会計士試験の平均勉強時間は3,000時間か5,000時間で、わたしの実際の勉強時間は3,635時間と、平均勉強時間のなかに収まっていますが、これは「一発合格できたから」に他なりません。

もし不合格になって再受験していたとすれば、知識を維持させるために、1年あたり少なくとも2,000時間は増えることが想定されます。その場合は、先ほどの平均勉強時間の上限5,000時間を超えてしまいます。

とはいえ、平均が当てにならないことは、絶望ではありません。むしろ希望です。

平均勉強時間に対する思い込みを捨てることができれば、「このくらいの時間だけ勉強しなければ」という思い込みが連れてくる、「苦しさ」も軽減できる。それどころか、平均勉強時間を一切無視したうえで、「自分はどうか」と、主体的に自分の頭で考えることができますからね。

 

勉強することに慣れると、ストレスは減る

最後に紹介する思い込みは、勉強の苦しみに対する思い込みです。

勉強は苦しいものだ。だから頑張らなければいけない。

これは多くの人が陥りがちな感情であって、思い込みです。勉強が苦しいものだという思い込みは、ほぼ間違いなく学生時代の経験が影響しています。

自分が興味の持てないことを半強制的にさせられ、そのうえに順位まで勝手につけられて優劣を判断される。人それぞれの固有の魅力は一切考慮されず、答案用紙に吐き出された解答だけで判断される。

これが学歴や義務教育という習俗が生んだ苦しみです。

この経験が、大勢の人の心に苦しみの影を落とし、勉強をすると聞くと、自動的に「頑張らなきゃ」と思わせます。

しかし、このイメージをそのままにしておくのは、とても「もったいない」とわたしは強く思っています。

勉強は苦しいものだ、という思い込みは、「勉強に慣れる」ことですべて解決します。慣れることについては、あなたもすでに経験済みのはずです。

あなたが学生であれば、新入生として緊張の面持ちで教室の椅子に座っていたときのことを思い出してください。社会人であれば、入社してすぐのときのことを思い出してください。

どうでしたか。最初はストレスが大きかったのに、いつしかストレスを感じなくなりませんでしたか。やがて学校生活や仕事が楽しくなることはありませんでしたか。これらはすべて慣れていたからです。勉強も同じです。

残念なのは、「慣れていないから、苦しい」が、過去の思い出と紐づいてしまって、「勉強が、苦しい」となってしまうこと。

この思い込みから脱却するためにも、「まだ慣れていないだけだ」ということを、ここでは押さえておくだけで大丈夫です。

 

「勉強が苦しい」は、自分の心が生み出しているだけ

わたしも最初は、勉強は苦しいものだという思い込みからスタートしました。

「苦しいけど、頑張らなきゃ」と思っていました。

しかし、勉強を続けていくうちに、それは思い込みであることに気づきました。勉強が苦しい、というのは、勉強が苦しみを生み出しているのではなく、自分の心が生み出していることに気づいたのです。

もしあなたが今、勉強に対して何らかの苦しみを感じているのであれば「なぜ、苦しいのか」を明らかにしてみてください。なかなか勉強が続かなくて苦しいのか、なかなか点数が上がらなくて苦しいのか、もしくは他の理由で苦しいのか。

「勉強は苦しいものだ」という思い込みがある限り、「勉強は楽しいものだ」とは到底思えません。

これは雨雲がある限り、晴天のまぶしさを感じることができないことと同じです。逆に言えば、雨雲さえなくすことができれば、空は晴れ渡り、虹が架かります。

七色に輝く虹(合格、目標達成)を眺めるためにも、早めに今までの思い込みを捨ててみませんか。

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