日本でここだけ! 立命館大学でナポリピッツァの焼き方が学べる
2025年08月27日 公開
大学で本格的なナポリピッツァの作り方を学べる――近年は多様な学部や大学の取り組みが増えていますが、その中でも特にユニークでキャッチーなのではないでしょうか。
月刊誌『PHP』の取材で知った情報に興味がわき、後日、講義におじゃましました。
キャンパスに設置された最大級のピッツァ窯
天井いっぱいのガラス窓から光が差し込む空間に鎮座するピッツァ窯。
ここは立命館大学の食マネジメント学部。
2018年、日本初の食の総合学部として、滋賀のびわこ・くさつキャンパス(BKC)に開設されました。
経済学・経営学を基盤に、マネジメント、テクノロジー、カルチャーとなど多岐にわたる領域から「食」にアプローチする学びの場です。
調理実習室や官能評価実習室なども備え、実践的なスキルも学ぶことができます。
窯を覆う青いタイルは学生さんたち作の信楽焼。赤茶色の部分に入る「CARPE DIEM(今を生きよ)」というロゴを陶器に作り替えているところだそう
なかでもユニークなのがこのピッツァ窯。
同時に8枚焼けるサイズはピッツァ窯の中でも最大級で、学部創設時に真のナポリピッツァ協会(Associazione Verace Pizza Napoletana=AVPN)から寄贈されたものだそうです。
普段はゼミの実習や学内のナポリ食文化研究会の活動をはじめ、学部生が対象の講習会や、ピッツァ職人志望者を対象とした真のナポリピッツァ協会公認トレーニングが開催されることもあります。
ピッツァ窯寄贈のきっかけを作ったのは、現学部長の石田雅芳教授。
イタリアで「スローフード・インターナショナル」の日本担当を務め、日本でスローフード・ジャパンの創立に尽力された人物です。

学生さんたちに話をする石田先生
学生時代は美学芸術学を専攻し、ルネサンスの芸術家であるブルネッレスキの研究でフィレンツェに留学。
その後40歳で帰国するまで、日本人初のフィレンツェ市公認ツーリストガイドなどを務めつつ、イタリアで食文化の探訪をしながら暮らしていたとのこと。
最近ではイタリアのグルメガイド「ガンベロ・ロッソ」の記者のSNS動画にたびたび登場。
流暢なイタリア語で日本の食を紹介し、イタリアの人々たちからも人気を博していました。
ピッツァ職人直伝!本場ナポリの味
おじゃました日は、石田ゼミをはじめとする学生さんたちがプロ直伝でピッツァ作りを学ぶ特別講習会が開かれていました。
講師は福井県坂井市のピッツェリア「バードランド」の小田原学さん。
真のナポリピッツァ協会のチーフエリアリーダーでもあり、石田先生いわく「日本最高峰のナポリピッツァ職人」です。

学生さんたちにレクチャーする小田原さん
説明と実演のあと、参加者は二人ずつペアになって実際にピッツァを作っていきます。
生地は学内のナポリ食文化研究会のみなさんがすでに用意してくれています。
小麦粉、水、塩、イーストを混ぜて発酵させた生地が、ピッツァ1枚分の量で丸めておいたもの。
これを平たく伸ばして、ソースを塗り、具をのせ、窯で焼き上げるという工程です。


丸い状態から平らにし、さらに90°ずつ回転させながら均一に生地を伸ばします。
生地は思いのほか柔らかく、扱いやすいと言えば扱いやすいですが、手早く作業をしないと、だれてしまう危うさも。
ピザ屋さんなどでお店の人がいとも簡単そうに生地を伸ばしているのを見たことがありますが、実際やってみるとその難しさがわかります。


トマトソースを塗ってお好みの具をのせ、パーラに移します。パーラに移すときに生地が伸びるので、ここもコツがいるところ。

最後にオリーブオイルをたっぷり。小田原さんの左胸には「真のナポリピッツァ協会」のエンブレムが。

窯の中に入れたら、パーラをスッと引き抜きます。巨大なパーラをあやつるにのも技術が必要。
窯の内部は400℃をゆうに超える高温。およそ1分半で焼き上がります。
予熱に時間がかかるため、前日から火入れをしておくそうです。

おいしいピッツァができました!
ナポリピッツァの特徴は、分厚いミミ(コルニチョーネ、イタリア語で「額縁」)と薄いけれどもっちりした食感の生地。
次々に焼き上がり、おいしそうにほおばる学生さんたちの姿があちこちに見えます。
イタリアをめぐりながら現地の食を知りたい
この講習会を全面的にサポートするナポリ食文化研究会は、毎週ここで放課後に活動しているそうです。
会長を務める4回生の平田泰一さんにお話をうかがいました。
「主にはナポリピッツァの技術を伝承していくことを目的に活動しています。ピッツァ以外にもジェラートマシンでジェラートを作ったり、イタリアの郷土料理を作ってみんなで食べたり。テロワールの精神で地域の食材を使おうというのもあって、たとえば今日のジェラートは、草津で作られているメロンを使っています」

日本とイタリアの食文化の魅力を語ってくれた平田さんと会の方々
1回生のころからピッツァ窯の存在は知っていて、講習会に参加したことでイタリアの食に興味を持ち、2回生のときにピッツェリアでバイトを始めたのだとか。
3回生で石田ゼミに所属したタイミングで正式に研究会に入ったそうです。
「研究会にいる人はみんな個性豊かで、一緒に活動していても、人によって考え方が違うのがおもしろいですね。『こんな考えがあるんだ』と刺激をもらったりしています。たまにぶつかることもあるんですけど、そこからまた生まれるものもあるので」
研究会の活動を通して、イタリアの食の楽しさやおいしさを知ってもらえることがうれしいと言う平田さん。
この秋はイタリアに短期留学し、アグリツーリズモを体験する予定だそうです。
地元の農家の人たちのところで働きながら食材や郷土料理について学び、イタリアを北から南まで旅したいと語ってくれました。
帰国後のさらなるご活躍に期待します!
なお、ピッツァの講習会は残念ながら学内の人のみが対象となっていますが、ここで学んだ方のピッツェリアが京都にあります。
百万遍の「ピッツェリア・ヴィヴァーチェ」(命名とロゴは石田先生)。


豊富なメニューに目移りしつつも、やはり定番のマルゲリータを。
トマトのジューシーさとチーズのなめらかさに、さわやかなバジリコの香りがいいアクセントになっています。
ピッツァはシェアせず一人一枚という現地のルールに忠実に、ぺろっと一枚たいらげました。
テイクアウトがメインなので、過ごしやすい季節なら、すぐ近くの「出町デルタ」で食べるのもおすすめです(食べ物を狙うトンビには十分ご注意ください)。
(取材・文・写真:PHP編集部丹所千佳)





